takanori_takkenの日記

2020年宅建士合格を目指して勉強していくブログです。宅建士の勉強をする中で分かったことなどを主に書いていきます。

業者が自ら売主となる時の8種規制

8種規制の趣旨

例えば、宅建業者Aさんが、土地を宅建業者でないBさんに売る時、取引にあたって、プロの業者Aさんと素人のBさんとの間には、情報力や交渉力などの力の差が歴然と存在しますから、Bさんに不利益な契約をBさんが結んでしまうおそれがあります。そこで、業者が自ら売主となる場合には、弱い消費者であるBさんを守るという観点から、宅建業法は、特別に8種類の規制(8種規制)を用意しているのです。 

8種規制の適用対象となる取引

素人の消費者を保護することが目的ですから、業者間の取引には適用されません。

8種規制は、「業者が自ら売主」となる場合に限って適用されます。舌がって、宅建業者Aさんが売主、素人の買主Bさん、宅建業者Cさんが媒介・代理業者としてAB間の取引に関わって契約を成立させる場合、売主Aさんには当然8種規制が適用されますが、Cさんには適用されません。

8種規制で受ける規制

・損害賠償額の予定等の制限

1、民法の定め

民法では、損害賠償額について予定額の定めは自由です。そして、予定をした場合は、原則としてその額を増減して請求することはできません。

2、宅建業法の定め

業者が自ら売主となる場合には、損害賠償額の予定額と違約金の合算額は、売買代金額の10分の2を超える定めをしてはならないとされています。もし、これを超える金額とした場合には、超える部分のみが無効となります。

・手付金の性質と額の制限

1、民法の定め

民法上は、買主が売主に交付する手付金にどのような意味を持たせるかは、当事者間に任され、はっきりしないときは、解約手付として扱われます。

解約手付が交付されている場合で、買主の方から解除するときは、売主への償いとして、手付金を放棄しなければなりません。逆に売主から解除する場合は、受け取っている手付にその同額を上乗せした額を支払うことになります。また、これは現実に提供されることが必要です。なお、解約手付による解除の際には、もちろん違約金は請求できません。また、解除は相手方が履行に着手するまでに限られるという時期の制限があります。

なお、手付の額そのものについては、制限がなく自由です。

2、宅建業法の定め

業者が自ら売主となるときは、手付の目的は、解約手付とみなされます。

買主を保護することが目的なので、買主に不利な特約は無効です。また、手付金の額は、代金額の10分の2を超えてはなりません。

・手付金等の保全措置

1、民法の定め

民法自体は、保全措置を講じることについての規定がありません。

2、宅建業法の定め

(1)保全措置の原則

業者が自ら売主となる売買契約においては、原則として、あらかじめ一定の保全措置を講じた後でなければ、宅建業者でない買主から手付金等を受領してはならないと定めています。ですから、逆に、もし業者が保全措置を講じない場合には、買主はお金を支払わなくとも、債務不履行にはなりません。

(2)保全措置を必要とする「手付金等」とは

「手付金等」とは、手付金・中間金等の名称のいかんを問わず、契約締結日以後、物件の引き渡し前までに授受される金銭で、代金に充当されるものをいいます。逆に言えば、引き渡し以降に授受される金銭は、この手付金等には該当せず、保全措置は不要です。他方、契約締結前に授受される申込証拠金も、契約締結後に手付金や内金等に充当されるものであれば、その段階で手付金等に当たり、保全の対象になります。

(3)保全措置の方法

未完成物件と完成物件の場合に区別することができます。

未完成物件の場合は、銀行等を連帯保証人にする(保証委託契約による)方法と、保険をかける(保証保険契約による)方法の2つがあります。

完成物件の場合は、未完成物件の場合の2つに加えて、手付金等を指定保管期間に預かってもらう(手付金等寄託契約による)という方法の3つがあります。

(4)保全措置が不要となる場合

原則として、業者が自ら売主となる場合、保全措置を講じなければならないのですが、いくつか保全措置が不要になる例外があります。

1つめは、買主が所有権の登記をしたとき、または所有権移転の登記がされたときです。登記を備えていれば、買主も安心だからです。

2つめは、業者が受け取る額(既に受け取った額も含めて)が少ないときです。ここでいう少ないとは、未完成物件の場合は、受領額が代金の5%以下かつ、1000万円以下の金額です。例えば、1億円の物件ならば500万円以下かつ1000万円以下の時は保全措置が不要です。つまりこの場合は500万円以下なら保全措置が不要です。完成物件の場合は、代金の10%以下かつ、1000万円以下であれば、保全措置は不要です。なお、完成・未完成の区別は売買契約締結時の状態で判断します。

なお、保全措置が必要な金額を超えることとなった場合は、既に受領している額を合わせた全額について保全措置を講じなければなりません。

・自己の所有に属しない物件の売買契約締結の制限

1、民法の定め

民法上では、他人物売買契約は有効です。そして、売主はその所有権を取得して買主に移転する義務を負います。また、未完成物件の場合も、いずれ完成することは実現可能ですから、その売買契約も有効です。

2、宅建業法の定め

原則として、自己の所有に属しない宅地建物について、自ら売主となる売買契約は結んではならないとされています。

(1)原則

宅建業法は、業者が自ら売主となるときは、原則として他人物売買を認めていません。未完成物件の場合も、完成できないというリスクがあるため、業者自ら売主となる場合、原則として認められていません。

(2)例外

他人物売買について、例外として認められているのは、売主の宅建業者Aさんが確実に取得でき、結果として買主のBさんも確実に取得できる場合です。具体的には、宅建業者のAさんが物件を取得する契約をCさんと締結している場合です。このAC間の契約は予約契約でも可能です。なお、契約が結ばれていれば良いので、この契約が履行済み、もしくは履行に着手している必要はありません。しかし、業者AさんとCさんとの契約が、例えば、Cさんが代替地を取得できれば効力を生じるという、停止条件つきの契約である場合は、AB間の他人物売買契約は認められません。

未完成物件の売買が例外として認められるのは、手付金等の保全措置が講じられている場合です。

クーリング・オフ制度

1、民法の定め

民法上の原則として、契約は一旦結ぶと「守らなければならない」という拘束力が生じます。従って、通常は債務不履行や一定の理由がなければ、解除することができません。また、一度「買いたい」と申し込んだ以上、一定の期間は、自由に申込みを撤回することも認められません。

2、宅建業法の定め

(1)クーリング・オフ制度

業者が自ら売主となる場合において、「事務所以外の場所」で行われた会受けの申し込みや売買契約は、原則として、買主は申し込みの撤回または介助をすることができると定めています。例えば、衝動買いなど、お客さんが冷静な判断をせずに申し込みをした場合に備えて、クーリング・オフ制度を認めています。そこで、冷静な判断ができるような場所でかい受けの申し込みや契約を締結したか否かが、クーリング・オフの可否の分かれ目となります。

(2)クーリング・オフ制度の適用がない「事務所等」

事務所や案内所などの専任の宅建士を設置しなければならない場所は、宅建士によって、契約前に重要事項の説明が行われることから、「冷静な判断ができる機会が与えられる場所」と言えるので、クーリング・オフ制度の適用がありません。専任の宅建士がいても、テント張りの案内所などの「土地に定着して以内案内所」は冷静な判断ができないとされ、クーリング・オフが可能です。

(3)「事務所等」について2つの注意点

まず1つめは、「専任の宅建士を設置すべき場所」については、宅建業法上、「専任の宅建士の設置義務」があるか否かで判断します。

2つめは、買受けの申し込みの場所と契約の場所が異なる場合は、申し込みをした場所が基準となります。

(4)「クーリング・オフが適用されない場合」(例外)

3つあります。

まず1つめは、冷静な判断ができる場所、つまり「事務所等」で、買主が「買いたい」と言った場合です。

2つめは、履行関係が終了している場合です。売主が既に物件を引き渡し、かつ買主が代金を全額支払った場合には、当事者双方ともりこうが終了しているため、契約の解除等はできません。ここで注意が必要なのは、物件の「引き渡し」が基準になる点です。例えば、単に移転登記がされただけでは、履行が終了したことにはなりません。

3つめは、8日間が経過した場合です。宅建業者が「クーリング・オフができます」と書面で告げた日から、8日間が経過した場合は、クーリング・オフ制度が適用されなくなります。業者は口頭ではなく書面で告げなければならないことに注意が必要です。

(5)クーリング・オフの方法・効果及び特約の効果

クーリング・オフの意思表示は、書面によって行います。そして、その効果は、例えば解除の場合であれば、お客さんが「解除します」という書面を発したときに生じます。例え、宅建業者に到達しなくても、また、到達が遅れても、書面を発したときに解除したことになります。

解除によって、業者には原状回復義務が生じます。さらに、クーリング・オフによて契約解除された場合は、損害賠償請求や違約金の請求などをすることができません。

宅建業法が定めているクーリング・オフ制度の規定に反するような、申込者などに不利な特約は無効となります。逆に、有利な特約は可能です。

・契約内容不適合責任(売主の担保責任)の特約の制限

1、民法の定め

売買した宅地・建物が種類・品質に関して契約の内容に適合していない場合は、買主は売主に対して、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除の4つをすることができるのが原則です。しかし、買主がその不適合を知った時から1年以内にそのことを売主に通知しないときは、責任を追及できません。

民法上では、買主に不利な特約を結んでも大丈夫です。

2、宅建業法の定め

買主を保護するために、契約内容不適合責任に関して、原則として、買主に不利な特約は認められず、無効となります。しかし、期日については、例外が認められていて、物件を買主に引き渡した日から2年以上という行使期間を決める特約だけは可能です。

・割賦販売契約の解除等の制限

1、民法の定め

民法では、売主が相当の期間を定めて催告をし、その期間内に履行がなされなければ、契約を解除することができます。この催告は、口頭でも可能です。そして、特約も自由です。

2、宅建業法の定め

30日以上の相当の期間を定めて、その支払いを書面で催告した後でなければ、契約を解除できず、また、残代金の一括請求をすることもできません。そして、この定めに反する特約は無効です。

・割賦販売等における所有権留保等の禁止

1、民法の定め

民法上は次の2つのどちらも可能です。

所有権留保とは、「代金の支払いがされるまでは、その所有権を売主に残しておく」というものです。

譲渡担保とは、担保にする物の所有権そのものを代金債権の債権者に移し、弁済が済めば回復させるというものです。

2、宅建業法の定め

(1)宅建業法では、所有権留保は、原則禁止です。業者が自ら売主となって割賦販売契約を締結した場合には、原則として、目的物を買主に引き渡すまでに、登記等の売主の義務を履行しなければなりません。しかし、例外が2つあります。

1つめは、業者が受け取っている金額が少ない場合です。具体的には代金額の10分の3以下の場合です。

2つめは、受領額が代金の額の10分の3を超えていても、買主が抵当権の設定や保証人を立てるなどの担保を設定せず、または設定する見込みがないときは認められます。

(2)同じ、買主保護の理由から、譲渡担保も原則禁止です。つまり、物件を買主に引き渡し、かつ代金の10分の3を超える額を受領した後は、担保の目的でお客さんから売買の目的物を譲り受けてはなりません。逆に言えば、受領額が代金の額の10分の3以下であれば、例外として、譲渡担保が許されます。

(3)「提携ローン付き販売」の場合にも、上記2つと同様の制限があります。