都市計画の決定
都市計画の決定権者
原則として、都道府県と市町村です。つまり、都道府県と市町村がそれぞれ役割分担をしながら、都市計画を決めていきます。そして、2つ以上の都府県にまたがる都市計画区域の中の都市計画に関する決定権者は、都道府県に代えて、国土交通大臣と市町村となります。
・都道府県が決定する都市計画
- 都市計画区域の整備・開発・保全の方針
- 市街化区域及び市街化調整区域の区分
- 都市再開発方針等
- 地域地区(大都市におけるもの、または大規模なもの等)
- 都市施設(広域的見地から決定すべきものなど)
- 市街地開発事業(大規模なものなど)
- 市街地開発事業等予定区域(広域的見地から決定すべきものなど)
・市町村が決定する都市計画
- 上記4以外の地域地区
- 上記5以外の都市施設
- 上記6以外の市街地開発事業
- 上記7以外の市街地開発事業等予定区域
- 地区計画等
- その他
都市計画の決定手続き
都市計画を決めていく中で重要なのは「利害関係者」との調整です。ではどんな人が登場するのでしょうか。まず、第一に住民です。第二に、専門的判断を下す、エキスパートの集団である都市計画審議会です。これには、都道府県都市計画審議会と市町村都市計画審議会の2つがあります。第三に、国の利害に関わる問題については、国土交通大臣が登場します。最後に、関係市町村です。都道府県が定める都市計画は、当然市町村に影響を与えるからです。
・都道府県が定める都市計画
まず、都市計画の案を作成する段階で、必要に応じて公聴会などを開催します。これによって、住民等利害関係人が参加することができます。
次に、原案を都市計画を決定すべき理由を記載した書面を添えて、公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければなりません。原案を一般の人が2週間見ることができ、この間に、住民などの利害関係人は意見書を出すことができます。
そして、都道府県が定める都市計画ですから、関係する市町村の意見を聞く必要があります。
次に、専門家集団である都道府県都市計画審議会が登場します。ここでは、この都道府県都市計画審議会の議を経なければなりませんが、それにあたって都道府県は、住民などから出された意見書の要旨を提出しなければなりません。
さらに、国の利害に重大な関係のある都市計画の場合、例えば、空港や一級河川などに関する場合には、都道府県は、国土交通大臣との協議をし、その同意を得なければなりません。
・市町村が定める都市計画
市町村は、議会の議決を経て定められた市町村の建設に関する基本構想や都市計画区域の整備・開発・保全の方針に即して、まずは、市町村における都市計画に関する基本的な方針を定めなければなりません。この市町村のマスタープランを決める時には、住民の意見を反映させるために公聴会が開催されます。この場合、知事の同意は不要です。また、市町村が決める都市計画は、基本構想に即して定められます。
次に、市は、都市計画を決定する時は、あらかじめ都道府県知事に協議しなければならず、また、町村は協議の上、さらに、知事の同意を得なければなりません。逆に言えば、私の場合は、知事の同意は不要です。
・決定手続き等におけるその他の注意点
土地の所有者・借地権者や街づくりNPOなどは、一定の場合に、都市計画に関する基準に適合し、土地所有者等の3分の2以上の同意を得られれば、都道府県または市町村に対して、素案を添えて、都市計画の決定や変更を提案することができます。
都市計画が定められ、決定の告示がされた時から都市計画の効力が生じるとされます。
市町村が定めた都市計画都道府県が定めた都市計画とが抵触する場合は、より広域的な見地から、都道府県が定めた都市計画が優先します。
まちづくりの観点から、空き地・空き家等の増加への対策として、次の制度が創設されました。
- 都道府県や市町村は、都市施設等の整備に係る都市計画の案を作成しようとする場合には、その整備を行うと見込まれるものとの間で、都市施設等整備協定を締結することができます。
- 市町村長は、都市計画の決定に関する協力等の業務を適正・確実に行うことができる法人等を、都市計画協力団体として指定でき、その団体は、市町村に対し、都市計画の決定等の提案ができるとされました。
都市計画事業と都市計画制限
都市計画事業には、都市施設に関するものと市街地開発事業に関するものとの2つがありますが、これらの都市計画事業が行われるときに加えられる制限が、都市計画制限です。建築や造成などを行う場合には、その行為が事業の障害となることを防ぐために、「あらかじめ、都道府県知事の許可を受ける必要がある」という形で、規制しています。
事業までの過程(制限の内容)
都市計画事業では、通常、予定区域・施行予定者を含めないパターンで行われます。例えば、普通規模の団地を作るような場合です。それに対して、大規模な都市施設や新開発の市街地開発事業に関しては、予定区域・施行予定者を定めるパターンと、さらに予定区域を定めないものの施行予定者は定める、というパターンもあります。
・都市計画施設等の区域内での制限
1、行動の許可制
この区域内で建築物の建築を行う場合は、都道府県知事等の許可を得なければならないのが原則です。しかし、許可不要となる次の1〜3の例外があります。緊急事態や、大したことのな行為の場合です。
2、建築についての許可基準
- 階数が2以下で、かつ、地階を有しない木造建築物の改築・移転
- 非常災害の応急措置として行う行為
- 都市計画事業の施行として行う行為 等
次の1または2に該当する建築物を建築する場合、都道府県知事等は、原則として許可しなければなりません。
・市街地開発事業等予定区域内での制限
- 都市計画に適合するもの
- 階数が2以下で地階を有せず、主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などの構造で、かつ、容易に移転・除却できると認められるもの
1、市街地開発事業等予定区域内で、次の1〜3を行う場合は、原則として、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
2、そして、都市計画施設等の区域内での制限の例外と同様の趣旨で、次の1〜3が許可不要となります。
- 建築物の建築
- 工作物の建設
- 土地の形質の変更(土地の造成工事)
・都市計画事業の認可等の告示後の事業地内での制限
- 通常の管理行為、軽易な行為
- 非常災害の応急措置として行う行為
- 都市計画事業の施行として行う行為 等
これは、今までの制限の中で最も厳しい制限です。
都市計画事業地内で、事業の施行の障害となる恐れのある次の1〜3の行為、および4の行為をするときには、都道府県知事等の許可が必要です。
そして、この制限には例外はありません。
- 建築物の建築
- 工作物の建設
- 土地の形質の変更
- 重量5トンを超える移動の容易でない物件の設置・堆積
なお、都市計画事業については、土地収用法の規定による事業の認定は、行われません。都市計画事業の認可または承認があればその認定に代替されるとして、都市計画事業の告示をもって事業認定の告示とみなされます。
開発許可制度
開発許可制度とは、でたらめな開発によっていい加減な街ができないようにするための仕組みです。
開発許可制度の目的
乱開発を防止して、不良な市街地の形成を防ぐことなどを目的としています。
開発許可制度の内容
開発行為をするものは、日本全国どこでも、原則として、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません。
・開発行為とは
開発行為とは「土地の区画形質の変更」、一言で言えば「造成工事」のことです。そして、この「工事」とは、主として建築物の建築や特定工作物の建設を目的として行う造成工事を指します。
1、建築物の建築とは、例えば、ビルやマンション、一戸建ての住宅などの新築、増改築、移転などのことです。
2、特定工作物には、第1種と第2種の2種類があります。
第1種特定工作物とは、周辺の環境を悪化させる恐れのあるコンクリートプラントやアスファルトプラントなどの工作物のことです。
第2種特定工作物は、非常に重要です。まず、ゴルフコースは規模にかかわらず該当します。さらに、1ha以上の野球場、庭球場、遊園地などの運動・レジャー施設、墓園等です。ゴルフコース以外は、1ha以上と限定されていることに注意が必要です。
3、土地の区画形質の変更とは、土地の分割や造成、地目変更などのことです。
・許可不要となる開発行為(例外)
開発を規制する目的は、乱開発の防止ですので、好ましい開発ならば、そもそも許可は不要です。
開発許可の申請の手続き
・公共施設の管理者の同意等
道路などの公共施設の適切な管理を図るためには、現在存在する「関係のある」公共施設の管理者と協議をしてその同意を得ることが必要です。さらに、開発に伴って、将来道路が「設置される」ということになれば、その将来の道路などの公共施設を管理することとなるものと協議をしなければなりません。
・許可の申請
1、申請書の記載事項
2、申請に必要な添付書類
- 開発区域の位置、区域および規模
- 開発区域内において建設が予定される建築物または特定工作物の用途(構造・設備等は不要)
- 開発行為に関する設計(1ha以上の規模の開発行為に関する設計図書は、一定の資格を有するものによる作成が必要)
- 工事施工者 等
許可の申請にあたっては、同意を得たことを証する書面や協議の経過を証する書面を添付しなければなりません。なお、33条の許可をするか否かの基準としては、「開発許可にかかる区域内の土地所有者などの相当数の同意」が必要ですので、土地所有者などの相当数の同意を得たことを証する書面も添付しなければなりません。
・33条、34条の許可基準
許可基準とは、知事が許可するか否かを判断するための基準です。この基準に例外はありません。
1、一般的基準
都道府県知事は、申請された開発行為が次のような33条に挙げられている許可基準に適合しており、かつ、手続きが法律で定められていることに反しない場合には、必ず許可しなければなりません。
33条の許可基準としては、例えば、①予定建築物等の用途が用途地域などの用途の制限に適合している、②排水路その他の排水施設が必要な構造で適当に配置されるように設計されている、③予定建築物の用途等が地区計画等の内容に即して定められている、などがあります。さらに、④その開発行為を行う土地やその開発行為に関する工事をする土地の区域内の土地などについて、土地の所有者など、その開発行為の施行などの妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を得ていることも必要です。
そして、デベロッパー(開発業者)などが行う開発の場合は、次の4つの基準も、別途満たす必要があります。つまり、これらの基準は、事故が居住する住宅のための開発行為には適用されません。
2、市街化調整区域での開発行為の基準
- 道路、公園、広場などが適当に配置され、かつ、開発区域内の主要な道路が、開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計が定められていること
- 水道その他の給水施設が適当に配置されるように設計されていること
- 開発区域内に災害危険区域などの区域内の土地を含まないこと
- 開発を行うにたるだけの視力や信用があること
市街化調整区域における、建築物の建築または第1種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為は、一般的基準を満たし、かつ、次の34条の許可基準のどれかに該当する場合でなければ、都道府県知事は許可をしてはなりません。なお、第2種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為は、先の一般的基準のみで足ります。
34条の許可基準
・許可、不許可
- 主として開発区域の周辺地域に居住しているものの利用に供する精霊で定める公益上必要な建築物、またはこれらの者の日常生活に必要な物品の販売、加工、修理その他の業務を含む店舗、事業所などの建築のための開発行為であること
- 農林漁業用建築物、または市街化調整区域内で生産される農林水産物の処理、貯蔵、加工用の建築物などのための開発行為であること
- 知事が「開発審査会の議決」を経て、開発区域の周辺における市街化を促進する恐れがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難、または著しく不適当と認める開発行為であること
1、処分
都道府県知事は、開発許可の申請があったときは、遅滞なく、許可または不許可の処分をしなければなりません。そして、その旨は文書で通知します。
2、開発登録簿
開発許可の処分を行ったときは、開発登録簿に一定事項を登録しなければなりません。この開発登録簿は、都道府県知事が調整し、また、常に公衆の縦覧に供するように保管し、請求があったときは、その写しを請求者に交付しなければなりません。
3、用途地域が定められていない土地の区域内での制限との関係
市街化調整区域など、用途地域が定められていない区域の中で開発行為が行われる場合、都道府県知事は、建蔽率、建築物の高さ、壁面の位置その他建築物の敷地・構造・設備に関する制限を、許可にあたって定めることができます。なお、原則として、この制限に反する建築はできませんが、例外として知事の許可があれば、その制限は無視しても構いません。
・変更の許可等
開発許可の変更をする場合は、原則として、都道府県知事の許可を受ける必要があります。
例外として、政令で定める軽微な変更の場合は、許可不要です。例えば、工事の着手予定や完了予定の年月日などです。ただし、遅滞なく、都道府県知事にその旨の届け出をしなければなりません。
・工事の廃止
開発を廃止する場合に許可は不要ですが、遅滞なく、都道府県知事にその旨の届け出をしなければなりません。
・地位の継承
1、一般承継人
開発を相続して続ける場合は許可不要です。なお、デベロッパーである法人が合併した場合も同様です。
2、特定承継人
基本的には、許可は不要です。しかし、あらかじめ知事の承認を受けることが必要です。
・工事完了後の届け出
1、届け出
開発区域の全部の工事を完了したときは、都道府県知事に届け出る必要があります。
2、完了検査
都道府県知事は、工事完了の届け出を受けたときは、ちたいなく、開発許可の内容に適合しているかどうか、検査しなければなりません。そして、検査の結果、適合していると認めたときは、検査済証を開発許可を受けたものに交付しなければいかません。
・工事完了の公告
都道府県知事は、検査済証を交付したときは、遅滞なく、その工事が完了した旨の公告をしなければなりません。
・公共施設の管理、用地の帰属
開発に伴って道路などの公共施設を作る場合、その公共施設の管理やその用地の帰属は、次のようになります。
1、公共施設は、原則として、その施設がある市町村が管理することになります。
2、公共施設の用地は、原則として、公共施設の管理者に帰属します。従って、原則として市町村に帰属することになります。