takanori_takkenの日記

2020年宅建士合格を目指して勉強していくブログです。宅建士の勉強をする中で分かったことなどを主に書いていきます。

債権

債権譲渡とは

AさんがBさんに対する債権をCさんに売ってしまうと、そのさいけんはAさんからCさんに移転します。その結果CさんがBさんに対する新債権者になるという、新たな関係ができます。これを債権譲渡といい、Aさんを債権の譲渡人、Cさんを譲受人といいます。

債権譲渡自由の原則

債権は自分の財産である以上、自由に譲り渡すことができるのが原則です。そして、譲渡の時点ではまだ発生していない、将来発生する債権でも、譲渡することができますし、譲受人は発生した債権を当然に取得します。しかし、いくつかの例外があります。その中で重要なのは、当事者の合意によって譲渡できない異にする、譲渡を禁止し、制限する特約(「譲渡制限特約」) が付いている場合です。この譲渡制限特約がある場合でも、AさんがCさんに譲渡したとき、その債権譲渡は、その効力を妨げられません。つまり有効です。ただし、この特約についてCさんが悪意、または重大な過失があった場合、BさんはCさんに対してその債務の履行を拒むことができ、かつ、BさんはAさんに対して弁済等をすれば、そのことをCさんに対抗できます。

債務者への対抗要件

債務者に対して譲渡の事実を主張するためには、譲渡人Aさんからの通知か、債務者Bさんの承諾のどちらか1つ必要です。これは、将来発生する債権の譲渡の場合も同様です。この通知や承諾は口頭でOKです。承諾はAさんとCさんのどちらに対して行っても問題ありませんが、通知は譲渡人のAさん自身が行わなければいけません。

三者に対する対抗要件

これも、譲渡人からの通知または債務者の承諾があれば良いとされています。ただし第三者に対して主張するには、その通知または承諾は、確定日付のある証書(内容証明郵便など)によることが必要です。どちらも確定日付のある証書による通知を受けている場合は債務者に先に到達した方が優先されます。同時の場合はどちらも請求することができます。ただし、債務者はどちらか一方に支払えば、もう一方に支払う必要はなくなります。

債務者の抗弁等

・通知、承諾の効果

例えば、AさんがCさんに1000万円の債権を譲渡する前に、債務者のBさんがAさんに、300万円を弁済していたとすると、BさんはAさんからの通知を受ける、または、承諾するまでにAさんに対して主張できたことをCさんに対しても主張することができます。この場合だとAさんに対して300万円弁済したということを主張することができるのでBさんはCさんに対して残りの700万円を支払えば済みます。

・債権譲渡における債務者の相殺権

債務者のBさんは、対抗要件を具備した時より前に所得した譲渡人Aさんに対する債権による相殺を、譲受人Cさんに対抗することができます。

債権の消滅

債権の消滅する原因には、契約の取消し・解除・時効などの他に7つあります。

1、弁済

例えば、債務者のBさんが、債権者のAさんに、1000万円を支払うこと。その結果、AさんのBさんに対する債権は目的を達して消滅する。

2、代物弁済

弁済をすることができる者が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が他の給付をした時に、債権の消滅という効果が発生すること。

3、供託

例えば、弁済の提供をした場合において、債権者が弁済の受領を拒んだときや、債権者が弁済を受領できない時などに、弁済者が、債権者のために弁済の目的物を供託所に預けてしまって、その債務を免れること。

4、更改

債務の内容を別のものに切り替えること。

5、免除

債権者が無償で一方的に債権を消滅させること。

6、混同

例えば、債務者が債権者を相続した結果、債権と債務が同一人に帰属して債権が消滅すること。

7、相殺

例えば、AさんがBさんに対して1000万円の債権を持っていると同時に、逆にBさんがAさんに対して1000万円の債権を持っている場合に、お互いの1000万円同士で帳消しにすること。

弁済できる者

弁済は本来、債務者がする者ですが、債務者以外の第三者でも可能です。しかし、次の3つの場合のように第三者の弁済が認められない場合があります。

1、債務の性質が第三者の弁済を許さない場合(例 歌手のコンサート)

2、当事者間で「第三者には弁済させない」というような特約がある場合

3、弁済することにつき正当な利益を有しない第三者による弁済で一定の場合

3の一定の場合とは次の二つの場合のことです。一つ目は、債務者の意思に反する時(ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかった時は、弁済は有効)。二つ目は債権者の意思に反する時(ただし、その第三者が債務者の委託を受けてべんさいをする場合に、そのことを債権者が知っていたときは、弁済は有効)。なお、抵当権が設定されている不動産を買った第三取得者は、正当な利益を有する第三者といえます。他に、物情保証人や後順位抵当権者なども、正当な利益を有する第三者です。また、借地状に借地権者が建てた建物を借りている借家人も、家主が支払うべき敷地の地代の弁済については、正当な利益があるとされています。

弁済の相手方

債務者やその代理人等、法令の規定または当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者(受領権者)が弁済を受ければ、当然に債権は消滅しますが、債権者など以外のものに対して行った弁済であっても有効となる場合があります。それは、受領権者としての外観を有するものに対する弁済です。つまり、受領権者以外のものであって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対して弁済がなされたときは、弁済をした者が善意無過失であれば、その弁済は有効となります。

弁済の提供

弁済を完了させるために、債務者としてやるべきことをやった上で、債権者に対して「受け取ってください」とその協力を促すことを、弁済の提供といいます。弁済の提供をしさえすれば、債務者は自分がやるべきことをやっているので、債務を履行しないことによって生ずる責任を免れます。また、弁済を提供すれば、相手方の同時履行の抗弁権を奪うことができます。弁済の提供は、原則として債務の本旨に従って現実にしなければなりません。しかし、例外的に、債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合などは、高等の提供で構いません。なお、金銭債務の場合に、銀行の自己宛小切手等と異なって、自分振り出しの小切手を債権者の所に持参しても、支払いの確実性がありませんから、原則として現実の提供とはなりません。

弁済の充当

同じ債権者に対して、同時に複数の債務を負っている債務者が弁済をした際に、どの債務の弁済とするのかが弁済充当の問題です。弁済学が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、もちろん合意で充当することができ、合意があるときは合意充当が最優先になります。合意がない場合は、弁済者または弁済受領者が指定する指定充当になり、この当事者による指定がないときは、法律の定めに従った法定充当になります。なお、指定充当と法定充当の場合は、どちらも「費用→利息→元本」の順番で充当しなければいけません。

弁済による代位

保証人が債権者に弁済した場合、保証人は主たる債務者に対して求償することができます。このような保証人などの求償権を実行的なものにするために、弁済をした保証人が債権者にとって代わることを、弁済による代位といいます。債務者のために弁済をしたものは、債権者の承諾を要することなく、債権者に代位します。それにより、債権者が債務者に対して有していた債権や抵当権などを、保証人などが行使できるようになります。

自働債権と受働債権

相殺を持ちかけるほうが持っている債権を自働債権、持ちかけられるほうが持っている債権を受働債権といいます。

相殺適状(相殺の要件)

相殺をするにはいくつか必要な要件があります。

1、それぞれの債権が互いに対立していること

2それぞれの債権が有効に存在していること

ただし、時効が完成した再建であっても、時効完成前に相殺適状になっていれば相殺することができます。

3、それぞれの債権が同種の目的を有すること

例えば、どちらも金銭債務である場合などです。

4、それぞれの債権が弁済期にあるということ

ただし、自働債権さえ弁済期にあれば受働債権は弁済期が到来していなくても相殺可能です。

5、債権の性質が相殺を許すものであること

自働債権に抗弁権がついているときは、相殺ができません。相殺を許すと、「抗弁を主張できる」という相手方の利益を奪うことになるからです。

相殺が禁じられている場合

相殺適状にあっても、次の2つのように、法律で禁じられている場合や、当事者間に相殺禁止の特約があり、そのことにつき第三者が悪意または重過失の場合は、相殺できません。

1、受働債権が一定の不法行為等によって発生した債権である場合

例えば、悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、人の生命または身体の損害による損害賠償の債務の場合の時です。

2、自働債権が受働債権の差押後に取得された債権である場合

この場合は差し押さえの実効性を確保するために総裁が禁じられています。逆に自働債権が受働債権の差押前に取得された債権なら相殺できます。なお、差押後に取得した場合であっても、それが差押前の原因に基づいて生じた債権であるときは、原則として相殺できます。

相殺の方法と効力

相殺は、相手方に対する一方的な意思表示によって行われ、その効力は相殺適状になったときに遡って生じます。相殺には条件や期限をつけることはできません。

 

 

登記の仕組み

不動産登記法とは

不動産の対抗要件である登記について定めている法律のこと。現在の不動産登記法では、コンピュータ管理システムによる登記簿が導入され、オンラインによる登記申請が可能になっています。

登記の仕組み

・一不動産一登記記録の原則

登記は、登記官が「登記簿」という帳簿に登記事項を記録することによって行います。これを登記記録と言い、表示に関する登記や権利に関する登記について、一筆の土地または一個の建物ごとに作成されます。

・登記機関

不動産の所在地を管轄する法務局・地方法務局・支局・出張所が、管轄登記書として定められています。ある不動産が、複数の登記所の管轄区域にまたがる場合は、法務大臣または法務局長等が、管轄登記所を指定します。複数の登記所において登記をする必要はありません。

・登記記録の構成

登記記録は表題部と権利部という2つの部分で構成されます。表題部には、その物件、つまり土地や建物の物理的な概況が記録されています。何についての登記記録なのかを明らかにするもので、この表題部に行う登記のことを表示に関する登記といいます。なお、表示に関する登記のうち、その不動産について表題部に最初にされる登記を表題登記といいます。権利部は、甲区及び乙区に区分されます 。そして、甲区には所有権に関する事項を、乙区には抵当権や賃借権等の所有権以外の権利に関する事項を記録します。この甲区や乙区に記録された登記のことを、権利に関する登記といいます。表示に関する登記は、原則として対抗力が認められていませんが、権利に関する登記は、対抗力が認められています。

・順位番号と受付番号

権利部の登記には順位番号と受付番号という2つの番号があります。登記記録の甲区には、所有権に関する事柄が記録され、その記録がなされた順番に番号が振られます。これが、順位番号です。もう1つの受付番号ですが、これは甲区・乙区を問わず、その登記所で登記の申請を受け付けた順番に振られるものです。次に、登記記録の乙区にも、同様に順位番号・受付番号が記録されます。登記した権利の優劣は、原則として登記の前後によります。例えば、抵当権や地上権など、乙区内同士での権利関係の優先順位は順位番号を見れば分かります。順位番号は、それぞれの区ごとに記録が行われた順番で振られているので、その番号を見比べると分かります。このように、同区間の権利の優先関係は、順位番号の前後で決まります。一方、甲区に記録されている所有権と、乙区に記録されている抵当権の優劣などのように別区間での権利の優先順位を見るときは、その登記所での受付の順番を示している受付番号を見比べると分かります。

登記の公開

登記記録は、誰でも(利害関係人に限らない)、登記官に対して手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面(「登記記録事項証明書」といい全部の事項を証明するものや現在の効力を有する事項のみを証明するもの等があり『書面』で作成されます)の交付を請求することができます。また交付の一方法として、送付を請求することもできます。この交付請求は、オンラインによる請求も可能です。誰でも登記官に対して手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面(「登記事項要約書」)の交付を請求することもできます。手数料は原則として収入印紙で納付しますが、一定の場合は現金で納付することもできます。

登記手続の原則と例外

・申請主義の原則

不動産の登記については、「登記をしたいならば申請をしなさい」という、申請主義の原則が採られています。従って、この原則から所有権移転登記等の権利に関する登記は、当事者の申請、または官公庁の嘱託によって行われます。また、申請する義務はないということです。そして、これの反対としては、登記官という役人が職務として行う職権主義という者があります。他にも、登記を申請する義務がある場合もあります。これらが申請主義の例外であり、表示に関する登記がこの例外に該当します。なので、表示に関する登記は、登記官が職権で行うことができますし、申請義務もあります。土地が新たに生じた場合や、建物の新築や滅失の場合などには、所有権を取得した者等は、1ヶ月以内に、表示に関する登記の申請をしなければなりません。

・共同申請の原則

例えば、AさんからBさんが家を買いました。Bさんが登記をすれば、Aさんはもはや登記上では所有者ではありません。このように、登記をすることによって登記上不利益を受けるAさんのことを、登記義務者といいます。その一方でBさんは、自己名義に登記することによって、登記上自分のものと表示されるという利益を受けます。このBさんのことを、登記権利者といいます。そして、登記の申請をするときは、登記義務者のAさんと、登記権利者のBさんが、共同で申請をしなければならないという原則が、共同申請の原則です。これは嘘の登記が行われるのを防ぐための原則ですから、判決による登記などの嘘の登記が行われるおそれがないときや相続による権利の移転登記などのそもそも共同で申請することができない場合は単独で申請することができます。

申請情報及び添付情報等の提供

登記の申請にあたっては、不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名または名称、登記の目的などの情報(申請情報)と、その他の申請情報と併せて提供することが必要な情報(添付情報)を登記所に提供して行います。これから添付情報について見ていきます。

・登記原因証明情報

権利に関する登記を申請する場合には、申請人は原則として、その申請情報と併せて、登記原因証明情報(売買契約書などの登記の原因を証明するための情報のこと)を提供しなければなりません。権利の変動に関する登記原因について嘘の登記がされないようにするためです。なお、それが不要となる場合には、所有権保存登記などがあります。

・登記識別情報

1、登記識別情報の提供

登記権利者及び登記義務者が権利に関する登記の申請を共同して行う場合などには、申請人は原則として、その申請情報と併せて、登記義務者などの登記識別情報を提供しなければなりません。登記識別情報とは、簡単に言えば、登記名義人などしか知り得ない暗証番号のようなものです。ただし、申請人が登記識別情報を提供することができないことに正当な理由がある場合は、提供不要です。

2、登記官による事前通知制度等

登記官は、申請人が正当な理由があって登記識別情報の提供ができないときは、登記をする前に登記義務者に対し、「登記申請があった旨」と「申請の内容が真実であると考えるときは一定の期間内にその旨を申出をすべき旨」を通知しなければなりません(登記官による事前通知)。通知に対して「登記申請に問題がありません」と応える登記義務者の応答があれば、本人確認ができるからです。その他、司法書士などの資格者代理人を通じて本人確認をする等の制度も設けられています。

・その他の添付情報

代理人によって登記を申請するときは代理人の権限を証する情報、また、登記原因について第三者の許可・同意・承諾を要するときは許可等をしたことを証する情報の提供等が必要です。

登記の受付と完了

・登記の受付

登記官は、申請情報が登記所に提供された場合は、登記の申請を受理しなければなりません。

・登記の完了

登記が完了するとその旨を通知するために、登記完了証が交付されます。重ねて、申請人自らが登記名義人となる場合で、その登記が完了したときは、登記官はその申請人に対して、その登記に係る登記識別情報を通知します。ただし、申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合などは通知されません(「登記識別情報不通知制度」)。

登記の内容による分類

1、まずは、所有権保存登記があります。甲区に行う最初の登記のことです。原則として、表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人・所有権を有することが確定判決によって確認されたもの、収用によって所有権を取得した者が申請することができます。なお、マンションについては特例があります。

2、次に、移転登記があります。例えば、AさんからBさんが土地を買って、Bさんが所有権を取得した場合に行うのが、所有権の移転登記です。

3、変更登記とは、登記をした後、登記された内容と実態との間に不一致が生じた場合に、これを変更する登記です。

4、更生登記とは、登記されたとき、すでにその登記内容に錯誤や遺漏があった場合にこれを訂正する登記です。

5、抹消登記とは、登記の記載を抹消する登記です。なお、抹消を申請する場合、その抹消について登記上利害関係を有する第三者がいるときは、その者の承諾がなければ申請できません。

登記の形式による分類

登記の形式による分類としては、主登記と付記登記があります。主登記とは、独立した順位番号を有する登記のことです。付記登記とは、独立した順位番号がない登記で、主登記との同一性や順番を維持するために主登記に付記しておこなわれます。なお、付記登記には、登記名義人の名前や住所が変わった場合の登記名義人氏名等の変更の投機や、買戻し特約の登記などがあります。

仮登記

仮登記は、所有権取得の順位を確保するために行われます。仮登記のままでは、原則として対抗力を持たないため、後に本登記に改める必要がありますが、仮登記を本登記に改めたときの本登記は、仮登記をした日付の順位を維持することができます。例えば、AさんとBさんの間に売買の予約が9月1日に行われ、その日にBさんが仮登記を行い、10月1日に予約完結券を行使し本登記を行いました。一方で、第三者であるCさんが9月15日に売買契約を結び登記を行いました。この場合、Bさんは9月1日に仮登記を行っているため、本登記の日付も、9月1日となり、Bさんの方がCさんよりも優先されます。このようにBさんへの所有権の移転という物件変動がまだ生じていない段階で行うことができる仮登記を「2号仮登記」といいます。それに対して、登記識別情報を提供できないなど、物件変動は生じているけれども手続き上の条件が欠けている際に行う仮登記を「1号仮登記」といいます。仮登記の申請も、原則として共同申請です。例外的に、仮登記義務者の承諾がある場合や、仮登記を命ずる処分がある場合は単独で申請できます。なお、所有権に関する仮登記を本当きにする場合に、登記上利害関係を有する第三者がいるときは、その承諾が必要です。

土地の分筆・合筆の登記及び建物の分割・合併の登記

・土地の分筆の登記

分筆の登記とは、登記記録上、一筆の土地を分割して数筆の土地にすることです。この登記は申請主義の原則が取られており、申請できるのは表題部所有者または所有権の登記名義人に限られます(合筆、建物の分割・合併も同様)。しかし、一筆の土地の一部が地目を異にすることとなった場合、または地番区域を異にすることとなった場合は、申請がなくても、登記官は職権で分筆の登記をしなければなりません。また、登記官は申請がない場合であっても、地図を作成するために必要があると認めるときは、表題部所有者または所有権の登記名義人による異議がないときに限り、職権で、分筆の登記をすることができます。

・土地の合筆の登記

合筆の登記とは、登記記録上、数筆の土地を合併して一筆の土地にすることです。ここでは、合筆の登記が「できない」場合が重要です。

1、一筆の土地に、所有者が混在すると混乱が生じるので、所有者が異なる土地の合筆はできません。つまり、表題部所有者または所有権の登記名義人がそう後に異なる土地の合筆の登記はできません。

2、所有権の登記のない土地と所有権の登記のある土地の合筆はできません。

3、複数の土地の所有者が同一でも、それぞれに所有権以外のことなる権利に関する登記がある場合は、合筆の登記はできません。ただし、承役地についてする地役権の登記がある場合、合筆する両方の土地に登記原因・登記の日付・目的・受付番号が同一である抵当権・質権・先取特権の登記が設定されている場合、信託の登記であって信託の登記特有の登記事項が同一の場合は例外として、合筆の登記が可能です。

4、互いに接続していない土地同士の合筆や接続していても地番区域の異なる土地の合筆、地目の異なる土地の合筆はできません。

所有権の登記がある土地の合筆登記の申請の場合は、合筆前のいずれか一筆の土地の、所有権の登記名義人の登記識別情報のみの添付で足ります。

建物の分割・合併の登記

・建物の分割の登記

建物の分割の登記とは、例えば、A建物とその付属建物(物置など)が1つの登記記録の中で扱われている場合に、A建物についての登記記録と、物置を独立したB建物として扱い、そのB建物についてする登記記録の2つに分けることです。この建物の分割登記は、土地の分筆の登記と違って、登記官の職権では行われず、表題部所有者などの申請のみで行われます。

・建物の合併の登記

建物の合併の登記とは、例えば、独立したA建物とC建物がある場合に、C建物をA建物の付属建物として、「A建物」という1つの登記記録で扱うことです。土地の合筆の登記と同様に、例えば、所有者が異なる建物の場合、所有権の登記のない建物とある建物の場合などは、合併できません。なお、所有権の登記がある建物の合併登記の申請にあたって提供する登記識別情報は、いずれか一方の建物のものでOKということも、土地の合併の登記の場合と同様です。

 

二重譲渡などに備えて

物件変動の対抗要件

例えば、AさんがBさんに家を売った場合、この家の所有権は、AさんからBさんに移転します。このような所有権の移転などを物権変動といいます。物権変動は原則として契約などの意思表示をすることで効力が生じます。

対抗問題とは

例えば、AさんがBさんに家を売り、同じ家をCさんに売った場合(二重譲渡) 。この場合、家の所有権をめぐって、BさんとCさんが互いに「この家は自分のものだ」と主張し合うことになります。このように、互いに権利を主張し合う関係を、対抗問題といいます。不動産に関する物権変動は登記がないと第三者に対抗することができないので、先に登記を備えた者が優先権を主張することができます。つまり早い者勝ちです。例えば、先の例でBさんが先に登記を済ませていたら、CさんはBさんに対抗することができません。優先権を主張できることを、対抗力があるといいます。そして、対抗力を得るための手段を、対抗要件といいます。動産の場合は物の引き渡しですが、不動産に関しては登記が対抗要件です。そして、投機などによって、所有権などの所在を世の中の人に明らかにすることを、公示といいます。

三者の範囲

三者とは、当事者や相続人などの包括承継人以外の者というだけでなく、登記がかけていることを主張することについて、正当な利益を有する者とされています。具体的には、不動産の二重譲渡における第二の譲受人や、譲渡された不動産を借りている賃借人等です。もちろん、当事者やその相続人は第三者ではありません。

・全くの無権利者

本来の所有者であるAさんは無権利者のCさんに対しては、登記なしで自分のものであると主張できます。なぜなら、このCさんは何の権利も持っていないので、Aさんに登記がないことを主張し得る正当な利益がなく、第三者に当たらないからです。

不法行為者、不法占拠者

不法行為者・不法占拠者などに対しては登記がなくても「自分のものだから出て行け」と主張できますし、また「損害賠償金を支払え」と主張することもできます。

背信的悪意者

悪意者は第三者であるが人を困らせる目的の背信的悪意者は第三者ではないとしています。

・詐欺、強迫によって登記申請を妨げたもの

詐欺・強迫にあったものは登記なしで「自分の土地だ」と主張することができます。

・他人のために登記申請をする義務のある者

例えば、BさんがAさんから買った土地を登記したいと考え、司法書士のEさんに陶器の依頼をしたとします。しかし、Eさんはその土地が気に入ったのでAさんから同じ土地を買って登記を備えました。この場合、BさんはEに対しては登記なしで自分のものであると主張することができます。

登記が必要な物権変動

・解除と登記

例えば、Aさんが自己所有の土地をBさんに売却し、さらにBさんはその土地をCさんに転売した。しかし、Bさんが代金を支払わないのでAさんは債務不履行を理由に契約を解除した。この場合、契約の解除まえにBさんがCさんに転売していたら、Cさんが保護されるには登記が必要です。この場合、AさんとCさんは対抗問題とはなりません。ここでは物権変動の対抗力を主張するための登記ではなく、権利保護要件としての登記が必要とされています。これに対して、解除後にBさんとCさんが契約を結んだ場合、AさんとCさんの関係は、対抗問題であるとされています。この場合に権利がAさんとCさんに二重譲渡されたものと考えられるからです。どちらにも登記をする機会が与えられているので早い者勝ちで処理するのが公平とされます。

・取消と登記

先の例の解除が取り消しに変わっただけと考えれば簡単です。Aさんと取り消し前の第三者であるCさんとの関係については、対抗問題ではありません。取り消し後の第三者との関係では対抗問題となります。これも解除後の第三者と同様に二重譲渡と同じように扱われるので先に登記を備えた方が優先されます。

・時効と登記

取得時効によって所有権を取得した者が登場するケースについて考えます。取得時効とは、一定の要件を満たして、10年間か20年間、他人のものを使っていると、所有権などの権利を取得できる制度のことです。これも時効完成前に譲り受けた場合と時効完成後に譲り受けた場合の2つのケースが考えられます。時効完成前の第三者の場合は、当事者同士の関係と考えられ、対抗問題ではないとみなされます。よって、登記がなくても主張することができます。一方時効完成後の第三者の場合は、対抗問題とされています。これも先ほどまでと同様に、二重譲渡とかんがえられ、先に登記を備えた方が優先されます。

 

債権回収のための手段

担保物権の種類と性質

担保物権の種類

一定の場合に、法率によって成立するのが法定担保物権。それに対して当事者の軽役によって成立するのが約定担保物権です。

担保物権の性質

担保物権には共通の性質が4つあります。

1、付従性

債権を担保するために担保物権が設定されるのですから、債権があって初めて担保物権が成立し、債権が弁済などによってなくなれば消滅するという性質のことです。なお、抵当権登記の抹消は、弁済された後にすることができます。つまり、債務の弁済と抵当権登記の抹消は、同時履行の関係にありません。債務の弁済が先履行になります。

2、不可分性

債権の全額が弁済されるまで、その担保の目的物の全部について担保物権が存続するという性質のことです。

3、随伴性

債権が移転したらそれと一緒に担保物権も移転するという性質のことです。

4、物上代位性

例えば、Aさんは、Bさんに対して有する貸金債権1000万円の担保として、Bさん所有の家について、抵当権の設定を受けた。ところがこの家が火事で焼失してしまった。抵当権者のAさんは優先弁済を受けることはできないのだろうか?

抵当権の目的物である家が火事で滅失した場合、AさんはBさんの取得する火災保険金請求権や、第三者が放火した場合であれば、Bさんが取得する不法行為に基づく損害賠償請求権に対して、抵当権の効力を主張することができます。このように、抵当権者による債権回収を可能にするために、担保の対象が滅失した場合に発生する請求権に対して担保の効力が及ぶという性質のことを物上代位性と言います。物上代位の対象となる権利としては、目的物が売却された場合の売買代金請求権や、それが賃貸された場合の賃料請求権などもあります。そして、物上代位する為には、先のケースでいえば、保険金などがBさんに支払われるなどの前に差し押さえることが必要です。

担保物権対抗要件

留置権を除いて、第三者に対抗する為には登記が必要です。

抵当権

抵当権とは、債務者などが担保に供した不動産をその手元に残したまま、債務の弁済がない時は競売に出すなどして、抵当権者が、その競売代金などから他の債権者に優先して債権の回収を図ることができる担保物権のことです。抵当権は、現在成立している債権だけでなく、期限付債権など、現在は発生しておらず、将来発生する可能性がある債権のためにも設定することができます。

抵当権の設定

1、抵当権の目的物

民法上、抵当権の目的物となり得るものは、不動産、地上権、永小作権の3つです。

2、抵当権設定契約

抵当権の設定契約は諾成契約であり、抵当権者と抵当権設定者の合意によって行われます。

3、対抗要件としての登記

三者に対する抵当権の対抗要件は登記ですので、従って、同じ土地に複数の抵当権が設定された時の抵当権の順位も登記の順番によります。この抵当権の順位は、各抵当権者の合意で変更することができます。しかし、その際は利害関係者の承諾が必要であり、また、登記をしなければ効力を生じません。

抵当権の使用など

1、使用・収益

例えば、Bさんの建物について、Aさんのために抵当権が設定されても、抵当権実行までの間、この建物はBさんが使用することができます。また、Bさんはこの建物を人に貸して賃料を受け取るなどの収益を得ることもできます。

2、抵当不動産の処分

登記をしておけばその建物が売却されても抵当権を実行することができるので、抵当権設定者は抵当権者の承諾を得ることなく、抵当不動産を売却sることができます。

3、買主の代金支払拒絶権・費用償還請求権

Bさんの建物について、Aさんのために抵当権が設定され、その登記もされている場合に、BさんがCさんにその建物を売却したとすると、買主であるCさんは、売買契約を結んだ以上代金を支払うのは当然ですが、建物に設定された抵当権の登記が契約の内容に適合しないものであれば、抵当権消滅請求の手続きが終わるまでは、代金の支払いを拒絶することができます。この抵当権消滅請求とは、買主のCさんが抵当権者のAさんにお金を支払うことでAさんの抵当権を消滅させることができる制度です。これによってCさんは抵当権の実行により土地の所有権を失う恐れがなくなる。つまり、土地の所有権を保存したことになります。そこでCさんは、会受けた建物に契約ないように適合しない抵当権が存在している時は売主のBさんに対して、所有権保存のためにAさんに支払った金額相当分を、費用として償還請求することができます。

4、抵当権侵害

抵当権設定者のBさんは、自分が所有する建物であっても、抵当権が設定されている以上、建物を壊してしまうことなどは許されません。それにも関わらず、Bさんが破壊行為に及んだ場合、抵当権の侵害として、抵当権者Aさんは、破壊行為を差し止めることができます。さらに、もし、破壊行為によって抵当権者Aさんに損害が生じれば、不法行為が成立し、BさんはAさんに対して損害賠償金を支払わなければいけません。

抵当権の実行

1、抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲

抵当権者が抵当権の実行の際、競売に出すことができるのは次のものです。

・土地と建物

土地と建物はそれぞれ別個の不動産ですから、建物だけに抵当権が設定されている場合は土地にはその効力が及びません。つまり、建物しか競売には出せません。これは土地だけの時も同様です。

・付加一体物

例えば、増築部分や雨戸など、抵当不動産とそれに付加して一体となったものには、付加されたのが抵当権の設定の前後を問わず、原則として効力が及びます。

・従物、従たる権利

例えば、土地上に設定されている動かすことができる庭石や石灯籠など、付加一体打つほど強くくっついていないものを、その土地の従物と言います。抵当権設定当時に存在した従物については、当事者はそれも抵当権の対象であると考えているので、原則としてその効力が及びます。逆に、抵当権設定後の従物には効力が及びません。また、土地を借りてその土地の上に建物を建てていた場合に、建物に抵当権が設定されれば、抵当権設定当時にあった賃借権などの土地利用券に対しても、抵当権の効力が及びます。

・果実(天然果実法定果実

原則として果実には効力が及びません。しかし、抵当権はその担保する債権につき不履行があった時は、その後に生じた抵当不動産の果実に及びます。果実とはものから生じる利益のことで、りんごの気になっている実などの天然果実と、人に家を貸した結果、借りた人が払う賃料などの法定果実があります。なお、この法定果実については、物上代位によっても、抵当権の効力を及ぼすことができます。

2、被担保債権の範囲

抵当権によって担保される被担保債権の範囲は、原則として元本の他、利息その他の定期金や損害金などにつき最後の2年分に限られています。この規定の目的は、高順位の抵当権者や他の債権者を保護することですので、他に後順位抵当権者などの利害関係者がいないときには、2年分に限定されません。また、特別の登記をした場合は別です。

3、法定地上権

社会経済上の不利益を防止するために、建物に土地の利用権が成立すると規定することを法定地上権といいます。

法定地上権の成立要件

法廷条件が成立するためには次の3つが全て揃っていなければいけません。

1、抵当権設定当時、土地の上に建物が存在し、それぞれが同一の所有者であること。

2、土地と建物の一方または双方に抵当権が設定されていること。

同じ債権のために複数の物件に抵当権を設定することを、共同抵当と言います。

3、抵当権の実行によって土地と建物が別々の所有者になったこと。

法定地上権に関する判例

判例は成立要件のように、抵当権設定当時、土地の上に建物があり、それぞれ同一の所有者に属している限り、次の場合にも法定地上権の成立を認めています。

1、建物の所有権が未登記であっても、土地への抵当権設定当時、土地上に建物があって、それらが同一の所有者である場合

2、設定当時に同一所有者であれば、抵当権設定後に、土地と建物の所有者が別々になった場合

しかしその一方で判例は、次の場合には必ずしも成立要件を満たしているとはいえないこと、また抵当権者が不利益を被ることから、法定地上権の成立を認めていません。

1、抵当権設定当時、更地であり、その後建物が築造された場合

2、更地に1番抵当権が設定された後に、その土地上に建物が築造され、その土地上に他のもののために2番抵当権が設定された場合

・一括競売

民法では、抵当権者の利益を考えて、土地に抵当権を設定した当時は更地で、その後建物が建てられた場合は、抵当権者は便宜上、土地と建物を一括して競売にかけることができると規定しています。これを一括競売と言います。ただし、建物の競売代金から優先弁済を受けることはできず、土地の代かからだけ優先弁済を受けることができます。

・賃借権の保護

抵当権設定登記後の賃貸借は、その期間の長短を問わず、たとえ登記などの対抗要件を備えていても、原則として抵当権者や買受人に対抗できません。抵当権と賃貸借の関係は対抗問題であり、対抗要件の順番で見ると賃借権は、抵当権に劣後するからです。しかし、登記した賃貸借であり、賃貸借の登記前に登記した全ての抵当権者が同意をし、かつその同意の登記がある、この3つが揃った場合は、その同意をした抵当権者や競売による買受人に対抗することができる。また、建物賃借人にとって競売による買受人から直ちに追い出されるのは酷です。なので、抵当権者に対抗することができない賃貸借で、競売手続きの開始前から建物を使用・収益をするもの等(抵当建物使用者)は、原則としてその建物が競売に出された場合、買受人が買い受けた時から6ヶ月経過するまでは、その建物を買受人に引き渡さなくとも差し支えありません。これを建物明渡し猶予制度と言います。

・第三取得者の保護

元々抵当権が設定されているものを取得した人のことを、第三取得者と言います。この第三取得者の保護を図るために代価弁済と、抵当権消滅請求という2つの制度が設けられています。大花弁サイトは、会受けた第三取得者がその代金を、抵当権者の求めに応じて、支払うことです。これによって抵当権を消滅させることができます。抵当権消滅請求とは所有権を取得した第三取得者から、「抵当権を消滅させてほしい」と書面を送付して抵当権者に要求し、登記した全ての債権者の承諾を得た額を支払えば、抵当権を消滅させることができます。これは、抵当権の実行としての競売による差し押さえの効力発生前までは、行うことが可能です。なお、主たる債務者や保証人、その承継者は、本来全額を弁済すべき立場ですから、それに見たない額で抵当権を消滅させる機会を与えるべきではないため、抵当権消滅請求をすることはできません。

根抵当権

例えば、問屋と商店などの間では継続的に取引が行われ、債権・債務の発生・消滅が繰り返されるので、特定の債権を担保する普通の抵当権とは異なり、それらの当事者間において生ずる、一定の範囲に属する不特定の債権を予め定めた限度額までは担保するという、特殊な抵当権が認められています。これを根抵当権と言います。

・被担保債権

根抵当権の被担保債権は、一定の範囲に属する債権、つまり債務者との一定の種類の取引によって生じる債権などに限定されています。従って、債務者に対する全ての債権を担保するという「包括根抵当権」は認められません。また、被担保債権の範囲は、後順位抵当権者などの承諾なしで変更することができます。ただし、その変更は元本確定前に限られます。さらに、根抵当権は法律関係が複雑になるので元本確定前にここの被担保債権が譲渡されても、根抵当権は随伴しません。

・極度額

根抵当権は、当事者が定めた限度額、つまり極度額の限度ないで担保するために設定されています。そして、この限度額は、元本確定の前後を問わず、後順位抵当権者などの利害関係人の承諾があれば変更可能です。また、元本確定後なら、根抵当権設定者は、目的物の余っている担保価値を有効に使うために、極度額について減額請求をすることができます。

・元本の確定

担保される元本が一定のものに特定されることを元本の確定と言います。予め確定期日を定めることも、定めないこともできます。確定期日を定めない場合は、例えば根抵当権設定者は、根抵当権設定の時から3年経過すると、元本の確定を請求することができ、その請求から2週間後に、元本が確定することになります。

その他の担保物権

留置権

例えば、BさんがAさんに時計の修理を依頼する。その結果、AさんはBさんに対して修理代金という債権を取得します。これはものから生じた債権です。もし、Bさんが修理代金を支払わなければ、Aさんはこの時計の返還を拒むことができます。そうしてBさんに修理代金の支払いを間接的に強制することができます。これが留置権です。これは動産・不動産のどちらも対象になります。なお、留置権には抵当権のような優先弁済的効力はありません。他方、例えば泥棒が自分が盗んだものを修理に出すように、占有自体が不法行為によって始まった場合には、留置権は成立しません。また、同様の理由で賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された後、賃借人が建物を占有して修繕費などの必要費を支出した場合にも、留置権を行使して返還を拒否することはできません。

先取特権

例えば、家の修理を依頼された工務店のAさんが、注文者Bさんに対して、100万円の家の修理代金債権を取得した場合、もしBさんが支払わなければ、Aさんは、この家を競売に出して競売代金から100万円を回収することができます。これを先取特権と言います。つまり、抵当権と同じように優先弁済的効力があります。しかし、抵当権が契約を結んで設定する役上担保物権であるのに対し、先取特権は法律によって成立する法定物件である点が抵当権とは異なります。先取特権には、一般の先取特権、動産の先取特権、不動産の先取特権の3種類があります。先の例は不動産の先取特権の例です。他にも動産の先取特権の例としては、借家人が家賃を滞納した場合、その借りた家の中に持ち込んだ家具などの動産に対して、や主が先取特権を取得するというものがあります。なお、家主が敷金を受け取っているときは、敷金相当部分については敷金で担保されていますから、家主は、その敷金でべんさいを受けることができない残額の部分についてのみ、先取特権を有します。

・質権

留置的効力と優先弁済的効力を併せ持った権利のことを質権と言います。これは当事者の契約によって成立する約定担保物権です。なお、質権を設定する契約では、目的物を引き渡さなければなりません。つまり、要物契約です。動産を対象とする質権を動産質、不動産を対象とする質権を不動産質、権利を対象とする質権を権利質といいます。質権者は、質物が不動産以外の場合、質権設定者の承諾がないと目的物を使用・収益できませんが、不動産質の場合、質権者は原則として質権設定者の承諾なしで、質権の対象の不動産をその用法に従って使用・収益できます。ただし、その結果、不動産質権者は原則として管理費を自分で負担しなければならず、また利息を請求することができません。さらに、権利質の一種である、債権を目的とする債権質においては、質権者は質権の目的である債権を直接取り立てることができますが、質権の目的である債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、第三債務者(質入された債権の債務者のこと)に対して、その弁済すべき金額を供託するように請求することもできます。

連帯債務

1、連帯債務とは

債権者が債務者の1人に対して、または同時に、もしくは順次に、全員に対して債務の全額または一部を請求することができます。そして債務者の1人が弁済すれば、他の債務者の債務も、その分消滅します。

2、連帯債務の効力

・相対的効力(相対効)の原則

原則としてお互いに影響し合いません。例えば、1人が債務を承認しても、他の人が承認したことにはなりません。

・絶対的効力(絶対効)

例外として、1人に生じた事由は、他の人にも生じたことになる、絶対効があります。これが生じる事由は、弁済や相殺など一定のものです。また、それ以外の場合でも債権者と他の連帯債務者の1人が、別の意思表示(合意)をしたときは、絶対的効力とすることができます。絶対的事由には次のようなものがあります。

1、弁済・代物弁済・供託等

連帯債務者の1人が弁済して債務全部を消滅させると、他の連帯債務者も債務を免れます。

2、相殺

相殺とは簡単にいうと、帳消しにすることです。たとえばA・B・CさんがDさんに対して1200万円の連帯債務を負っている。一方AさんはDさんに対して1200万円を貸して貸金債権を有している。この場合、AさんがDさんに対して「帳消しをしよう」と言って、相殺することができます。そして、相殺をすれば弁済をしたのと同じ効果が生じるので、その分だけ全ての連帯債務者の債務が消滅します。また、例えばBさんがDさんから「1200万円支払って」と言われた場合、BさんはDさんに対して、AさんがDさんに対して有する債権のうち、Aさんの負担部分である3分の1、つまり400万円を限度に債務の履行を拒むことができます。

3、更改

更改とは、新しい債務を成立させることで旧債務を消滅させる契約のことです。連帯債務者の1人が、債権者との間でその連帯債務について更改契約を行うと、連帯債務は消滅し他の連帯債務者も債務を免れます。

4、混同

連帯債務者の1人が債権者を相続すると、一つの債権について債権者であると同時に債務者でもあることになります。こんな債権は無意味ですから消滅します。これを混同といいます。この場合、他の連帯債務者も連帯債務を免れます。ただし、相続者は他の連帯債務者に対して後で負担部分を求償することができます。

保証

・保証とは

確実に代金を回収するために保証人を立てること。まずは買主と保証人の間で保証委託契約が結ばれて、その後、あらためて売主と保証人との間で保証契約が締結されることになります。この保証契約は、書面かその内容を記録した電磁的記録で締結しなければその効力を生じません。そして、買主が売主に負っている債務を主たる債務、買主のことを主たる債務者と言います。また、保証契約の結果、保証人が売主に対して負う債務を保証債務、といいます。保証契約によって保証人になるので主たる債務者の委託がなくても、またその意思に反していても保証人になることができます。

・保証人の資格

誰でも保証人になれます。しかし、契約などによって、債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、資力があること、さらに行為能力者であることが必要です。ただし、債権者が保証人を指名した場合は、このような制限はなくなります。

・保証債務の範囲

保証人は、主たる債務の他、従たる性質の利息や損害賠償なども支払わなければいけません。しかし、保証債務は主たる債務より重くなることはありません。なお、契約解除による原状回復義務も、保証債務の範囲に含まれます。

・求償権

保証人が債務を弁済したときに、主たる債務者に対して請求できる権利のこと。

・保証債務の性質

保証債務の性質として、第一に、付従性があります。第二に、随伴性が挙げられます。第三に、補充性です。それぞれをもう少し具体的に見ていくと。

1、保証債務の付従性

まず主たる債務がなければ保証債務は成立せず、主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅します。主たる債務が減った場合は保証債務も減りますが、主たる債務が増えた場合に、保証債務も同時に増えることはありません。「根保証」の場合は同時に増えます。同時履行の抗弁権など主たる債務者が債権者に主張できることは保証人も主張することができます。主たる債務者が債権者に対して相殺権や取消権、解除権を有する場合は、これらの権利の行使によって債務を免れる限度において、保証人は債務の履行を拒むことができます。

2、保証債務の随伴性

債権者が他の人に債権を譲渡すると、新債権者は保証人に対しても請求することができます。

3、保証債務の補充性(催告の抗弁権、検索の抗弁権)

もし、突然保証人が債権者から直接支払いを請求された場合、主たる債務者が破産手続き開始の決定を受けた場合などを除いて、「まずは主たる債務者に請求してください」と支払いを拒むことができます。これを催告の抗弁権といいます。また、主たる債務者に弁済の資力があって執行が容易であることを証明すれば、債務者は保証人よりも先に主たる債務者から取り立てなければいけません。これを検索の抗弁権といいます。

4、保証人に生じた事由の効力

保証人が弁済をしたなどの、保証人に債務の消滅事由が生じた場合は、当然主たる債務も消滅しますが、それ以外の事由は影響しません。例えば、保証人に対する履行の請求などによる事項の完成猶予や更新は、主たる債務者に対しては、その効力を生じません。

・連帯保証

保証人が主たる債務者と連帯して保証義務を負担することです。連帯保証も保証ですから付従性と随伴性はあります。しかし、債権者にとって有利な保証とするために他の保証とは違う規定が次のように設けられています。

1、連帯して保証債務を負担しているので補充性がありません。

2、連帯保証人に生じた事由については、普通の保証とは異なり、弁済・相殺・更改等の債務の消滅事由以外に混同が連帯保証人に生じれば、主たる債務者にも、同様にそれが生じたことになります。

・共同保証

1つの主たる債務について複数の人が保証人となる場合を共同保証といいます。2人が普通の保証人である場合は、分別の利益があるのでそれぞれ半分ずつしか請求することができません。一方で、連帯保証人である場合は、分別の利益がないのでそれぞれに全額を請求することができます。

 

 

 

買った家が地震で壊れたり欠陥住宅だったら

危険負担

AさんとBさんとの間でAさんの家を3000万円でうる契約がなされた際、例えば、 雷が落ちたり地震が発生した結果、この家が焼失してしまった。何も当事者双方の責任なく家を引き渡せなくなったというケースです。この場合、買主のBさんは3000万円の支払いを拒むことができるのでしょうか?これが危険負担という問題です。

民法上、この危険は売主のAさんが負担することになります。つまり、当事者双方の責めに帰すことができない事由によって債務を履行することができなくなった時は、債権者である買主Bさんは、反対給付の履行を拒むことができます。しかし、AさんがBさんに家を引き渡した後に、雷などによって家が消滅した場合は、買主のBさんは契約を解除できず、また、その家の危険を負担することになり、代金3000万円の支払いを拒むことができません。

履行遅滞中の履行不能と帰責事由

次のような場合は、直接には当事者双方の責任によるものではない不能でも、先の例とは異なる扱いをされます。例えば、Aさんの家について、AさんとBさんとの間で売買契約が結ばれましたが、Aさんが引渡期日を過ぎたのに引き渡しをしないでいたところ、地震でその家が滅失してしまったような場合、その不能はAさんの責任によるものとみなされます。つまり、債務者がその債務について遅滞の責任を追っている間に当事者双方の責めに帰すことができない事由によってその債務の履行が不能となった時は、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされるのです。

もし買った家が欠陥住宅だったら

種類・品質に関する契約不適合

・買主の追完請求権

売主は不完全な履行をしたことになりますから、買主は売主に対して目的物の修補や代替物と引き渡し・不足分の引き渡しによる履行の追完を請求することができます。ただし、売主は、買主に不相当な負担を貸すものでない時は、買主の請求した方法とは違う方法によって履行の追完をすることができます。

・買主の代金減額請求権

追完の催告を行ったにもかかわらず、期間内に追完がない時は、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます。ただし、履行の追完が不能である時や売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に示した時、契約の性質が定期行為の時に売主が履行の追完をしないで、その時期を経過した時は催告をすることなく直ちに代金の減額を請求することができる。

・買主の損害賠償請求及び解除権の行使

買主は原則として、損害賠償の請求や解除権の行使を行うことができます。

・担保責任の期間の制限

買主が契約の不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しない時は、買主はその不適合を理由として、履行の追完の請求等をすることができません。ただし、売主が引き渡しの時にその不適合を知っているか、または重大な過失によって知らなかった時にはこの期間の制限を受けません。

数量に関する契約不適合

「坪単価10万円で100坪、従って、代金は計1000万円」と明示された売買によってAさんからBさんが土地を取得したが、実測したところ90坪しかなかった。この場合BさんはAさんに次のことを主張することができます。

1、買主の追完請求権

2、買主の代金減額請求権

3、買主の損害賠償及び解除権の行使

権利に関する契約不適合

Aさん所有のX地をBさんが買ったが、その土地に地上権や質権が設定されていた。また、Aさん所有の300㎡のX地について売買契約が成立していたが、その土地のうち100㎡がAさんのものでなかったため、Bさんはその100㎡については所有権を取得できなかった。この場合も数量に関する契約不適合と同様に次のことを主張できる。

1、買主の追完請求権

2、買主の代金減額請求権

3、買主の損害賠償及び解除権の行使

特約による担保責任の軽減

「もし欠陥が見つかったとしても、売主は買主に担保責任は負わない」という免責特約は、民法上、当事者が合意すれば有効です。ただし、このような特約があっても、売主が知っていながら買主に告げなかった事実や第三者に対し自ら設定し、または譲り渡した権利については、売主はその責任を免れることができません。

権利の全部が他人に属する場合

X地について、Aさんを売主、Bさんを買主とする売買契約が成立した。ところがX地の所有者は実はCさんだった。このような売買契約を他人物売買と言います。この契約は無効にはならず有効です。この場合、AさんはCさんからX地の所有権を取得してBさんに移転する義務を負います。しかし売主のAさんがその義務を果たさない時は、「債務不履行一般の規定」に従うことになります。つまりBさんは契約を解除できるし、損害賠償請求をすることができます。

BさんはAさんから1000万円を借り入れ、自己所有のX地にAさんのための抵当権を設定会した。その後、BさんがX地をCさんに売却したが、抵当権の実行によりCさんが土地の所有権を失ってしまった。Cさんはどんなことを主張できるだろうか?抵当権とは、この場合では、Bさんが借金を返さなければAさんは抵当権を時こうしてX地を競売にかけそこで売れた代金から優先的に債権を回収することができる仕組みです。Cさんが土地を失ったときは、Bさんは所有権移転義務を果たすことができなかったことになるので、この場合も「債務不履行一般の規定」に従うことになり、原則としてCさんはBさんに対して損害賠償請求権や解除権を行使することができます。

 

 

 

 

 

 

契約が守られないとき

同時履行の抗弁権

「例えば、AさんがBさんに家を売る」という売買契約などのように、双方が義務を負う双務契約においては、双方の義務は同時に果たさなければいけないという関係にあります。それが公平だからです。これを「同時履行」の関係といいます。その結果、たとえばAさんが、自分は家の引っ越しや登記の移転をしないでおいて「代金を支払え」とBさんに迫ってきたとき、Bさんは代金の支払いを拒むことができます。このように主張できる権利を、同時履行の抗弁権といいます。なお、Aさんが義務を果たさない場合の、それに代わる損害賠償の義務についても主張することができます。これらの関係は、例えば、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合の契約当事者双方の返還義務についても、認められています。

債務の不履行

先ほどのケースで、AさんやBさんが、それぞれの負っている義務を果たさないことを、債務不履行といいます。債務とは「義務」のことで、理工とは、その義務を果たすことです。したがって、債務不履行とは、契約などから生じた義務を果たさないことです。もし、Aさんが債務不履行に陥れば、その効果としてBさんからは原則として、損害賠償請求がされますし、また契約が解除されることもあります。なお、債務不履行による解除をするためには、帰省事由は不要です。

債務不履行の種類

債務不履行には3つの種類があります。一つ目は、履行遅滞です。これは、例えば、いつまでに引き渡すと契約したにもかかわらず、その引き渡しが遅れてしまうことを履行遅滞といいます。二つ目は、履行不能です。履行期に履行が不可能であるということをいいます。不能(不可能)かどうかは、契約などの債務の発生原因や取引上の社会通念に照らして判断します。履行遅滞の場合と同様に債権者は、原則として損害賠償を請求できます。また、契約を解除することもできますが、履行不能の場合は相当な期間を定めた催告は不要で、直ちに解除することができます。三つ目は、不完全履行です。これは履行はしたものの、それが不完全ということです。

損害賠償の範囲と予定等

債務不履行に対する損害賠償請求の目的は、それによって通常生ずべき損害の賠償をさせることです。相当性の判断にあたっては、通常の事情のほか、債務社が債務不履行の時に予見すべきであった特別の事情を基礎とします。債務不履行などに関して債権者に過失があったときは、契約の当事者からの主張がなくとも、裁判所は、職権でこれを考慮して、損害賠償の責任、及びその額を定めることができます。しかし、損害賠償を請求する時に、損害額の算定をめぐってトラブルになることがあるので、それに備えて損害賠償額の予定をしておくことができます。これによって、債権者は損害の発生とその額を証明しなくても予定した賠償額を請求できます。なお、違約金は損害賠償額の予定と推定されます。

金銭債務の特則

金銭債務の特則とは、例えば、買主の代金支払い義務など、お金を支払う義務のことです。金銭債務は、家の引き渡しなどの普通の義務とは異なり、特殊な扱いがされています。まず、効果の特則です。損害賠償として請求できる額は利息相当分とされています。支払いが遅れた場合、当然に利息分の損害が生じていると考えられます。損害賠償請求できる金額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によりますが、契約当事者が約定でこれより高い利率を決めているときは、それによります。次に、要件の特則です。損害の証明は不要です。また、金銭を支払う義務は、履行地帯しか認められません。さらに、債務者は、不可抗力を持って抗弁とすることができないとされています。つまり、過失がなくてもりこう遅滞の責任を負わなければならないのです。

契約の解除

契約の解除には、法定解除、約定解除、合意解除の3つのパターンがあります。法定解除とは、例えば「債務不履行があったときは解除できる」など、一定の要件を満たせば解除することができると、法律によって決められている場合のこと。約定解除とは、例えば、手付や買戻し、「ローン不成立の時は契約を解除できる」旨の特約など、当事者が契約(特約)によって解除権を設定する場合のこと。合意解除とは、例えば、AさんとBさんが結んだ契約を、双方合意の下、破棄する場合のことである。

解除の方法

・解除の意思表示

解除権を有するものは、相手方の承諾がなくても、解除することができます。また、一度解除の意思表示をしたら、撤回することはできません。さらに、当事者の一方が複数いる時には、解除は全員から、または、全員に対して行わなければいけません。これを、解除不可分の原則といいます。また、同じ考え方から、複数いる当事者の1人について解除券が消滅した場合は、他のものの解除権も消滅するとされています。

・催告解除と無催告解除

債務不履行の場合、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がない時は、相手方は、原則として契約の解除をすることができます。ただし、債務の全部の履行が不能なときや債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示した時、契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合に債務者が履行をしないでその時期を経過したときなどの場合は、債権者は催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます。

解除の効果

・当事者間での効果

例えば、AさんとBさんが家の売買契約を結んだが、Bさんが代金を支払わなかったので、Aさんは契約を解除しました。この場合2人の間では、最初から契約がなかったことになります。そこで、もしBさんが代金の一部を支払っていた場合、AさんはBさんから受け取っていたお金を返さなくてはいけません。これを原状回復と言います。つまり、契約を解除すると原状回復義務が発生し、これは同時履行の関係に立ちます。また、契約が解除されたとき、金銭を受け取っていたAさんは、受領の時からの利息をつけて返還しなければいけません。同様に、買った家の引き渡しを受けていたBさんは、その家だけでなく、その引き渡しを受けた時以後に生じた果実(家を他人に貸して受け取った賃料など)や使用利益も返還しなければなりません。なお、解除しても損害が発生していれば、損害賠償も請求できます。

・第三者に対する効果

例えば、BさんがAさんから買った土地をCさんに転売し、Cさんは引き渡しを受け、登記も済ませてた。その後AさんがBさんの代金不払いを理由に契約の解除をした時Cさんに対して返還の請求はできるのでしょうか?民法では、解除によって、解除前の第三者であるCさんの権利を害することはできないとされています。ただし、Cさんの権利が保護されるための要件として、Cさんは登記などの対抗要件を備えていなければなりません。また、Cさんが保護されるために、Cさんの善意・悪意は無関係です。(Bさんの債務不履行があってもAさんが必ず契約を解除するとは限らないから。)

・解除権の消滅

解除権を行使できる期間については、その定めがなく、解除権を有する側が解除しない時は、その相手方はから相当の期間を定めて「解除するか否か」を催告することができます。そして、その期間内に解除の通知を受けない時、解除権は消滅します。

手付

手付とは、売買契約等を結んだ時に、相手方に払うお金などのことです。

・手付の性質

手付には、交付する目的によって、証約手付、解約手付、違約手付の3つの種類があります。証約手付とは、契約が成立した証として払われる手付のことを言います。解約手付とは、その手付の交付によって、契約を解除できるようにするもののこと。つまり、約定解除権の設定を意味するものです。違約手付とは、「約束違反の場合には没収される」という了解のもとで交付される手付のことです。なお、当事者が「この手付はどういう意味か」ということを決めない時には、解約手付と推定されます。

解約手付による解除

・手付解除の方法

手付解除は、売主が解除する場合は倍返し、買主が解除する場合は手付を放棄することによって行われます。

・手付解除の時期

相手方が履行に着手するまでであれば、解除を行おうことができます。履行の着手とは契約から生じた義務を行うことです。自分が着手していたとしても相手方が着手していない限りは手付解除を行うことができます。

・手付解除の効果

手付によって解除しても損害賠償は請求できません。逆に損害賠償の請求もされません。また、債務不履行による損害賠償請求額は、解約手付の額とは基本的に無関係ですから、解約手付の額に制限されません。

 

 

 

宅建士 民法等 契約

今日は宅建士の民法等の契約の意味や成立要件などの基本について学びました。

まず契約とは、簡単に言えば「約束」のことです。

例えばAさんがBさんに対して、自分の土地を1,000万円で売るという契約を締結したとします。 これは、AさんがBさんと1,000万円と引き換えに自分の土地を渡すという約束をしたことを意味します。

契約の成立には「申込み」と「承諾」が「一致(合致)」する必要があります。

AさんがBさんに「この土地を売りましょう」と申込みをし、Bさんが「買いましょう」と承諾をすることで契約が成立する。反対に、Bさんが「申込み」とAさんの「承諾」の一致でも契約は成立する。

契約の成立には当事者の申込みと承諾の合致のみで十分なので契約書を作らない「口約束」でも契約は成立します。

契約にはいくつかの種類があります。

  • 当事者の合意だけで成立する諾成契約
  • 当事者の合意の他に物の引き渡しがないと成立しない要物契約
  • 対価等の支払いのない無償契約

契約は効果が無効になったり取り消しされたりすることがあります。

契約が無効となるものとしては公序良俗違反の契約があります。これは常識に反する、社会的な妥当性がない契約のことです。

契約の取り消しとは、一応有効だけれども「取り消します」ということで契約を無効にすることです。 この契約は取り消されない限りは、有効なままです。

契約の効力を発生させるためには、条件や期限などの要件があります。 その中でも特に重要なのが停止条件です。

 停止条件とは、契約などの効力の発生を、成否未定の不確実な事実にかからせる事をいいます。例えば、転勤が決まったら売買契約の効力を生じさせる契約のことで、ここでは転勤が決まるという停止条件が成就した時から契約としての効力が生じます。

条件付き契約の各当事者は、条件の成否未定の間は、条件の成就によってその契約かあら生じる相手型の利益を害してはなりません。害したものは、不法行為による損害賠償義務を負います。また、条件の成否未定の間における都自社の権利義務は、普通の権利と同様に処分・存続・保存し、そのために担保を供することができます。さらに、条件の成就によって不利益を受ける当事者が、故意に条件の成就を妨げた時、相手方は、その条件を成就したものとみなすことができます。逆に、不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができます。

未成年者など判断能力が不十分なものを保護するための仕組みである「制限行為能力者制度」というものがある。ここでの「能力」とは権利能力、意思能力、行為能力のことである。

  • 権利能力→権利や義務の主体となり得る資格のこと。誰でも持っている
  • 意思能力→自分の行為の結果を認識できる能力のこと。意思能力がない人の事を意思無能力という。例えば酔っぱらった人が結んだ契約は無効とされる。
  • 行為能力→自分一人で完全に有効な法律行為(契約など)をすることができる能力のこと。民法では、制限行為能力者を守る事を目的として、「制限行為能力者制度」という仕組みを設けている。

制限行為能力者には未成年者、成年被後見人被保佐人、被補助人という保護のされ方やその程度が異なる4つのタイプがあります。

未成年者制度

未成年者とは、20歳未満で未婚の人のことです。未成年者でも結婚をしている場合は成年者として扱われます。未成年者には親権者、もしくは未成年後見人という保護者がつけられます。未成年者自身が契約などを結ぶ場合は、原則として、保護者の同意を得なければなりません。また、保護者が未成年者の代わりに契約を結ぶこともできます。これを代理と言いますが、法律によって一定のものが代理人になる場合代理人法定代理人と呼ばれます。未成年者が保護者の同意を得ずに1人で契約をした場合、その契約は、原則として取り消すことができます。ただし、未成年者が単独で行っても契約を取り消すことができない場合があります。1、単に権利を得、または義務を免れる行為。2、法廷代理人が処分を許した財産の処分行為。3、許可された営業に関する行為。1は、ただ出物をもらうだけの場合。2は、お小遣いで何かを買うような場合。3は、親が判断して営業の許可を与えた場合で、このとき、未成年者はその営業に関しては成年者と同一の行為能力を有することになる。
未成年者の保護者は、同意権・代理権を持っています。そして、未成年者が1人で契約を行った場合に取り消すことができる取消権、取消権を放棄して完全に有効にすることができる追認権も認められています。しかし、追認は法定代理人等がする場合を除いて、取り消しの原因となった状況が消滅し、かつ、取消権がある事を知った後でなければその効力生じません。
未成年者が行った契約は未成年者である本人、法定代理人、成年者となった本人が取り消すことができます。

成年後見制度

成年後見制度には成年被後見人被保佐人、被補助人の3つのタイプがあります。

1、成年被後見人

成年被後見人とは精神上の障害によって理事を弁識する能力を欠く常況にある人で、家庭裁判所から「後見開始の審判」を受けた人のことを言います。例えば、重度の認知症で物事がよくわかっていないのが普通の状態の人やその配偶者が家庭裁判所に対して審判を求め、家庭裁判所の審判を受けた人のことです。成年被後見人自身が単独で契約の締結などの法律行為をすることは原則としてできません。もしその行為を行なっても取り消すことができます。さらに、判断能力が非常に乏しいので例え保護者が同意を与えた場合でも取り消すことができます。ただし、日用品など日常生活に関する行為は、取り消すことができません。成年被後見人は、判断能力が非常に乏しいため、民放は、成年後見人という保護者をつけています。成年後見人は法定代理人ですが、成年被後見人に代わって抵当権の設定などを行うには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。成年後見人には、代理権の他に取消権、追認権があります。なお、同意権はありません。

2、被保佐人

被保佐人とは、精神上の障害によって事理を弁識する能力が著しく不十分なもので、さらに、家庭裁判所による「保佐開始の審判」を受けたもののことです。被保佐人の保護者は保佐人と呼ばれます。被保佐人は、重要な財産上の行為については、保佐人の同意が必要です。同意を得なかったときは契約を取り消すことができます。また、同意が必要な行為で被保佐人の利害が害される恐れがないのに保佐人が同意をしないときは被保佐人の請求に基づいて、家庭裁判所が保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。保佐人には、重要な財産上の行為について、同意権・取消権・追認権があります。代理権は原則として与えられていませんが、特定の法律行為に関しては、当事者が望むなら、審判によって保佐人に代理権を与えることができます。

3、被補助人

被補助人とは、精神上の障害によって事理を弁識する能力が不十分であり、そして家庭裁判所による「補助開始の審判」を受けたもののことです。例えば、軽度の認知症で、1人では高額なものの取引をするのが不安な人が、補助して欲しいと望めば、審判によって補助してもらうことができるということです。被補助人の保護者は補助人と呼ばれます。被補助人の希望に沿ってどのように保護されるか選択することができます。不動産の売却などの特定の法律行為を定め、その行為について同意が必要として補助してもらったり、また、代理で契約をしてもらうという形であったり、同意と代理両方といった形で補助してもらうことも可能です。ただしどの場合でも家庭裁判所の審判は必要です。被補助人は常に補助人の同意が必要というわけではないので同意を補助してもらうという形をとっている場合は同意なしにその行為を行なった場合に取り消すことができます。

制限行為能力者の取引の相手方の保護及び法律関係安定のための制度

・相手方の催告権

催告とは、取引の相手方が制限行為能力者法定代理人に対して、「取り消すのか追認するのか、はっきりしろ」と 確答を促すことです。このとき相手方は、1ヶ月以上の期間を定めて、制限行為能力者側に確答する様に促します。この催告を受けたのに放置した場合は追認したとみなして良いのです。

・詐術を用いた場合

制限行為能力者が、書類を偽装したりして、行為能力者であると信じさせるための詐術を用い、相手方がそれを信じた場合は、制限行為能力者であることを理由にその行為を取り消すことができません。

・取消権の時間の制限

追認することができる時から(行為能力者になってから)5年、行為のあった時から20年のいずれか早い時が経過すると取り消すことができなくなります。

・法定追認

法定追認とは、追認をしたわけではないけれども、契約の完全有効を前提にした様な行為をしたときは、追認と同じ効果が生じるというものです。法定追認と認められるのは、追認することができる時から、異議を留めずに、次の様な行為をした場合です。1、債務の一部または全部の履行。2、相手方に履行を請求した場合。3、取得した権利の一部または全部の譲渡をした場合等。履行することは、「契約が完全に有効」であることを前提にした行動なので法定追認が認められます。

騙されて契約したら

・当事者間での効果

詐欺による意思表示は取り消すことができます。

・第三者に対する効果

詐欺による取り消しは、取り消し前の善意無過失の第三者には対抗できない。つまりAさんがBさんに騙されて家を売り、Bさんがその家を、事情を知らないCさんに転売した時、Aさんは取り消しをすることができない。

・第三者の詐欺

AさんがDという第三者に騙されて、家をEさんに売却する契約をした時、Eさんが第三者のDが詐欺を働いたという事実を知っている、または知ることができたときに限ってAさんはその契約を取り消すことができるとされています。しかし、Eさんが善意無過失の時は、取り消すことはできません。

強迫による意思表示

脅すことを強迫といいます。脅されて契約をした場合も、その意思表示を取り消すことができます。ただし、詐欺との違いが2点あります。

1、強迫によって意思表示をした時、その取り消しは、取り消し前の善意無過失の第三者にも対抗することができます。

2、第三者が脅迫をしたという場合、契約の相手方が善意無過失の場合でも、取り消すことができます。

このように、詐欺の場合と強迫の場合は違っています。強迫の場合は詐欺の場合とは異なって、強迫された本人には落ち度がないのが普通なので、強迫された者の保護が優先されます。

通謀虚偽表示

Aさんが債権者に家を差し押さえられないようにBさんと共謀して嘘の売買契約を結ぶことを通謀虚偽表示といいます。このような通謀虚偽表示は無効になります。

・第三者に対する効果

わざわざ嘘の表示をするようなものは責任が重いですから、民法では虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができないとしています。

心裡留保

当事者の一方が、わざと真意と異なる意思表示をすることを、心裡留保といいます。例えばAさんが本当は売るつもりはないけれど、Bさんに冗談で「家を売りますよ」と言った時、Bさんが冗談であることに気付いていなければ、民法は、原則として、この意思表示は有効であるとしています。しかし、Bさんが冗談であることを知っていた場合や注意していれば知ることができた場合は無効としています。

三者に対する効果は、善意の第三者に対しては無効を主張することができません。

錯誤

錯誤とは、言い違い、書き違いなどの勘違いのことです。

錯誤には次の2種類があります。ひとつ目は、意思表示に対応する意思を欠く錯誤(例えば、土地を1000万円で売るつもりだったのに、契約書面には100万円と書いてしまった。)のことで、表示錯誤と言われます。ふたつ目は、表意者が契約等の法律行為の基礎とした事情についての、その認識が事実に反する錯誤で、動機の錯誤と言われています。例えば、「今なら課税されない」と誤解して土地を売却するなど、意思表示の動機に錯誤があるに過ぎない時です。動機の錯誤の場合は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されている時に限り、することができます。なお、この表示は明示だけでなく、黙示の表示でも良いとされています。

民法では、錯誤による意思表示は、取り消すことができます。しかし、錯誤による取り消しを主張するためには次の2つの条件があります。

1、その錯誤が、契約などの法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること。

2、勘違いをした人に重大な過失がないこと。

三者の保護のために、錯誤による意思表示の取り消しは、善意無過失の第三者には対抗することができません。

 代理で契約を結んでもらった時

・代理とは

土地を売りたいAさんが不動産業者のBさんに売買を依頼し、依頼を受けたbさんが土地を買いたいCさんのところへ行き、BさんがAさんの代理人という形で契約を結んだ結果、契約の効果がAさんとCさんの間に生じ、契約の当事者になる仕組みのこと。

・代理の要件

Aさんに契約の効果が帰属するためにはいくつか条件があります。1、まず、Bさんは代理権を持っていなければいけません。2、BさんがCさんに対して、「Aさんのために契約を結びます」と示す賢明をした上での意思表示をする必要があります。

・代理の種類

代理には任意代理と法定代理があります。任意代理とは、例えばAさんが自分の意思でBさんに代理権を与えるという場合です。業者に依頼するような場合です。法定代理とは、法律が代理となる人に代理権を自動的に与えている場合です。未成年者の保護者などです。

・代理権の範囲

任意代理の場合は、本人から与えられた代理権によって、その権限の範囲が決まりますが、権限が決められていない代理人ができることは、保存行為、つまり、物や権利の性質を変えない範囲内での利用・改良行為に限られています。

代理人の行為能力

制限行為能力者が「任意代理人」として単独で契約を結んでも、取り消すことができません。ただし、制限行為能力者が、他の制限行為能力者法定代理人として行なった行為は取り消すことができます。

・代理権の消滅

代理人が代理権を与えられたあとに後見開始の審判を受ければ(成年被後見人になれば)、代理人権は消滅します。他にも代理人が死亡または破産手続きの開始が決定した時、本人の死亡または任意代理の場合のみ本人の破産手続きの開始が決定した時にも消滅します。

・自己契約

原則として、自己契約は許されておらず、自己契約を行ったときは無権代理行為とみなされ、効果が帰属しません。しかし、例外として、契約者に不利益が生じる可能性がないような場合、例えば自己契約をすることにあらかじめ許諾を与えられている場合や、決まった義務を果たすだけで、代理人に裁量の余地がない債務の履行の場合には、自己契約は可能です。

・双方代理

双方代理も原則としては認められず、双方代理をしたときは無権代理行為とみなされます。例外は、自己契約と同様です。

利益相反行為

自己契約や双方代理の他にも代理人にとっては利益になるが本人にとっては不利益となるような、代理人と本人との利益が相反する行為についても、原則として、無権代理行為とみなされます。しかし、本人があらかじめ許諾した行為については、例外的に、無権代理行為とはみなされません。

・代理行為

代理行為は顕名をした上で意思表示を行うことが必要です。顕名のないときは、原則として本人に効果は帰属せず、代理人が自分で自分自身のために契約をした物として扱われます。しかし、顕名がなくても相手方が代理人だということを知っていた場合、または知り得る状態にあった場合は、行為の効果は本人に帰属することになります。

・代理行為の瑕疵

代理人のBさんが強迫によって契約した場合、善意か悪意か等については、代理人のBさんを基準に考えることが原則ですが、取り消すことができるのは本人のAさんです。

・復代理

Aさんの代理人となったBさんがさらに自分の代理人としてCさんを雇い、そのCさんがDさんと契約を結ぶ。その結果、契約の効果が本人Aさんに帰属することを復代理と言い、Cさんのことを復代理人と言います。

・復代理人の選任

任意代理の場合は、原則として、復代理人を選ぶことはできません。しかし、本人の許諾がある場合や、緊急の事態などやむを得ない事情のある場合は選ぶことができます。法定代理の場合は、いつでも自由に復代理人を選任することができます。

・復代理人を選任した時の代理人の責任

代理人の引き起こした不始末については、本人と代理人との間の事務処理契約に関する債務不履行として、責任を負うことになります。全責任を負うのが原則ですが、やむを得ない事情で選んだ場合には軽くなり、選任監督責任で良いとされています。

無権代理

代理権のない無権代理人が代理行為を行うことを無権代理と言います。この契約の効果は原則として本人に帰属しませんが、本人が無権代理行為を追認すると契約に効果が生じます。無権代理には相手方を保護するために4つの手段が用意されています。

1、催告権

催告とは本人に相当な期間を決めて、「追認してください」と確答を促すという制度です。本人側が催告に対して何も返事をしない場合は追認を拒絶したものとみなされます。

2、取消権

相手方が善意、つまり、無権代理人だと知らなかった場合は、本人が追認するまでであれば、契約を取り消すことができます。

3、無権代理人への責任追及権

相手方は無権代理人に対して、損害賠償請求か利口の請求のどちらかを選択して請求することができます。ただし、無権代理人が自己の代理権を証明した時、または、本人の追認を得たときは、この責任を免れます。また、代理権がないことを相手方が知っていたとき、または、過失によって知らなかったとき、無権代理人が制限行為能力者のいずれかに該当すれば、無権代理人はこの責任を負いません。

4、表見代理

相手方が無権代理人に代理権があると主張することができる制度のことです。表見代理は相手方が善意無過失で本人に落ち度(帰責性)があった場合に限り適用されます。表見代理にはいくつか種類があります。代理権を与えるつもりがないのにもかかわらず、委任状を無権代理人に渡し、契約を結んだ場合は代理権授与の表示による表見代理と言います。代理人が抵当権設定の大利権しか与えられていないのに売買契約を結んだ場合は権限外の行為の表見代理代理人をクビになったのにもかかわらず代理人と称して契約を結んだ場合は代理権消滅後の表見代理と言います。