宅建士 民法等 契約
今日は宅建士の民法等の契約の意味や成立要件などの基本について学びました。
まず契約とは、簡単に言えば「約束」のことです。
例えばAさんがBさんに対して、自分の土地を1,000万円で売るという契約を締結したとします。 これは、AさんがBさんと1,000万円と引き換えに自分の土地を渡すという約束をしたことを意味します。
契約の成立には「申込み」と「承諾」が「一致(合致)」する必要があります。
AさんがBさんに「この土地を売りましょう」と申込みをし、Bさんが「買いましょう」と承諾をすることで契約が成立する。反対に、Bさんが「申込み」とAさんの「承諾」の一致でも契約は成立する。
契約の成立には当事者の申込みと承諾の合致のみで十分なので契約書を作らない「口約束」でも契約は成立します。
契約にはいくつかの種類があります。
- 当事者の合意だけで成立する諾成契約
- 当事者の合意の他に物の引き渡しがないと成立しない要物契約
- 対価等の支払いのある有償契約
- 対価等の支払いのない無償契約
契約は効果が無効になったり取り消しされたりすることがあります。
契約が無効となるものとしては公序良俗違反の契約があります。これは常識に反する、社会的な妥当性がない契約のことです。
契約の取り消しとは、一応有効だけれども「取り消します」ということで契約を無効にすることです。 この契約は取り消されない限りは、有効なままです。
契約の効力を発生させるためには、条件や期限などの要件があります。 その中でも特に重要なのが停止条件です。
停止条件とは、契約などの効力の発生を、成否未定の不確実な事実にかからせる事をいいます。例えば、転勤が決まったら売買契約の効力を生じさせる契約のことで、ここでは転勤が決まるという停止条件が成就した時から契約としての効力が生じます。
条件付き契約の各当事者は、条件の成否未定の間は、条件の成就によってその契約かあら生じる相手型の利益を害してはなりません。害したものは、不法行為による損害賠償義務を負います。また、条件の成否未定の間における都自社の権利義務は、普通の権利と同様に処分・存続・保存し、そのために担保を供することができます。さらに、条件の成就によって不利益を受ける当事者が、故意に条件の成就を妨げた時、相手方は、その条件を成就したものとみなすことができます。逆に、不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができます。
未成年者など判断能力が不十分なものを保護するための仕組みである「制限行為能力者制度」というものがある。ここでの「能力」とは権利能力、意思能力、行為能力のことである。
制限行為能力者には未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人という保護のされ方やその程度が異なる4つのタイプがあります。
未成年者制度
未成年者とは、20歳未満で未婚の人のことです。未成年者でも結婚をしている場合は成年者として扱われます。未成年者には親権者、もしくは未成年後見人という保護者がつけられます。未成年者自身が契約などを結ぶ場合は、原則として、保護者の同意を得なければなりません。また、保護者が未成年者の代わりに契約を結ぶこともできます。これを代理と言いますが、法律によって一定のものが代理人になる場合代理人は法定代理人と呼ばれます。未成年者が保護者の同意を得ずに1人で契約をした場合、その契約は、原則として取り消すことができます。ただし、未成年者が単独で行っても契約を取り消すことができない場合があります。1、単に権利を得、または義務を免れる行為。2、法廷代理人が処分を許した財産の処分行為。3、許可された営業に関する行為。1は、ただ出物をもらうだけの場合。2は、お小遣いで何かを買うような場合。3は、親が判断して営業の許可を与えた場合で、このとき、未成年者はその営業に関しては成年者と同一の行為能力を有することになる。
未成年者の保護者は、同意権・代理権を持っています。そして、未成年者が1人で契約を行った場合に取り消すことができる取消権、取消権を放棄して完全に有効にすることができる追認権も認められています。しかし、追認は法定代理人等がする場合を除いて、取り消しの原因となった状況が消滅し、かつ、取消権がある事を知った後でなければその効力生じません。
未成年者が行った契約は未成年者である本人、法定代理人、成年者となった本人が取り消すことができます。
成年後見制度
1、成年被後見人
成年被後見人とは精神上の障害によって理事を弁識する能力を欠く常況にある人で、家庭裁判所から「後見開始の審判」を受けた人のことを言います。例えば、重度の認知症で物事がよくわかっていないのが普通の状態の人やその配偶者が家庭裁判所に対して審判を求め、家庭裁判所の審判を受けた人のことです。成年被後見人自身が単独で契約の締結などの法律行為をすることは原則としてできません。もしその行為を行なっても取り消すことができます。さらに、判断能力が非常に乏しいので例え保護者が同意を与えた場合でも取り消すことができます。ただし、日用品など日常生活に関する行為は、取り消すことができません。成年被後見人は、判断能力が非常に乏しいため、民放は、成年後見人という保護者をつけています。成年後見人は法定代理人ですが、成年被後見人に代わって抵当権の設定などを行うには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。成年後見人には、代理権の他に取消権、追認権があります。なお、同意権はありません。
2、被保佐人
被保佐人とは、精神上の障害によって事理を弁識する能力が著しく不十分なもので、さらに、家庭裁判所による「保佐開始の審判」を受けたもののことです。被保佐人の保護者は保佐人と呼ばれます。被保佐人は、重要な財産上の行為については、保佐人の同意が必要です。同意を得なかったときは契約を取り消すことができます。また、同意が必要な行為で被保佐人の利害が害される恐れがないのに保佐人が同意をしないときは被保佐人の請求に基づいて、家庭裁判所が保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。保佐人には、重要な財産上の行為について、同意権・取消権・追認権があります。代理権は原則として与えられていませんが、特定の法律行為に関しては、当事者が望むなら、審判によって保佐人に代理権を与えることができます。
3、被補助人
被補助人とは、精神上の障害によって事理を弁識する能力が不十分であり、そして家庭裁判所による「補助開始の審判」を受けたもののことです。例えば、軽度の認知症で、1人では高額なものの取引をするのが不安な人が、補助して欲しいと望めば、審判によって補助してもらうことができるということです。被補助人の保護者は補助人と呼ばれます。被補助人の希望に沿ってどのように保護されるか選択することができます。不動産の売却などの特定の法律行為を定め、その行為について同意が必要として補助してもらったり、また、代理で契約をしてもらうという形であったり、同意と代理両方といった形で補助してもらうことも可能です。ただしどの場合でも家庭裁判所の審判は必要です。被補助人は常に補助人の同意が必要というわけではないので同意を補助してもらうという形をとっている場合は同意なしにその行為を行なった場合に取り消すことができます。
制限行為能力者の取引の相手方の保護及び法律関係安定のための制度
・相手方の催告権
催告とは、取引の相手方が制限行為能力者の法定代理人に対して、「取り消すのか追認するのか、はっきりしろ」と 確答を促すことです。このとき相手方は、1ヶ月以上の期間を定めて、制限行為能力者側に確答する様に促します。この催告を受けたのに放置した場合は追認したとみなして良いのです。
・詐術を用いた場合
制限行為能力者が、書類を偽装したりして、行為能力者であると信じさせるための詐術を用い、相手方がそれを信じた場合は、制限行為能力者であることを理由にその行為を取り消すことができません。
・取消権の時間の制限
追認することができる時から(行為能力者になってから)5年、行為のあった時から20年のいずれか早い時が経過すると取り消すことができなくなります。
・法定追認
法定追認とは、追認をしたわけではないけれども、契約の完全有効を前提にした様な行為をしたときは、追認と同じ効果が生じるというものです。法定追認と認められるのは、追認することができる時から、異議を留めずに、次の様な行為をした場合です。1、債務の一部または全部の履行。2、相手方に履行を請求した場合。3、取得した権利の一部または全部の譲渡をした場合等。履行することは、「契約が完全に有効」であることを前提にした行動なので法定追認が認められます。
騙されて契約したら
・当事者間での効果
詐欺による意思表示は取り消すことができます。
・第三者に対する効果
詐欺による取り消しは、取り消し前の善意無過失の第三者には対抗できない。つまりAさんがBさんに騙されて家を売り、Bさんがその家を、事情を知らないCさんに転売した時、Aさんは取り消しをすることができない。
・第三者の詐欺
AさんがDという第三者に騙されて、家をEさんに売却する契約をした時、Eさんが第三者のDが詐欺を働いたという事実を知っている、または知ることができたときに限ってAさんはその契約を取り消すことができるとされています。しかし、Eさんが善意無過失の時は、取り消すことはできません。
強迫による意思表示
脅すことを強迫といいます。脅されて契約をした場合も、その意思表示を取り消すことができます。ただし、詐欺との違いが2点あります。
1、強迫によって意思表示をした時、その取り消しは、取り消し前の善意無過失の第三者にも対抗することができます。
2、第三者が脅迫をしたという場合、契約の相手方が善意無過失の場合でも、取り消すことができます。
このように、詐欺の場合と強迫の場合は違っています。強迫の場合は詐欺の場合とは異なって、強迫された本人には落ち度がないのが普通なので、強迫された者の保護が優先されます。
通謀虚偽表示
Aさんが債権者に家を差し押さえられないようにBさんと共謀して嘘の売買契約を結ぶことを通謀虚偽表示といいます。このような通謀虚偽表示は無効になります。
・第三者に対する効果
わざわざ嘘の表示をするようなものは責任が重いですから、民法では虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができないとしています。
当事者の一方が、わざと真意と異なる意思表示をすることを、心裡留保といいます。例えばAさんが本当は売るつもりはないけれど、Bさんに冗談で「家を売りますよ」と言った時、Bさんが冗談であることに気付いていなければ、民法は、原則として、この意思表示は有効であるとしています。しかし、Bさんが冗談であることを知っていた場合や注意していれば知ることができた場合は無効としています。
錯誤
錯誤とは、言い違い、書き違いなどの勘違いのことです。
錯誤には次の2種類があります。ひとつ目は、意思表示に対応する意思を欠く錯誤(例えば、土地を1000万円で売るつもりだったのに、契約書面には100万円と書いてしまった。)のことで、表示錯誤と言われます。ふたつ目は、表意者が契約等の法律行為の基礎とした事情についての、その認識が事実に反する錯誤で、動機の錯誤と言われています。例えば、「今なら課税されない」と誤解して土地を売却するなど、意思表示の動機に錯誤があるに過ぎない時です。動機の錯誤の場合は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されている時に限り、することができます。なお、この表示は明示だけでなく、黙示の表示でも良いとされています。
民法では、錯誤による意思表示は、取り消すことができます。しかし、錯誤による取り消しを主張するためには次の2つの条件があります。
1、その錯誤が、契約などの法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること。
2、勘違いをした人に重大な過失がないこと。
代理で契約を結んでもらった時
・代理とは
土地を売りたいAさんが不動産業者のBさんに売買を依頼し、依頼を受けたbさんが土地を買いたいCさんのところへ行き、BさんがAさんの代理人という形で契約を結んだ結果、契約の効果がAさんとCさんの間に生じ、契約の当事者になる仕組みのこと。
・代理の要件
Aさんに契約の効果が帰属するためにはいくつか条件があります。1、まず、Bさんは代理権を持っていなければいけません。2、BさんがCさんに対して、「Aさんのために契約を結びます」と示す賢明をした上での意思表示をする必要があります。
・代理の種類
代理には任意代理と法定代理があります。任意代理とは、例えばAさんが自分の意思でBさんに代理権を与えるという場合です。業者に依頼するような場合です。法定代理とは、法律が代理となる人に代理権を自動的に与えている場合です。未成年者の保護者などです。
・代理権の範囲
任意代理の場合は、本人から与えられた代理権によって、その権限の範囲が決まりますが、権限が決められていない代理人ができることは、保存行為、つまり、物や権利の性質を変えない範囲内での利用・改良行為に限られています。
・代理人の行為能力
制限行為能力者が「任意代理人」として単独で契約を結んでも、取り消すことができません。ただし、制限行為能力者が、他の制限行為能力者の法定代理人として行なった行為は取り消すことができます。
・代理権の消滅
代理人が代理権を与えられたあとに後見開始の審判を受ければ(成年被後見人になれば)、代理人権は消滅します。他にも代理人が死亡または破産手続きの開始が決定した時、本人の死亡または任意代理の場合のみ本人の破産手続きの開始が決定した時にも消滅します。
・自己契約
原則として、自己契約は許されておらず、自己契約を行ったときは無権代理行為とみなされ、効果が帰属しません。しかし、例外として、契約者に不利益が生じる可能性がないような場合、例えば自己契約をすることにあらかじめ許諾を与えられている場合や、決まった義務を果たすだけで、代理人に裁量の余地がない債務の履行の場合には、自己契約は可能です。
・双方代理
双方代理も原則としては認められず、双方代理をしたときは無権代理行為とみなされます。例外は、自己契約と同様です。
自己契約や双方代理の他にも代理人にとっては利益になるが本人にとっては不利益となるような、代理人と本人との利益が相反する行為についても、原則として、無権代理行為とみなされます。しかし、本人があらかじめ許諾した行為については、例外的に、無権代理行為とはみなされません。
・代理行為
代理行為は顕名をした上で意思表示を行うことが必要です。顕名のないときは、原則として本人に効果は帰属せず、代理人が自分で自分自身のために契約をした物として扱われます。しかし、顕名がなくても相手方が代理人だということを知っていた場合、または知り得る状態にあった場合は、行為の効果は本人に帰属することになります。
・代理行為の瑕疵
代理人のBさんが強迫によって契約した場合、善意か悪意か等については、代理人のBさんを基準に考えることが原則ですが、取り消すことができるのは本人のAさんです。
・復代理
Aさんの代理人となったBさんがさらに自分の代理人としてCさんを雇い、そのCさんがDさんと契約を結ぶ。その結果、契約の効果が本人Aさんに帰属することを復代理と言い、Cさんのことを復代理人と言います。
・復代理人の選任
任意代理の場合は、原則として、復代理人を選ぶことはできません。しかし、本人の許諾がある場合や、緊急の事態などやむを得ない事情のある場合は選ぶことができます。法定代理の場合は、いつでも自由に復代理人を選任することができます。
復代理人の引き起こした不始末については、本人と代理人との間の事務処理契約に関する債務不履行として、責任を負うことになります。全責任を負うのが原則ですが、やむを得ない事情で選んだ場合には軽くなり、選任監督責任で良いとされています。
代理権のない無権代理人が代理行為を行うことを無権代理と言います。この契約の効果は原則として本人に帰属しませんが、本人が無権代理行為を追認すると契約に効果が生じます。無権代理には相手方を保護するために4つの手段が用意されています。
1、催告権
催告とは本人に相当な期間を決めて、「追認してください」と確答を促すという制度です。本人側が催告に対して何も返事をしない場合は追認を拒絶したものとみなされます。
2、取消権
相手方が善意、つまり、無権代理人だと知らなかった場合は、本人が追認するまでであれば、契約を取り消すことができます。
3、無権代理人への責任追及権
相手方は無権代理人に対して、損害賠償請求か利口の請求のどちらかを選択して請求することができます。ただし、無権代理人が自己の代理権を証明した時、または、本人の追認を得たときは、この責任を免れます。また、代理権がないことを相手方が知っていたとき、または、過失によって知らなかったとき、無権代理人が制限行為能力者のいずれかに該当すれば、無権代理人はこの責任を負いません。
4、表見代理
相手方が無権代理人に代理権があると主張することができる制度のことです。表見代理は相手方が善意無過失で本人に落ち度(帰責性)があった場合に限り適用されます。表見代理にはいくつか種類があります。代理権を与えるつもりがないのにもかかわらず、委任状を無権代理人に渡し、契約を結んだ場合は代理権授与の表示による表見代理と言います。代理人が抵当権設定の大利権しか与えられていないのに売買契約を結んだ場合は権限外の行為の表見代理、代理人をクビになったのにもかかわらず代理人と称して契約を結んだ場合は代理権消滅後の表見代理と言います。