takanori_takkenの日記

2020年宅建士合格を目指して勉強していくブログです。宅建士の勉強をする中で分かったことなどを主に書いていきます。

建築基準法

建築基準法の全体像

建築基準法の目的は、建築物に規制を加える事で、国民の生命・健康・財産を守る事です。建築基準法の定めは、単体規定と集団規定の2つに大きく分類できます。単体規定とは、日本全国どこでも適用される規定です。集団規定とは、原則として都市計画区域準都市計画区域等の中だけ適用されます。なお、これらの規定は、建築の際にあらかじめ建築確認を受けてもらわなければなりません。

さらに、建築協定というものもあります。これは、地域の住民同士による建築規制のことです。

建築基準法の適用除外

文化財

文化財保護法によって国宝・重要文化財等として、指定または仮指定された建築物、この建築物の原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て、その原形の再現がやむを得ないと認めたものには建築基準法は適用されません。

・既存不適格建築物

施工または適用の際に現に存する建築物・敷地 、施行または適用の際、現に建築等の工事長の建築物も適用除外になります。ただし、その後に建て替えや増改築等を行う場合は、新しい規定に従わなければなりません。

単体規定

1、構造耐力

建築物は、自重・地震などに対して安全な構造のものとして、建築物の区分に応じ、安全上必要な構造方法に関して一定の技術的基準に適合するものでなければならないが、この場合、次の2つについては、一定の構造計算によって安全性が確かめられなければならない

  1. 高さが60mを超える建築物
  2. 高さが60m以下の建築物で、一定の規模のもの
2、大規模建築物の主要構造部(床・屋根・階段をのぞく)

地階を除く階数が4以上、高さ16m超、倉庫、自動車車庫・自動車修理工場等で高さ13m超のいずれかに該当する建築物→原則として、一定の技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの等としなければならない

3、防火

耐火・準耐火建築物等以外の建築物で、延べ面積が1000㎡を超える建築物は、防火壁または防火床で各区画の床面積を1000㎡以内を有効に区画しなければならない

4、居室の採光換気

住宅等の居室には、床面積に対して、一定の割合以上の採光のための窓その他の開口部を設けなければならない

居室に設置する換気のための開口部の面積は、床面積に対して、原則として20分の1以上の割合としなければならない

5、石綿等の飛散等に対する衛生上の措置

建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散または発散による衛生上の支障がないよう、建築材料に石綿等を添加してはならない 等

6、地階における住居等の居室

住宅の居室、学校の教室、病院の病室または寄宿舎の寝室で地階に設けるものは、壁及び床の防湿の措置等の事項について衛生上必要な一定の技術的基準に適合するものとしなければならない

7、中高層建築物

高さ20mを超える建築物には、原則として、有効に避雷設備を設置しなければならない

高さ31mを超える建築物には、原則として、非常用の昇降機を設置しなければならない

集団規定

集団規定は、市街地における環境を守り安全を維持するために、建築に関して規制を貸すものです。従って、原則として、都市計画区域準都市計画区域内等で適用されます。ただし、それ以外の区域内でも、都道府県知事が指定する区域内においては適用されます。

用途制限

・用途制限とは

それぞれのようと地域にマッチした建築物を建ててもらうために、どの地域でどんな用途の建築物を造ることができるのか否かを、具体的に定めたものです。

・用途制限に関する留意事項

1、例外的な建築許可

特定行政庁の許可があれば、禁止されている用途ものでも建築することができます。

2、処理施設等の建築

都市計画区域内では、卸売市場、火葬場、ゴミ焼却場等の処理施設は、都市計画においてその施設の位置が決定しているものでなければ、原則として、新築・増築をすることはできません。

3、建築物の敷地が用途地域の内外にわたる場合

建築物の敷地が規制の異なる複数の地域にまたがる場合には、原則として、過半が属する敷地の規制に従わなければなりません。

4、特定用途制限地域内での用途制限

特定用途制限地域に関する都市計画に即し、地域内における建築物の用途の制限は、地方公共団体の条例によって具体的に定められます。

建築物の敷地と道路

建築基準法上の道路

原則として、建築基準法上の道路と認められるためには、道路幅は4m以上必要です。しかし、2項道路という、幅員4m未満の道路でも周りにすでに建築物が立ち並んでいて、特定行政庁が指定したものであれば、建築基準法上の道路と認められています。

・接道義務と建築制限

1、接道義務

建築物を立てる敷地は、原則として、道路に2m以上の幅で接しなければなりません。ただし、接する道路は、高速道路などの自動車専用道路ではダメです。例外として、避難という観点から、敷地の周辺に広い空き地を有する建築物その他の一定の基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものには、摂動義務は適用されません。その他例外として、その敷地が幅員4m以上の道に2m以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し一定の基準に適合するもので、特定行政庁が交通などに支障がないと認めるものには、接道義務は適用されません。この場合は、建築審査会の同意は不要です。

なお、地方公共団体は、延べ面積が1000㎡超えの大規模な建築物など一定の建築物の敷地が接する道路の幅については、条例で必要な制限を付加できます。その他、敷地が袋路上道路にのみ接する延べ面積が150㎡を超える長屋等の建築物についても同様です。

2、道路ないの建築制限

原則として、道路内に建物などを造ることはできません。しかし、次のような例外は作ることができます。

  1. 地盤面下に建築するもの(地下街など)
  2. 公衆便所、巡査派出所、その他これらに類する公益上必要な建築物で、特定行政庁が通行上支障がないと認めて、建築審査会の同意を得て許可したもの
  3. 公共用歩廊(アーケード)などの一定の建築物で、特定行政庁があらかじめ建築審査会の同意を得て、安全上、防火上及び衛生上問題がないと認めて許可したもの
3、私道の変更または廃止の制限

これらによって接道義務違反になる場合には、特定行政庁は、これらを禁止または制限することができます。

4、壁面線の指定及び制限

この指定がされた場合は、建築物の壁またはこれに代わる柱や高さ2mを超える門または塀は、壁面線を超えて作ってはなりません。

ただし、例外があって、地下の部分と、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可した歩廊の柱などの場合は大丈夫です。

建蔽率

建蔽率とは

建蔽率とは、建築物の建築面積の、敷地面積に占める割合のことです。

建蔽率が小さければ小さいほど、日照りや風通しが良くなり、延焼を抑えられます。

建蔽率が地域の内外にわたる場合

それぞれの地域の建蔽率を出します。

建蔽率の制限の緩和

隣地境界線から後退して壁面積の指定がある場合などで、壁面積などを超えない建築物で特定行政庁が許可したものの建蔽率は、その許可の範囲内で緩和されるという規定があります。

容積率

容積率とは

建築物の延べ面積の、敷地面積に対する割合のことです。

容積率が大きければ、大きな建物を作ることができ、土地の利用度が高まります。

 

 

都市計画の決定

都市計画の決定権者

原則として、都道府県と市町村です。つまり、都道府県と市町村がそれぞれ役割分担をしながら、都市計画を決めていきます。そして、2つ以上の都府県にまたがる都市計画区域の中の都市計画に関する決定権者は、都道府県に代えて、国土交通大臣と市町村となります。

都道府県が決定する都市計画

  1. 都市計画区域の整備・開発・保全の方針
  2. 市街化区域及び市街化調整区域の区分
  3. 都市再開発方針等
  4. 地域地区(大都市におけるもの、または大規模なもの等)
  5.  都市施設(広域的見地から決定すべきものなど)
  6. 市街地開発事業(大規模なものなど)
  7. 市街地開発事業等予定区域(広域的見地から決定すべきものなど)

・市町村が決定する都市計画

  1. 上記4以外の地域地区
  2. 上記5以外の都市施設
  3. 上記6以外の市街地開発事業
  4. 上記7以外の市街地開発事業等予定区域
  5. 地区計画等
  6. その他

都市計画の決定手続き

都市計画を決めていく中で重要なのは「利害関係者」との調整です。ではどんな人が登場するのでしょうか。まず、第一に住民です。第二に、専門的判断を下す、エキスパートの集団である都市計画審議会です。これには、都道県都市計画審議会と市町村都市計画審議会の2つがあります。第三に、国の利害に関わる問題については、国土交通大臣が登場します。最後に、関係市町村です。都道府県が定める都市計画は、当然市町村に影響を与えるからです。

都道府県が定める都市計画

まず、都市計画の案を作成する段階で、必要に応じて公聴会などを開催します。これによって、住民等利害関係人が参加することができます。

次に、原案を都市計画を決定すべき理由を記載した書面を添えて、公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければなりません。原案を一般の人が2週間見ることができ、この間に、住民などの利害関係人は意見書を出すことができます。

そして、都道府県が定める都市計画ですから、関係する市町村の意見を聞く必要があります。

次に、専門家集団である都道県都市計画審議会が登場します。ここでは、この都道県都市計画審議会の議を経なければなりませんが、それにあたって都道府県は、住民などから出された意見書の要旨を提出しなければなりません。

さらに、国の利害に重大な関係のある都市計画の場合、例えば、空港や一級河川などに関する場合には、都道府県は、国土交通大臣との協議をし、その同意を得なければなりません。

・市町村が定める都市計画

市町村は、議会の議決を経て定められた市町村の建設に関する基本構想や都市計画区域の整備・開発・保全の方針に即して、まずは、市町村における都市計画に関する基本的な方針を定めなければなりません。この市町村のマスタープランを決める時には、住民の意見を反映させるために公聴会が開催されます。この場合、知事の同意は不要です。また、市町村が決める都市計画は、基本構想に即して定められます。

次に、市は、都市計画を決定する時は、あらかじめ都道府県知事に協議しなければならず、また、町村は協議の上、さらに、知事の同意を得なければなりません。逆に言えば、私の場合は、知事の同意は不要です。 

・決定手続き等におけるその他の注意点

土地の所有者・借地権者や街づくりNPOなどは、一定の場合に、都市計画に関する基準に適合し、土地所有者等の3分の2以上の同意を得られれば、都道府県または市町村に対して、素案を添えて、都市計画の決定や変更を提案することができます。

都市計画が定められ、決定の告示がされた時から都市計画の効力が生じるとされます。

市町村が定めた都市計画都道府県が定めた都市計画とが抵触する場合は、より広域的な見地から、都道府県が定めた都市計画が優先します。

まちづくりの観点から、空き地・空き家等の増加への対策として、次の制度が創設されました。

  1. 都道府県や市町村は、都市施設等の整備に係る都市計画の案を作成しようとする場合には、その整備を行うと見込まれるものとの間で、都市施設等整備協定を締結することができます。
  2. 市町村長は、都市計画の決定に関する協力等の業務を適正・確実に行うことができる法人等を、都市計画協力団体として指定でき、その団体は、市町村に対し、都市計画の決定等の提案ができるとされました。

都市計画事業と都市計画制限

都市計画事業には、都市施設に関するものと市街地開発事業に関するものとの2つがありますが、これらの都市計画事業が行われるときに加えられる制限が、都市計画制限です。建築や造成などを行う場合には、その行為が事業の障害となることを防ぐために、「あらかじめ、都道府県知事の許可を受ける必要がある」という形で、規制しています。

事業までの過程(制限の内容)

都市計画事業では、通常、予定区域・施行予定者を含めないパターンで行われます。例えば、普通規模の団地を作るような場合です。それに対して、大規模な都市施設や新開発の市街地開発事業に関しては、予定区域・施行予定者を定めるパターンと、さらに予定区域を定めないものの施行予定者は定める、というパターンもあります。

・都市計画施設等の区域内での制限

1、行動の許可制

この区域内で建築物の建築を行う場合は、都道府県知事等の許可を得なければならないのが原則です。しかし、許可不要となる次の1〜3の例外があります。緊急事態や、大したことのな行為の場合です。

  1. 階数が2以下で、かつ、地階を有しない木造建築物の改築・移転
  2. 非常災害の応急措置として行う行為
  3. 都市計画事業の施行として行う行為 等
2、建築についての許可基準

次の1または2に該当する建築物を建築する場合、都道府県知事等は、原則として許可しなければなりません。

  1. 都市計画に適合するもの
  2. 階数が2以下で地階を有せず、主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などの構造で、かつ、容易に移転・除却できると認められるもの
・市街地開発事業等予定区域内での制限

1、市街地開発事業等予定区域内で、次の1〜3を行う場合は、原則として、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。

  1. 建築物の建築
  2. 工作物の建設
  3. 土地の形質の変更(土地の造成工事)
2、そして、都市計画施設等の区域内での制限の例外と同様の趣旨で、次の1〜3が許可不要となります。
  1. 通常の管理行為、軽易な行為
  2. 非常災害の応急措置として行う行為
  3. 都市計画事業の施行として行う行為 等
・都市計画事業の認可等の告示後の事業地内での制限

これは、今までの制限の中で最も厳しい制限です。

都市計画事業地内で、事業の施行の障害となる恐れのある次の1〜3の行為、および4の行為をするときには、都道府県知事等の許可が必要です。

  1. 建築物の建築
  2. 工作物の建設
  3. 土地の形質の変更
  4. 重量5トンを超える移動の容易でない物件の設置・堆積
そして、この制限には例外はありません。

なお、都市計画事業については、土地収用法の規定による事業の認定は、行われません。都市計画事業の認可または承認があればその認定に代替されるとして、都市計画事業の告示をもって事業認定の告示とみなされます。

開発許可制度

開発許可制度とは、でたらめな開発によっていい加減な街ができないようにするための仕組みです。

開発許可制度の目的

乱開発を防止して、不良な市街地の形成を防ぐことなどを目的としています。

開発許可制度の内容

開発行為をするものは、日本全国どこでも、原則として、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません。

・開発行為とは

開発行為とは「土地の区画形質の変更」、一言で言えば「造成工事」のことです。そして、この「工事」とは、主として建築物の建築や特定工作物の建設を目的として行う造成工事を指します。

1、建築物の建築とは、例えば、ビルやマンション、一戸建ての住宅などの新築、増改築、移転などのことです。

2、特定工作物には、第1種と第2種の2種類があります。

第1種特定工作物とは、周辺の環境を悪化させる恐れのあるコンクリートプラントやアスファルトプラントなどの工作物のことです。

第2種特定工作物は、非常に重要です。まず、ゴルフコースは規模にかかわらず該当します。さらに、1ha以上の野球場、庭球場、遊園地などの運動・レジャー施設、墓園等です。ゴルフコース以外は、1ha以上と限定されていることに注意が必要です。

3、土地の区画形質の変更とは、土地の分割や造成、地目変更などのことです。

・許可不要となる開発行為(例外)

開発を規制する目的は、乱開発の防止ですので、好ましい開発ならば、そもそも許可は不要です。

開発許可の申請の手続き

・公共施設の管理者の同意等

道路などの公共施設の適切な管理を図るためには、現在存在する「関係のある」公共施設の管理者と協議をしてその同意を得ることが必要です。さらに、開発に伴って、将来道路が「設置される」ということになれば、その将来の道路などの公共施設を管理することとなるものと協議をしなければなりません。

・許可の申請

1、申請書の記載事項

  • 開発区域の位置、区域および規模
  • 開発区域内において建設が予定される建築物または特定工作物の用途(構造・設備等は不要)
  • 開発行為に関する設計(1ha以上の規模の開発行為に関する設計図書は、一定の資格を有するものによる作成が必要)
  • 工事施工者 等
2、申請に必要な添付書類

許可の申請にあたっては、同意を得たことを証する書面や協議の経過を証する書面を添付しなければなりません。なお、33条の許可をするか否かの基準としては、「開発許可にかかる区域内の土地所有者などの相当数の同意」が必要ですので、土地所有者などの相当数の同意を得たことを証する書面も添付しなければなりません。

・33条、34条の許可基準

許可基準とは、知事が許可するか否かを判断するための基準です。この基準に例外はありません。

1、一般的基準

都道府県知事は、申請された開発行為が次のような33条に挙げられている許可基準に適合しており、かつ、手続きが法律で定められていることに反しない場合には、必ず許可しなければなりません。

33条の許可基準としては、例えば、①予定建築物等の用途が用途地域などの用途の制限に適合している、②排水路その他の排水施設が必要な構造で適当に配置されるように設計されている、③予定建築物の用途等が地区計画等の内容に即して定められている、などがあります。さらに、④その開発行為を行う土地やその開発行為に関する工事をする土地の区域内の土地などについて、土地の所有者など、その開発行為の施行などの妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を得ていることも必要です。

そして、デベロッパー(開発業者)などが行う開発の場合は、次の4つの基準も、別途満たす必要があります。つまり、これらの基準は、事故が居住する住宅のための開発行為には適用されません。

  1. 道路、公園、広場などが適当に配置され、かつ、開発区域内の主要な道路が、開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計が定められていること
  2. 水道その他の給水施設が適当に配置されるように設計されていること
  3. 開発区域内に災害危険区域などの区域内の土地を含まないこと
  4. 開発を行うにたるだけの視力や信用があること
2、市街化調整区域での開発行為の基準

市街化調整区域における、建築物の建築または第1種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為は、一般的基準を満たし、かつ、次の34条の許可基準のどれかに該当する場合でなければ、都道府県知事は許可をしてはなりません。なお、第2種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為は、先の一般的基準のみで足ります。

34条の許可基準

  1. 主として開発区域の周辺地域に居住しているものの利用に供する精霊で定める公益上必要な建築物、またはこれらの者の日常生活に必要な物品の販売、加工、修理その他の業務を含む店舗、事業所などの建築のための開発行為であること
  2. 農林漁業用建築物、または市街化調整区域内で生産される農林水産物の処理、貯蔵、加工用の建築物などのための開発行為であること
  3. 知事が「開発審査会の議決」を経て、開発区域の周辺における市街化を促進する恐れがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難、または著しく不適当と認める開発行為であること
・許可、不許可

1、処分

都道府県知事は、開発許可の申請があったときは、遅滞なく、許可または不許可の処分をしなければなりません。そして、その旨は文書で通知します。

2、開発登録簿

開発許可の処分を行ったときは、開発登録簿に一定事項を登録しなければなりません。この開発登録簿は、都道府県知事が調整し、また、常に公衆の縦覧に供するように保管し、請求があったときは、その写しを請求者に交付しなければなりません。

3、用途地域が定められていない土地の区域内での制限との関係

市街化調整区域など、用途地域が定められていない区域の中で開発行為が行われる場合、都道府県知事は、建蔽率、建築物の高さ、壁面の位置その他建築物の敷地・構造・設備に関する制限を、許可にあたって定めることができます。なお、原則として、この制限に反する建築はできませんが、例外として知事の許可があれば、その制限は無視しても構いません。

・変更の許可等

開発許可の変更をする場合は、原則として、都道府県知事の許可を受ける必要があります。

例外として、政令で定める軽微な変更の場合は、許可不要です。例えば、工事の着手予定や完了予定の年月日などです。ただし、遅滞なく、都道府県知事にその旨の届け出をしなければなりません。

・工事の廃止

開発を廃止する場合に許可は不要ですが、遅滞なく、都道府県知事にその旨の届け出をしなければなりません。

・地位の継承

1、一般承継人

開発を相続して続ける場合は許可不要です。なお、デベロッパーである法人が合併した場合も同様です。

2、特定承継人

基本的には、許可は不要です。しかし、あらかじめ知事の承認を受けることが必要です。

・工事完了後の届け出

1、届け出

開発区域の全部の工事を完了したときは、都道府県知事に届け出る必要があります。

2、完了検査

都道府県知事は、工事完了の届け出を受けたときは、ちたいなく、開発許可の内容に適合しているかどうか、検査しなければなりません。そして、検査の結果、適合していると認めたときは、検査済証を開発許可を受けたものに交付しなければいかません。

・工事完了の公告

都道府県知事は、検査済証を交付したときは、遅滞なく、その工事が完了した旨の公告をしなければなりません。

・公共施設の管理、用地の帰属

開発に伴って道路などの公共施設を作る場合、その公共施設の管理やその用地の帰属は、次のようになります。

1、公共施設は、原則として、その施設がある市町村が管理することになります。

2、公共施設の用地は、原則として、公共施設の管理者に帰属します。従って、原則として市町村に帰属することになります。

 

 

都市計画法

都市計画法の目的

都市計画法の目的は、住み良い街を作ることです。そのために、積極的に都市計画を実施していく場所を定めます。ここでは、一体の都市として総合的に整備・開発・保全を図っていくための規制を加えたり、公共施設を整備したりといういろいろなプランを実現していきます。このように、積極的に住み良い街を作っていくところが、都市計画区域です。

都市計画区域の指定

都市計画区域の指定権者

原則として、都道府県知事です。例外は、2以上の都道府県にまたがる都市計画区域の場合です。このときは、国土交通大臣が定めます。

都市計画区域の指定手続き

  1. まず、都道府県の案について、関係市町村の意見を聴きます。

  2. 次に、利害関係者の保護や専門的な判断のために、都道県都市計画審議会の意見を聴きます。
  3. さらに、国の利害が関わってくる可能性がありますから、国土交通大臣と協議をし、その同意を得ることが必要です。
  4. 最後に、指定した内容についての公告が行われます。 

準都市計画区域の指定

準都市計画区域の意義と指定権者

都市計画を策定し、開発規制や建築規制を加えて土地利用を整序し、または環境を保全することを目的として設けられたのが、準都市計画区域です。詳しく言えば、都道府県は、都市計画区域外の区域のうち、相当数の建築物やその他の工作物の建築、もしくは建設、またはこれらの敷地の造成が現に行われ、または行われると見込まれる区域を含み、土地利用の整序や環境を保全するための措置を講ずることなくそのまま放置した場合、将来における一帯の都市としての整備・開発・保全に支障が生じる恐れがあると認められる一定の区域を、準都市計画区域として指定できるということです。

準都市計画区域における都市計画区域の指定

準都市計画区域の全部、または一部について、都市計画区域が指定された場合は、その準都市計画区域は、「廃止された」等とみなされます。つまり、都市計画区域準都市計画区域が重なることはありません。

都市計画の全体像

・都市計画の種類

  1. 都市系各区区域の整備・開発及び保全の方針
  2. 市街化区域・市街化調整区域
  3. 都市再開発方針等
  4. 地域地区
  5. 都市施設
  6. 市街地開発事業
  7. 市街地開発事情等予定区域
  8. 促進区域
  9. 遊休土地転換利用促進地区
  10. 地区計画等
  11. 被災市街地復興推進地域
・区域や地域を分ける

住み良い町づくりのためには、都市計画区域の中をより細かな区域や地域に分けていく必要があります。そして、その区分に応じて様々なプランを実現していき、開発や建築を規制します。

まず、区域区分です。市街化を積極的に進めようとする市街化区域と、市街化を抑制しようとする市街化調整区域の2つに分けることができます。線を引いて分けるので、線引きともいいます。つまり、最初に都市計画区域の中を用途に応じて色分けするのです。他方、「線引き」をしない都市計画区域のことを、非線引き都市計画区域といいます。

さらに住み良い街にするために、市街化区域の中には、必ず用途地域を定めます。この「用途地域」とは、建物の用途に応じて地域を分けたもので、都市計画のうちで最も基本的なものです。

都市経過空域の整備、開発及び保全の方針

全ての都市計画区域単位で、より広域的な県力、都市計画として当該都市計画区域の整備、開発及び保全の方針を定めます。これらを、いわゆる「都市計画に関するマスタープラン」といいます。そして、各都市計画区域について定められる都市計画は、このマスタープランに即したものでなければなりません。

市街化区域と市街化調整区域

・定義

  1. 市街化区域とは、建物をどんどん建てて欲しいし、開発もどんどん行って欲しい区域です。
  2. 市街化調整区域とは市街化を押さえたい、農業、漁業等をやって欲しい、また、自然環境を残しておきたい区域です。
  3. 非線引き都市計画区域は、今現在、市街化区域と市街化調整区域に分ける必要がない区域です。
区域区分の決定

都市計画区域について、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることができます。市街化の状態などの地域の実情に応じて、線引きをするかどうか、区域ごとにその必要性を判断する、つまり、区域区分にするかどうかについては選択制が取られているということです。ただし、3大都市圏の一定の区域では、必ず区域区分を定めるとされています。

地域区域

用途地域

1、種類と定義

用途地域は大きく3つのタイプに分類され、合計で13種類あります。3つのタイプとは、住居系、商業系、工業系です。そして、住居系とは、人が住むことを目的とした用途地域であり、商業系とは、商売がやりやすいように設けられた用途地域です。工業系とは、工場を立てて工場を推進するために用意された用途地域です。

(1)住居系

  1. 第1種低層住居専用地域
  2. 第2種低層住居専用地域
  3. 田園住居地域
  4. 第1種中高層住居専用地域
  5. 第2種中高層住居専用地域
  6. 第1種住居地域
  7. 第2種住居地域
  8. 準住居地域
(2)商業系
  1. 近隣商業地域
  2. 商業地域
(3)工業系
  1. 準工業地域
  2. 工業地域
  3. 工業専用地域

市街化区域については、少なくとも用途地域を定め、市街化調整区域については、原則として用途地域は定めないとされています。

2、都市計画に定める内容

都市計画で用途地域を定めるときに、その地域にマッチした建築物が作られるように、同時に建築すること自体についての規制を具現化させています。

容積率は、全用途地域について、都市計画で定めます。

建蔽率は、商業地域を除いた他のすべてのようと地域について、都市計画で定めます。

用途地域については、必要があれば敷地面積の最低限度を定めることができます。その結果、小さな敷地に分割することが防げます。

また、低層住宅の良好な環境を確保するため、低層住居専用地域や田園住居地域では当然、高さに制限を加える必要がありますから、建築物の高さの限度を都市計画で定めます。さらに、より良い環境を目指して、必要があれば、外壁の後退距離を定めることもできます。

3、田園住居地域における建築等の規制

田園住居地域では、農地が維持され、農業が行われるように、農地の区域内において、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設・土石等の堆積を行うものは、非常災害のため必要な応急措置や都市計画事業の施行として行う行為などの例外を除いて、原則として、市町村長の許可を受ける必要があります。この場合、市町村長は土地の形質の変更や建築物の建築等で、その土地や建築物等の敷地の規模が300㎡未満のものなどについては、許可をしなければなりません。

・特別用途地区

特別用途地区は、用途地域ないの一定の地区の、その特性にふさわしい土地利用の増進や環境の保護などの特別の目的を実現するために、用途地域の指定を補完して定めることができます。そのために、建築基準法の用途制限を緩和することもできるのです。ここで注意が必要なのは、「用途地域に重ねて」ということです。

・特定用途制限地域

用途地域が定められていない土地の区域内では、良好な環境の形成・保持のため、その地域の特性に応じた合理的な土地利用が行われるように、制限すべき特定の建築制限すべき特定の建築物等の用途概要を定める地域として、特定用途制限地域を定めることができます。

・特例容積率適用地区

異なる敷地間での容積率の融通を互いに認めることによって、土地を有効活用することを目的とした地区で、低層住居専用地域、田園住居地域、工業専用地域「以外」の用途地域内において定められます。なお、特例容積率適用地区においては、建物が高くなりすぎないように、必要があれば、建築物の高さの最高限度を都市計画に定めることができます。

・高層住居誘導地区

土地を住居と住居以外の用途とに適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するために定められる地区のことです。用途地域としては、第1種住居地域・第2種住居地域準住居地域・近隣商業地域・準工業地域内において定められ、必要があれば、建築物の容積率の最高限度などが定められます。

・その他の地域地区

1、用途地域内のもの

高度地区とは、建築物の高さを揃えるところです。低層住宅地における日照りを確保したり、土地の有効活用のために高層化を進める目的で定めます。ここでの高度は「高さ」を意味しますので、「高さ」がキーワードです。それに対して、高度利用地区の高度は、「有効利用」を意味します。例えば、同じ敷地なら大きな建物を建てたほうが土地の有効利用になるので、そのために容積率の数値を調整したりします。つまり「容積率」がキーワードです。

2、用途地域外でもOKのもの

特定街区は、例えば、新宿の高層ビル街などのような超高層ビルを作る目的で、建築に関する規制を大幅に緩和するところです。

防火・準防火地域とは、人口密集地や繁華街などにおいて、家事やその延焼を防ぐ目的で定められる地域です。具体的な規制は、建築基準法で定めています。

風致地区とは、自然の美しさを維持する目的の地区です。例えば、神奈川県の鎌倉山などをイメージすれば良いでしょう。なお、そのための規制は、地方公共団体の条例で行います。

準都市計画区域内で定めることができる地域地区

積極的な街づくりではなく、逆に土地利用を整序し、環境を保全するためのところです。従って、次のような地域地区を定めることができます。それは、用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、高度地区、風致地区などです。

都市施設

・都市施設の種類

都市施設とは、道路・公園・水道・学校・図書館・病院・市場・団地など、良好な都市生活を維持するために必要な施設のことです。なお、都市施設の中でも、特に都市計画によって定められたものを都市計画施設といいます。

・都市施設の内容

1、定める場所

例えば、道路は山の中など市街地以外にも通っています。そのように、都市施設は、特に必要がある時は、都市計画区域外にも定めることができます。

2、定めるべき内容

市街化区域及び非線引き都市計画区域では、少なくとも道路、公園、下水道を定めます。また、住居系の用途地域は、人が住むところですので、そこでは義務教育施設は必ず定めなければいけません。

3、大規模な都市施設

区域の面積が20ha以上の一団地の住宅施設、一団地の官公庁施設、流通業務団地の3つがあります。

市街地開発事業

積極的なまちづくりの事業である市街地開発事業には、新住宅市街地開発事業、土地区画整理事業市街地再開発事業など、全部で7種類があります。これらの市街地開発事業は、市街化区域または非線引き都市計画区域内においてのみ定められ、市街化を押さえたい市街化調整区域や準都市計画区域では定められません。

地区計画等

・地区計画等の種類と内容

地区計画等とは、小規模の地区レベルで、その地域の特性にマッチするような細かな街づくりを目的とした、小さな街づくりのプランです。なお、地区計画等には、地区計画に加えて、防災街区整備地区計画、集落地区計画、歴史的風致維持向上地区計画などがあります。

・地区計画

地区計画とは、建築物の建築携帯、公共施設等の施設の配置等から見て、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備・開発したり、保全したりするための計画のことです。

1、対象区域

地区計画は、次のいずれかに該当する土地の区域に指定されます。

  • 用途地域が定められている区域なら、地区計画を定めることができます。
  • 用途地域が定められていない区域では、不良な街区の形成を防止する等一定の場合に限定されてはいますが、地区計画を定めることもできます。
  • 準都市計画区域においては、地区計画は定めることができません。

2、都市計画に定める内容

地区計画に関する都市計画には、種類、名称、位置、その区域や地区整備計画を定めるとともに、区域の面積、当該地区計画の目標や整備・開発・保全に関する方針等を定めるよう努めるとされています。さらに、一定の場合、道路などの公共施設や大規模なショッピングモールなどの商業施設の整備を図るために、再開発等促進区や開発整備促進区という区域を、都市計画に定めることもできます。

3、地区整備計画

地区施設の配置・規模、容積率の限度、建蔽率の限度、建築物の高さの限度などについて、必要な事柄を定めることで地区計画を具体化するための計画が地区整備計画です。ただし、市街化調整区域内の地域整備計画においては、市街化を抑えるため、建築物の大規模化を促進させることにつながる「容積率、建築物の建築面積や高さの最低限度」は定めることができません。

・制限の内容

地区計画の方針に反する行為を抑制するため、地区計画の区域内では、建物の建築などに、次のような制限が加えられます。

1、届出が必要な行為(届出制)

次の行為をする時は、あらかじめ届け出が必要です。

  • 土地の区画形質の変更
  • 建築物の建築・工作物の建設等
なお、この規制は「届出制」であること、また、地区計画は市町村単位で行われる小さな街づくりですから、届け出先は市町村長であること、さらに、その届け出は、行為に着手する日の30日前までに行う必要があります。

2、届出不要の行為

一方で、例外として、届け出が不要な次の場合があります。

  • 通常の管理行為、軽易な行為
  • 非常災害のための必要な応急措置として行う行為
  • 国または地方公共団体が行う行為
  • 都市計画事業の施行として行う行為
  • 開発許可を要する行為  等
3、市町村長の勧告

市町村長は、届け出があった場合で、その行為が地区計画の内容に適合しないと認める時は、その届け出をしたものに対し、設計の変更などの必要な措置をとることを勧告することができます。

 

 

 

宅建業者や宅建士が受けるペナルティー

宅建業者に対する監督処分

宅建業者に対する監督処分としては、指示処分、業務停止処分、免許取消処分の3つがあります。

・指示処分

指示処分とは、違反行為を解消するように指示することをいいます。

1、処分権者

免許権者及び業務地を管轄する都道府県知事です。 

2、指示処分事由

  • 業務に関し、取引の関係者に損害を与えたとき、または損害を与える恐れが大であるとき
  • 業務に関し、取引の公正を害する行為をしたとき、または取引の公正を害する恐れが大であるとき
  • 業務に関し、他の法令(住宅瑕疵担保履行法及びこれに基づく命令を除く)に違反し、宅建業者として不適当と認められるとき
  • 宅建士が監督処分を受けた場合で、宅建業者の責に帰すべき事由があるとき
  • 宅建業法の規定または住宅瑕疵担保履行法における瑕疵担保保証金の供託義務の規定等に違反したとき
・業務停止処分

一定の事由に該当した場合は、免許権者等または業務値を管轄する都道府県知事は1年以内の期間を定めて、業務の全部または一部の停止を命ずることができます。なお、宅建業者は、業務の全部停止を命じられた場合は、広告もNGです。

・免許取消処分

免許取消処分は免許権者だけが行うことができます。国土交通大臣や、宅建業法違反が行われた現地の都道府県知事は、他の免許権者から免許を受けている業者の免許を取り消すことはできません。

宅建士に対する監督処分

宅建士に対しては、指示処分、事務の禁止処分、登録の削除処分の3つの監督処分が適用されます。このうち、指示処分と事務の禁止処分は、登録している都道府県知事の他に、行為地を管轄する都道府県知事も行うことができます。それに対して、登録の削除処分は、登録している都道府県知事だけしかできません。また、指示処分や事務の禁止処分とは異なって、登録の削除処分は、処分事由に当たれば必ずしなければならないとされています。また、事務の禁止処分とは、1年以内の期間を定めて、宅建士としてすべき事務の全部または一部を禁止することです。

罰則

・罰則の種類

3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科

2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科

1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科

6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科

100万円以下の罰金

・両罰規定

法人の代表者、法人や人の代理人・使用人その他の従業員が、その法人または人の業務に関して、一定の違反行為をした場合、その行為者自身が罰せられるのはもちろん、その法人などに対しても罰金刑が科せられます。

欠陥住宅の販売に備えて

・住宅瑕疵担保履行法とは

宅建業者等の瑕疵担保責任の履行の実効性を確保するために設けられたのが住宅瑕疵担保履行法です。

宅建業者等の資力確保義務

お客さんに新築住宅を引き渡す売主や請負人は、新築住宅についての瑕疵担保責任の履行の実効性を確保するために、保証金を供託するか、保険に加入しなければなりません。これを資力確保義務といいます。ただし、買主などが宅建業者である場合は、これは生じません。義務の履行としては、保証金の供託か、保険加入かの、どちらかの措置を講ずることが必要であり、また、両者の併用も可能です。

 

報酬額の制限規定

報酬額を制限する規定

媒介や代理を行って、お客さんのために売買・交換・賃借の契約成立に務めた宅建業者は、当然報酬を受け取ることができますが、暴利を貪ることのないように、宅建業法では、消費者保護のためにその報酬の額を制限しています。

・報酬額に関する規定

宅建業者国土交通大臣が定める額を超えて報酬を受け取ることはできません。また、不当に高額の報酬を要求してはなりません。実際に受け取るかは関係なく、要求すること自体が違反になります。

宅建業者は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、報酬額を掲示しなければなりません。

・報酬の範囲

宅建業者は、業者の媒介や代理等により成約に至った場合に、報酬を受領することができます。成功報酬です。成約に至らなかった場合は、報酬のみならず、かかった必要経費等も請求することができません。ただし、次の費用は、成約に至らなくても、実費を請求することができます。

1つめは、依頼者からの依頼によって行う広告料金です。

2つめは、依頼者からの特別の依頼により支出を要する特別の費用で、事前に依頼者の承諾があるものです。また、代金が400万円以下の低廉な空き家等で、通常の売買・交換の媒介・代理よりも現地調査等の費用を要するものに関しては、宅建業者の調査費の負担軽減のために、「報酬額の計算方法」に従って報酬額を計算した金額に、現地調査等の費用相当額を合算した金額の範囲内で報酬を受領できるとされています。

消費税

・消費税の課税事業者と免税事業者

商品の販売やサービスの提供を行う事業者で、課税売上高が1000万円を超える場合は課税事業者、それ以下の場合は免税事業者です。

宅建業者と消費税

1、課税と非課税

課税の対象となるもの

建物、非居住用建物、宅建業者の報酬など

非課税となるもの

土地、居住用建物など

2、報酬と消費税

宅建業者が行う媒介や代理という「サービス」への消費税は、課税事業者の場合は、消費税相当額を含んだ額が報酬の上限額となります。そして、免税事業者の場合も、消費税相当額の40%(つまり4%)を報酬に含ませることができます。

報酬額の計算方法

・報酬額計算の基本のポイント

  1. 売買・交換契約なのか、賃借契約なのかを区別すること。
  2. 宅建業者が媒介という形で関わるのか、または代理という形で関わるのかを区別すること。
  3. 宅建業者が課税事業者なら消費税相当額を含んだ額を、免税事業者なら、その40%の仕入れにかかる消費税相当額(4%)を含んだ額を 、それぞれ報酬として受領できる点に注意すること。
・売買、交換の場合

1、媒介の場合

媒介の場合、依頼者一方から受け取れる限度額は「M」です。この限度額「M」には、消費税相当額を含んでいませんので、報酬の上限額を算定するには、消費税相当額をプラスする必要があります。

「M」の計算式(「速算方」)

  • 物件価格200万円以下の場合…M=「物件価格」×5%
  • 物件価格200万円を超え400万円まで…M=「物件価格」×4%+2万円
  • 物件価格400万円を超える…M=「物件価格」×3%+6万円

物件価格とは、消費税を含まない本体価格を指します。従って、消費税込みの場合は、消費税分を差し引いた額が物件価格となります。なお、交換の場合でお互いの物件価格に差があるときは、高い方の金額を採用して計算することができます。

2、代理の場合

代理の場合は、依頼者から2M受け取れます。媒介では、双方から依頼を受けることもあり得るのに対して、代理は一方からしか依頼を受けれないので、媒介と代理の場合で報酬にギャップが生じないように、代理の場合は2M受け取ることができます。

3、代理と媒介の場合

例えば、Aさんからは代理、Bさんからは媒介の依頼を受けるとします。このとき業者が受け取ることのできる限度額は合計で2Mです。

・賃借の場合

まず、賃借の場合は、原則として賃料をもとに報酬額を計算します。業者が受け取れる合計額は、媒介の場合でも代理の場合でも、賃借の1ヶ月分が上限です。ただし、居住用建物の賃借の媒介の時には、依頼者の承諾を得てる場合を除き、依頼者一方から受け取れる報酬は、借賃の2分の1ヶ月分が限度です。ただし、依頼者の承諾を得ているときは、依頼者の一方から、借賃の2分の1ヶ月分を超えて受け取ることも可能です。もちろんこの場合でも合計で1ヶ月分が限度です。

なお、居住建物以外の媒介なら、このような内訳の制限はなく、双方どのような割合であっても、1ヶ月分を上限として受領できます。

賃借で「権利金」が受け渡される場合について。権利金とは、権利設定の対価として支払われ、返還されないもののことです。居住用建物以外の賃借の場合には、権利金を売買代金としてみなして、限度額の算定をすることができます。つまり、売買の場合の「物件価格」のところに、権利金の額を当てはめて計算できるのです。そして、借賃の1ヶ月分か、権利金から算出された金額のいずれか高い方を業者が選択できます。なお、以上のことは、定期建物賃貸借の再契約の場合にも当てはまります。

・複数の宅建業者が関わる場合

まず、各業者が受領できる限度額内でなければなりません。例えば、AさんがX業者に媒介を依頼し、BさんがY業者に媒介を依頼した場合、XはAさんからの媒介ですからMが上限です。同様にYの上限もMです。

さらに、もう1つ条件が加わります。複数業者全体として受け取ることができる金額は、全業者を1人の業者とみなして受領できる限度額内になります。先の場合だと2Mです。このことは、賃借の場合も同様です。

 

業者が自ら売主となる時の8種規制

8種規制の趣旨

例えば、宅建業者Aさんが、土地を宅建業者でないBさんに売る時、取引にあたって、プロの業者Aさんと素人のBさんとの間には、情報力や交渉力などの力の差が歴然と存在しますから、Bさんに不利益な契約をBさんが結んでしまうおそれがあります。そこで、業者が自ら売主となる場合には、弱い消費者であるBさんを守るという観点から、宅建業法は、特別に8種類の規制(8種規制)を用意しているのです。 

8種規制の適用対象となる取引

素人の消費者を保護することが目的ですから、業者間の取引には適用されません。

8種規制は、「業者が自ら売主」となる場合に限って適用されます。舌がって、宅建業者Aさんが売主、素人の買主Bさん、宅建業者Cさんが媒介・代理業者としてAB間の取引に関わって契約を成立させる場合、売主Aさんには当然8種規制が適用されますが、Cさんには適用されません。

8種規制で受ける規制

・損害賠償額の予定等の制限

1、民法の定め

民法では、損害賠償額について予定額の定めは自由です。そして、予定をした場合は、原則としてその額を増減して請求することはできません。

2、宅建業法の定め

業者が自ら売主となる場合には、損害賠償額の予定額と違約金の合算額は、売買代金額の10分の2を超える定めをしてはならないとされています。もし、これを超える金額とした場合には、超える部分のみが無効となります。

・手付金の性質と額の制限

1、民法の定め

民法上は、買主が売主に交付する手付金にどのような意味を持たせるかは、当事者間に任され、はっきりしないときは、解約手付として扱われます。

解約手付が交付されている場合で、買主の方から解除するときは、売主への償いとして、手付金を放棄しなければなりません。逆に売主から解除する場合は、受け取っている手付にその同額を上乗せした額を支払うことになります。また、これは現実に提供されることが必要です。なお、解約手付による解除の際には、もちろん違約金は請求できません。また、解除は相手方が履行に着手するまでに限られるという時期の制限があります。

なお、手付の額そのものについては、制限がなく自由です。

2、宅建業法の定め

業者が自ら売主となるときは、手付の目的は、解約手付とみなされます。

買主を保護することが目的なので、買主に不利な特約は無効です。また、手付金の額は、代金額の10分の2を超えてはなりません。

・手付金等の保全措置

1、民法の定め

民法自体は、保全措置を講じることについての規定がありません。

2、宅建業法の定め

(1)保全措置の原則

業者が自ら売主となる売買契約においては、原則として、あらかじめ一定の保全措置を講じた後でなければ、宅建業者でない買主から手付金等を受領してはならないと定めています。ですから、逆に、もし業者が保全措置を講じない場合には、買主はお金を支払わなくとも、債務不履行にはなりません。

(2)保全措置を必要とする「手付金等」とは

「手付金等」とは、手付金・中間金等の名称のいかんを問わず、契約締結日以後、物件の引き渡し前までに授受される金銭で、代金に充当されるものをいいます。逆に言えば、引き渡し以降に授受される金銭は、この手付金等には該当せず、保全措置は不要です。他方、契約締結前に授受される申込証拠金も、契約締結後に手付金や内金等に充当されるものであれば、その段階で手付金等に当たり、保全の対象になります。

(3)保全措置の方法

未完成物件と完成物件の場合に区別することができます。

未完成物件の場合は、銀行等を連帯保証人にする(保証委託契約による)方法と、保険をかける(保証保険契約による)方法の2つがあります。

完成物件の場合は、未完成物件の場合の2つに加えて、手付金等を指定保管期間に預かってもらう(手付金等寄託契約による)という方法の3つがあります。

(4)保全措置が不要となる場合

原則として、業者が自ら売主となる場合、保全措置を講じなければならないのですが、いくつか保全措置が不要になる例外があります。

1つめは、買主が所有権の登記をしたとき、または所有権移転の登記がされたときです。登記を備えていれば、買主も安心だからです。

2つめは、業者が受け取る額(既に受け取った額も含めて)が少ないときです。ここでいう少ないとは、未完成物件の場合は、受領額が代金の5%以下かつ、1000万円以下の金額です。例えば、1億円の物件ならば500万円以下かつ1000万円以下の時は保全措置が不要です。つまりこの場合は500万円以下なら保全措置が不要です。完成物件の場合は、代金の10%以下かつ、1000万円以下であれば、保全措置は不要です。なお、完成・未完成の区別は売買契約締結時の状態で判断します。

なお、保全措置が必要な金額を超えることとなった場合は、既に受領している額を合わせた全額について保全措置を講じなければなりません。

・自己の所有に属しない物件の売買契約締結の制限

1、民法の定め

民法上では、他人物売買契約は有効です。そして、売主はその所有権を取得して買主に移転する義務を負います。また、未完成物件の場合も、いずれ完成することは実現可能ですから、その売買契約も有効です。

2、宅建業法の定め

原則として、自己の所有に属しない宅地建物について、自ら売主となる売買契約は結んではならないとされています。

(1)原則

宅建業法は、業者が自ら売主となるときは、原則として他人物売買を認めていません。未完成物件の場合も、完成できないというリスクがあるため、業者自ら売主となる場合、原則として認められていません。

(2)例外

他人物売買について、例外として認められているのは、売主の宅建業者Aさんが確実に取得でき、結果として買主のBさんも確実に取得できる場合です。具体的には、宅建業者のAさんが物件を取得する契約をCさんと締結している場合です。このAC間の契約は予約契約でも可能です。なお、契約が結ばれていれば良いので、この契約が履行済み、もしくは履行に着手している必要はありません。しかし、業者AさんとCさんとの契約が、例えば、Cさんが代替地を取得できれば効力を生じるという、停止条件つきの契約である場合は、AB間の他人物売買契約は認められません。

未完成物件の売買が例外として認められるのは、手付金等の保全措置が講じられている場合です。

クーリング・オフ制度

1、民法の定め

民法上の原則として、契約は一旦結ぶと「守らなければならない」という拘束力が生じます。従って、通常は債務不履行や一定の理由がなければ、解除することができません。また、一度「買いたい」と申し込んだ以上、一定の期間は、自由に申込みを撤回することも認められません。

2、宅建業法の定め

(1)クーリング・オフ制度

業者が自ら売主となる場合において、「事務所以外の場所」で行われた会受けの申し込みや売買契約は、原則として、買主は申し込みの撤回または介助をすることができると定めています。例えば、衝動買いなど、お客さんが冷静な判断をせずに申し込みをした場合に備えて、クーリング・オフ制度を認めています。そこで、冷静な判断ができるような場所でかい受けの申し込みや契約を締結したか否かが、クーリング・オフの可否の分かれ目となります。

(2)クーリング・オフ制度の適用がない「事務所等」

事務所や案内所などの専任の宅建士を設置しなければならない場所は、宅建士によって、契約前に重要事項の説明が行われることから、「冷静な判断ができる機会が与えられる場所」と言えるので、クーリング・オフ制度の適用がありません。専任の宅建士がいても、テント張りの案内所などの「土地に定着して以内案内所」は冷静な判断ができないとされ、クーリング・オフが可能です。

(3)「事務所等」について2つの注意点

まず1つめは、「専任の宅建士を設置すべき場所」については、宅建業法上、「専任の宅建士の設置義務」があるか否かで判断します。

2つめは、買受けの申し込みの場所と契約の場所が異なる場合は、申し込みをした場所が基準となります。

(4)「クーリング・オフが適用されない場合」(例外)

3つあります。

まず1つめは、冷静な判断ができる場所、つまり「事務所等」で、買主が「買いたい」と言った場合です。

2つめは、履行関係が終了している場合です。売主が既に物件を引き渡し、かつ買主が代金を全額支払った場合には、当事者双方ともりこうが終了しているため、契約の解除等はできません。ここで注意が必要なのは、物件の「引き渡し」が基準になる点です。例えば、単に移転登記がされただけでは、履行が終了したことにはなりません。

3つめは、8日間が経過した場合です。宅建業者が「クーリング・オフができます」と書面で告げた日から、8日間が経過した場合は、クーリング・オフ制度が適用されなくなります。業者は口頭ではなく書面で告げなければならないことに注意が必要です。

(5)クーリング・オフの方法・効果及び特約の効果

クーリング・オフの意思表示は、書面によって行います。そして、その効果は、例えば解除の場合であれば、お客さんが「解除します」という書面を発したときに生じます。例え、宅建業者に到達しなくても、また、到達が遅れても、書面を発したときに解除したことになります。

解除によって、業者には原状回復義務が生じます。さらに、クーリング・オフによて契約解除された場合は、損害賠償請求や違約金の請求などをすることができません。

宅建業法が定めているクーリング・オフ制度の規定に反するような、申込者などに不利な特約は無効となります。逆に、有利な特約は可能です。

・契約内容不適合責任(売主の担保責任)の特約の制限

1、民法の定め

売買した宅地・建物が種類・品質に関して契約の内容に適合していない場合は、買主は売主に対して、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除の4つをすることができるのが原則です。しかし、買主がその不適合を知った時から1年以内にそのことを売主に通知しないときは、責任を追及できません。

民法上では、買主に不利な特約を結んでも大丈夫です。

2、宅建業法の定め

買主を保護するために、契約内容不適合責任に関して、原則として、買主に不利な特約は認められず、無効となります。しかし、期日については、例外が認められていて、物件を買主に引き渡した日から2年以上という行使期間を決める特約だけは可能です。

・割賦販売契約の解除等の制限

1、民法の定め

民法では、売主が相当の期間を定めて催告をし、その期間内に履行がなされなければ、契約を解除することができます。この催告は、口頭でも可能です。そして、特約も自由です。

2、宅建業法の定め

30日以上の相当の期間を定めて、その支払いを書面で催告した後でなければ、契約を解除できず、また、残代金の一括請求をすることもできません。そして、この定めに反する特約は無効です。

・割賦販売等における所有権留保等の禁止

1、民法の定め

民法上は次の2つのどちらも可能です。

所有権留保とは、「代金の支払いがされるまでは、その所有権を売主に残しておく」というものです。

譲渡担保とは、担保にする物の所有権そのものを代金債権の債権者に移し、弁済が済めば回復させるというものです。

2、宅建業法の定め

(1)宅建業法では、所有権留保は、原則禁止です。業者が自ら売主となって割賦販売契約を締結した場合には、原則として、目的物を買主に引き渡すまでに、登記等の売主の義務を履行しなければなりません。しかし、例外が2つあります。

1つめは、業者が受け取っている金額が少ない場合です。具体的には代金額の10分の3以下の場合です。

2つめは、受領額が代金の額の10分の3を超えていても、買主が抵当権の設定や保証人を立てるなどの担保を設定せず、または設定する見込みがないときは認められます。

(2)同じ、買主保護の理由から、譲渡担保も原則禁止です。つまり、物件を買主に引き渡し、かつ代金の10分の3を超える額を受領した後は、担保の目的でお客さんから売買の目的物を譲り受けてはなりません。逆に言えば、受領額が代金の額の10分の3以下であれば、例外として、譲渡担保が許されます。

(3)「提携ローン付き販売」の場合にも、上記2つと同様の制限があります。

 

 

取引に必要な書面

媒介・代理契約の種類

媒介契約には、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があります。

1、一般媒介

例えば、AさんがB社に頼みますが、その一方で、重ねてC社にも頼むこともできます。また、自分で見つけた相手と直接取引することも自由です。なお、一般媒介では、AさんがB社の他にC社にも依頼をしたときは、B社に対し、他の業者名を明示する義務がある場合と、ない場合があります。

2、専任媒介

B社にしか依頼できないタイプです。この場合は、重ねて依頼はできません。ただし、自己発見取引は可能です。

3、専属専任媒介

AさんはBさんにしか依頼できません。また、自己発見取引の禁止の特約がつくタイプです。

「代理」の場合も上記の3種類がそのまま当てはまります。

売買・交換の媒介・代理契約の規制

宅建業法では、依頼者保護の観点から、一般媒介に関する規制を最もゆるく、専属専任媒介に関する規制を最も厳しくしています。ただし、一般・専任媒介契約の共通の規制として、媒介契約の目的物である宅地建物の売買または交換の申し込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければなりません。そして、専任媒介の場合に規制される事項は、有効期間・更新、報告義務、相手方の探索に関することの3つです。一般媒介であれば、これらの規制はないのですが、専任媒介や専属専任媒介については規制があります。なお、これらの規制に反する依頼者に不利な特約は無効です。

・有効期間等の制限

専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合は、期間は3ヶ月を超えてはならず、4ヶ月と決めても3ヶ月に短縮されます。そして、依頼者からの申し出がなければ、契約は更新されません。従って、自動更新する旨の特約は無効です。また、更新後の期間も3ヶ月以内です。

・業務処理状況の報告義務

専任媒介契約の場合は2週間に1回以上、専属専任媒介契約の場合は1週間に1回以上の報告義務があります。また、この報告は口頭や電子メールでも可能です。なお、この報告は、当事者が宅建業者同士であってもしなければなりません。 

・相手方の積極的探索義務

これは、より早く、広く相手方を見つけることができるように、指定流通機構(レインズ)に登録しなければならないという義務のことです。従って、媒介契約締結後の一定期間内に、一定事項をレインズに登録する必要があります。

一定期間とは、専任媒介契約の場合は媒介契約締結の日から7日以内、専属専任媒介契約の場合は契約締結の日から5日以内です。この「契約締結日」については、初日は算入されません。さらに、「7日以内」「5日以内」には、その業者の休業日は含まれません。

登録すべき、一定の事項は、物件の所在・規模・形質、売買すべき価額や評価額、主要な法令上の制限、専属専任媒介契約であればその旨とされています。所有者の氏名・登記された権利の種類、その内容などは不要です。

レインズに登録したときは、登録を証する書面をもらいますが、宅建業者はそれを遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません。そして、契約が成約した場合も遅滞なく、レインズへその旨を通知しなければなりません。通知すべき事項は、登録番号、物件の取引価格、売買または交換の契約が成立した年月日です。

売買・交換の媒介・代理契約書の交付義務と書面の記載事項

トラブルを防ぐために、宅建業者は、売買・交換に関する媒介・代理契約を結んだときは、遅滞なく、物件や契約内容について書面を作成して、依頼人に交付しなければなりません。なお、この義務は売買・交換契約の場合のみです。書面には、宅建業者が記名押印します。書面には記載事項が9つあります。

  1. 物件を特定するために必要な事項
  2. 宅地建物の売買すべき価額または評価額
  3. 媒介契約の種類
  4. 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
  5. 指定流通機構への登録に関する事項
  6. 報酬に関する事項
  7. 違反に対する措置
  8. その媒介契約が、国土交通大臣の定めた標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの区別
  9. 既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査を実施する者の斡旋に関する事項

重要事項の説明義務

・誰が、誰に対して、いつまでに行うのか

重要事項の説明を義務付けられているのは、宅建業者です。そして、その説明を物件を取得しようと考えている人に対して行う必要があります。宅地建物の売買契約の場合は買主、交換契約の場合は、両当事者です。そして、賃借契約の場合は、借りる人です。そして、この説明は、契約が成立するまでの間に行う必要があります。

・重要事項の説明の方法

書面に記載をし、その書面(「重要事項説明書」)を相手方に交付して行います。この書面を「35条書面」といいます。

1、説明について

宅建業者宅建士を使って説明をしなければなりません。なお、この場合は専任の宅建士であるか、一般の宅建士であるかは関係ありません。そして、宅建士は、重要事項の説明をするときには、お客さんが請求をしなくても宅建士証を提示しなければなりません。また、重要事項説明書には、責任の所在を明らかにするために、宅建士の記名押印が必要です。

2、説明に関する注意点

1つの取引に、複数の業者が関与する場合は、すべての業者に説明義務が課されていますが、1つの業者が代表して説明したり、関与した業者がそれぞれに分担して説明することも可能です。なお、その際の説明の誤りについては、すべての業者が共同で責任を負わなければなりません。

説明及び書面の交付の場所については、どこで行っても構いません。

宅地建物の取得者が宅建業者の場合は、35条書面の交付だけで足り、宅建士による説明は不要です。ただし、売買の対象が、「不動産信託受益権」の場合は、取得者が宅建業者であっても、宅建士による説明が必要です。

宅地建物の賃借の代理・媒介に係る説明にあたっては、厳格な要件の下、テレビ会議等のITを活用することが可能となりました。なお、この場合でも宅建士証の提示は必要です。

重要事項説明書の記載事項

まず、宅地建物の売買・交換と賃借を区別することがポイントです。そして、不動産信託受益権等の売買の場合についても確認が必要です。また、説明事項に関しては、物件に関する事柄と取引条件等に関する事柄に分類できます。さらに、マンションについては、マンション独特の追加的な説明事項があることに注意する必要があります。

・宅地建物の売買、交換の場合

  1. 登記された権利
  2. 法令に基づく制限
  3. 私道に関する負担に関する事項
  4. 飲料水・電気・ガス等の供給施設、排水施設の整備状況
  5. 未完成物件の場合の工事完了時の形状・構造
  6. 国土交通省令内閣府令で定める事項
  7. 既存の建物であるときは、建物状況調査等に関する事項
  8. 代金・交換差金以外に授受される金銭の額及び目的
  9. 契約の解除に関する事項
  10. 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
  11. 手付金等の保全措置の概要
  12. 支払金・預かり金を受領する場合の保全措置の有無・概要
  13. ローンの斡旋の内容及びローン不成立の場合の措置
  14. 契約内容不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結、その他の措置の有無・概要
  15. 割賦販売契約の場合の現金販売価格、割賦販売価格、預金・賦払金の額、支払い時期・方法
1〜7が物件に関する事項で8〜15が取引条件等に関する事項


・区分所有権(マンション)の目的である建物の場合の追加記載事項

マンションの場合は上記の説明事項に追加して以下の事項を説明しなければなりません。なお、売買・交換の場合は、すべて説明する必要がありますが、賃借の場合は、3と8だけ説明すれば足ります。

  1. 敷地に関する権利の種類及び内容
  2. 共用部分に関する規約の定めがあるときは、その内容
  3. 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容
  4. 専有使用権に関する規約の定めがあるときは、その内容
  5. 当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用、通常の管理費用その他の当該建物の所有者が負担しなければならない費用を、特定のものにのみ減免する旨の規約の定めがあるときは、その内容
  6. 計画修繕積立金の規約の定めがあるときは、その内容、及び既に積み立てられている額
  7. 区分所有者が負担する通常の管理費用の額
  8. 建物及び敷地の管理が委託されているときは、その委託先の氏名・住所等
  9. 当該一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容

・宅地建物の賃借の場合

  1. 登記された権利
  2. 法令に基づく制限
  3. 私道に関する負担に関する事項
  4. 飲料水・電気・ガス等の供給施設、排水施設の整備状況
  5. 未完成物件の場合の工事完了時の形状・構造
  6. 土砂(津波)災害警戒区域に関する事項
  7. 造成宅地防災区域に関する事項
  8. 建物の石綿の使用の有無の調査の結果の記録に関する事項
  9. 建物の耐震診断に関する事項
  10. 既存の建物であるときは、建物状況調査等に関する事項
  11. 借賃以外に授受されている金銭の額・目的
  12. 契約の解除に関する事項
  13. 損害賠償額の予定また廃役員に関する事項
  14. 支払金・預かり金を受領する場合の保全措置の有無・概要
  15. 台所・浴室・便所等の整備状況
  16. 契約期間及び契約更新に関する事項
  17. 定期借地権・定期借家権などの関する事項
  18. 宅地建物の用途や利用の制限
  19. 金銭の契約終了時の精算に関する事項
  20. 管理の委託を受けた者の氏名・住所等
  21. 契約終了時における宅地条の建物の取り壊しに関する事項の内容
  22. 区分所有権の目的である建物の場合の専有部分のようとや利用の制限に関する規約の定めがあればその内容、管理の委託先の氏名・住所等

・不動産信託受益権の売買

原則として、信託の対象である原資産の宅地建物などに関して、買主に対して、宅建士をして、一定の事項を重要事項として説明しなければなりません。なお、一定の事項とは、売買・交換の場合の説明事項である物件に関する事項や契約内容不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結等の措置を講じている場合のその他の措置の概要、区分所有建物の追加的説明事項などです。ただし、次の場合は説明不要です。

1、金融商品取引法2条31項に規定する特定投資家等を信託の受益権の売買の相手方とする場合

2、信託の受益権の売買契約の締結前1年以内に売買の相手方に対し、当該契約と同一の内容の契約について書面を交付して説明をしている場合等

37条書面の交付

37条書面とは、宅建業に関する取引における契約書面のことで、その目的は、契約当事者間のトラブル防止です。

・作成、交付について

37条書面の作成・交付の義務車は、不動産に関する契約の専門家である宅建業者です。例え相手方の承諾があっても省略はできません。作成や交付自体は宅建士が行う必要はありません。

契約の両当事者に交付します。なお、業者間の取引でも、媒介や代理等を行う場合で、買主等が業者の時でも、37条書面を作成・交付しなければなりません。

契約成立後遅滞なく作成・交付を行わなければなりません。これを怠れば、監督処分、さらに罰則の対象になります。

37条書面には、宅建士が記名押印をする必要があります。1つの取引に複数の業者が関与する場合、すべての宅建業者が、宅建士をして記名押印させる義務を負っています。また、業者間でもこの記名押印は必要です。そして、専任か一般か、もしくは、重要事項の説明書面に記名押印をした宅建士と同じか否かは関係ありません。

・書面の記載事項

  1. 当事者の氏名・住所
  2. 宅地建物を特定するため必要な表示
  3. 代金・交換差金・借賃の額、支払い時期、支払い方法
  4. 宅地建物の引き渡しの時期
  5. 移転登記申請の時期
  6. 既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項 
  7. 代金・交換差金・借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときはその額、授受の時期、目的
  8. 契約の解除に関する定めがあるときはその内容
  9. 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあるときはその内容
  10. 代金または交換差金についてのローンの斡旋の定めがあるときは、ローンが成立しない時の措置
  11. 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)に関する定めがあるときは、その内容
  12. 契約内容不適合を担保すべき責任、または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置について定めがあるときはその内容
  13. 宅地建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときはその内容
1〜6は必要的記載事項、7〜13は任意的記載事項