takanori_takkenの日記

2020年宅建士合格を目指して勉強していくブログです。宅建士の勉強をする中で分かったことなどを主に書いていきます。

取引時の注意

誇大広告の禁止

宅建業法の目的はお客さんの保護ですから、著しくオーバーな広告や事実と食い違うような広告は、誇大広告として禁止されています。媒体を問わず、すべての広告が規制を受けます。

・規制の対象となる広告の内容

大きく物件に関する事、周辺の環境等に関する事、お金に関することの3つに分ける事ができます。

1、物件に関する事

所在、規模、形質の3つがあります。 

2、環境等に関する事

利用の制限、環境、交通その他の利便があります。例えば、バス停が近くにないのにもかかわらず「ある」と表示することなどです。利用の制限については、私法上の制限も含まれます。また、現在だけでなく将来の環境等についても、誇大広告禁止の対象になります。

3、お金に関する事

代金などの対価の額、支払い方法、さらにその金銭の賃借の斡旋に関する事があります。

・禁止されている誇大広告のレベル

  1. 著しく事実に相違する表示
  2. 実際のものよりも著しく優良であると人を誤認させるような表示
  3. 実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示
事実と違うことを表示することに加えて、事実をあえて表示しないことで消極的に誤認をさせる場合も該当します。つまり、隠してはいけません。

実際にその広告を見たお客さんが、これを信じて契約を結び、実害が生じたかどうかは関係なく、行うだけでアウトです。

おとり広告、例えば世の中に存在しない物件、存在はするが売る事ができない、または売る意思のない物件などの広告をしておいて、それを見たお客さんが来たときに「もっといい物件がありますよ」と言って違う物件を紹介するようなことを指します。これも禁止されています。

以上の「誇大広告禁止」に違反すれば、監督処分や罰則を受けます。

取引様態の明示義務

宅建業者は、行う広告などに取引様態を明示しなければいけません。たとえば、「A業者が売主」と広告に記載することです。ここで注意することは、宅地物件取引業にいう取引様態の全てについて明示するべきことです。つまり、「自ら当事者」として売買・交換する場合、「媒介または代理」をして売買・交換・賃借する場合の全てです。(「自ら賃借」はもちろん含まれません)

この取引様態は、お客さんが「取引に関わるとき」に明示をする必要があります。つまり、広告をするときにはそのたびに、注文を受けたときには、遅滞なく明示しなければなりません。そして、広告に既に明示してあった場合でも、お客さんが注文してくれるときには、改めて明示しなければなりません。また、例えば数回に分けて分譲の広告をする場合、それぞれの広告においてきちんと明示する必要があります。

取引様態の明示は口頭でも可能です。

なお、この明示を怠ると、監督処分の対象にはなりますが、罰則はありません。

広告開始・契約締結の時期の制限

・広告開始、契約締結時期の制限

未完成の物件については、一定の許可や建築確認等の「処分」があった「後」でなければ、広告を開始できません。また、同様に、原則として、契約を結んではなりません。未完成物件に関する広告等の禁止は、次の場合にも当てはまります。

  1. 将来売り出す予定であることを示す予告広告
  2. 開発許可が下りる見込みで行う見込み広告
  3. 開発許可申請中、建築確認申請中という広告
・規制の対象となる取引

広告開始時期と契約締結時期の制限には、少し異なるところがあります。貸借の場合は、広告開始時期に関しては制限があるけれども、契約締結時期に関しては制限がないことです。なぜなら、売買ならば相当な取引額になるけれども、貸借の場合は金額が小さいので、お客さんの損害も少なくて済む。また、契約の場合は、相手方は普通少数ですが、広告の場合は、たくさんの人が見るため、その被害が大きくなるからです。

事務所等に関する一覧

1、事務所

2、国土交通省令で定める契約の締結または申込みを受ける場所

  • 継続的に業務を行う事ができる施設を有する場所で事務所以外のもの
  • 宅建業者が一団の団地・建物の分譲を案内所を設置して行う場合は、その案内所
  • 他の宅建業者が行う一団の宅地・建物の分譲の代理・媒介を案内所を設置して行う場合はその案内所
  • 事務に関する展示会、その他催しを実施する場所

3、国土交通省令で定める契約の締結または申込みを受けない場所

  • 上記2に該当する場所
  • 宅建業者が一団の宅地・建物の分譲をする場合における、その宅地・建物が所在する場所

 案内所等の届出

事務所等に関する一覧の2に該当する案内所等を設置する宅建業者は、免許権者等に対して一定の事項を届け出なければいけません。免許権者等が、その業者の仕事を把握して、指導や監督をするためです。 また、どこに、いつまでに、そして、何を届け出るのか、という3つがポイントです。

1、まず、届出先は、免許権者及び案内所の所在地を管轄する都道府県知事の両方です。免許権者が国土交通大臣の場合の届け出は、案内所の所在地を管轄する都道府県知事を「経由」して行います。

2、次に、届出の時期は、業務開始の10日前までです。

3、さらに、届出事項は、どこで(所在地)、どのような仕事を(業務内容)、どのくらいの間(業務期間)続けるのか、さらに、その場所に設置する専任の宅建士の氏名の4つです。

標識の設置義務

「事務所等」を設置する宅建業者は、事務所及び国土交通省令で定める、その業務を行う場所ごとに、講習の見やすい場所に標識を掲げなければなりません。つまり、前述の事務所等に関する一覧の全てに設置が必要です。

従業者証明書

宅建業者は、従業者に仕事をさせるにあたっては、従業者証明書を携帯させなければなりません。また、取引関係者に請求された場合、証明書を提示しなければいけません。提示は義務です。なお、従業者証明書に代えて、従業者名簿や宅建士証の提示では提示義務を満たしません。この「従業者」には、単に一時的に業務の補助をするものや非常勤の役員、さらには代表取締役などの代表者までも含まれます。

従業者名簿

宅建業者は、事務所ごとに、従業者証明書の発行台帳となる従業者名簿を設置しなければなりません。そして、お客さんから名簿の閲覧の請求があったときは、閲覧させなければなりません。その場合、データをパソコンのディスプレイ上に表示させることでも可能です。

従業者名簿には、氏名やその事務所の従業者となった年月日、その従業者が従業者でなくなった年月日などのほか、宅建士であるか否かの区別が記載されています。この「従業者」にも、一時的な業務補助者等が含まれます。そして、従業者名簿は最終の記載をした時から10年間、保存しなければなりません。

帳簿

帳簿とは、取引を記録する台帳のことです。宅建業者は事務所ごとに帳簿を備え、取引のあった都度、取引の年月日、宅地建物の所在及び面積、取引形態の別、取引の相手方の氏名・住所、取引金額及び報酬額などについて記載しなければなりません。なお、住宅瑕疵担保履行法との関係で、宅建業者が自ら売主となる新築住宅に係るものの帳簿の記載事項には、当該新築住宅の引き渡しの年月日や床面積などに関する事項が追加されています。

帳簿は、従業者名簿とは異なり、閲覧させる義務はありません。

帳簿は、各事業年度末に閉鎖し、その保存期間は、閉鎖した時から5年間(宅建業者が自ら売主となる新築住宅に係る帳簿の保存期間は10年間)です。

業務における諸規定

宅建業者の業務処理の原則等

宅建業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければなりません。加えて、その従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければなりません。

・不当な履行遅延の禁止

宅建業者は、その業務に関して行うべき登記・物件の引き渡し・取引に係る対価の支払いを、不当に遅延してはなりません。

守秘義務

正当な理由なく、業務上知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。これは、宅建業者宅建業を廃業した後や従業員が辞めた後であっても同様です。

・重要な事実の告知義務

宅建業者は、お客さんに対して、契約の締結について勧誘をするに際し、またはその契約の申し込みの撤回や解除、もしくは取引により生じた債権の行使を妨げるため、次の事項については、故意に事実を告げなかったり、または、不実のことを告げてはなりません。

  1. 重要事項の説明
  2. 供託所等に関する説明事項
  3. 契約書面の記載事項
  4. 1〜3のほか、宅地・建物の所在、規模、形質、現在もしくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額、その支払い方法、その他の取引条件または当該宅地業者や取引関係者の視力・信用に関する事項であって、宅地業者の相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

そして、これらの告知義務のある事項は、従業員の誰かが告げればたり、宅建士が告げる必要はありません。

・手付貸与等による契約締結誘引の禁止

宅建業者は、手付について貸し付けその他信用の供与をすることによって契約締結の誘引をしてはなりません。これには、数回に分けて手付けを受領することや、手付の支払いを猶予すること、約束手形で受け取ることなども含まれます。代金の引き下げや、手付の減額・手付金借入の斡旋は含まれません。これは、誘引する行為自体が禁止されており、契約に至ったかどうかは関係ありません。

・その他の禁止事項

勧誘するにあたって、利益を生ずることが確実であると誤解させるような断定的判断や、取引物件に関する将来の環境・交通等の利便について誤解を生じさせるような断定的判断等を提供してはなりません。過失でも、契約に至らなくても、ダメです。

宅建業者の相手方等が契約の申し込みの撤回を行うに際し、すでに受領した預かり金を変換することを拒んではなりません。

相手方が、解約手付による解除をする場合に、正当な理由なく、解除を拒み、または妨げる行為をしてはなりません。

その他、契約締結の勧誘に際して、次のようなことも禁止されています。

  1. 勧誘に先立ち宅建業者の商号または名称・勧誘を行うものの氏名・契約締結の勧誘目的であることを告げずに勧誘すること
  2. お客さんが契約締結拒否の意思を表示しているのに、勧誘を継続すること
  3. 迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をすること、深夜の勧誘等私生活等の平穏を害するような方法により困惑させること

 ・宅建業の業務に関する行為の取り消しの制限

個人の宅建業者宅建業の業務に関し行った行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができません。

供託所等に関する説明

宅建業者は、契約締結まえに、保証協会の社員の場合は、その教会の名前や住所、事務所の所在地、供託所とその所在地、営業保証金を供託している場合は、、供託所と所在地などの情報を、お客さんに知らせなければなりません。なお、補償金の額等については不要です。

まず、「いつまでに」ですが、契約が成立するまでの間です。

「誰に」説明するかですが、取引の相手方等です。相手方が宅建業者であるときは説明は不要です。

従業員を使って、この説明をさせても大丈夫です。

この供託所等に関する説明は口頭でも大丈夫です。

 

営業保証金

営業保証金とは

宅建業者として仕事を始める前に、まずは供託所にお金を預けておくという仕組みが設けられています。これが、営業保証金です。これによって、お客さんは、業者から支払ってもらえない時でも、ここからお金を払ってもらう事ができます。

営業保証金制度の仕組みは、宅建業者が供託所にお金などを預ける事である供託、 お客さんが供託所からお金をもらう事である還付、業者が供託所からお金を返してもらう事である取戻しの3つに大きく分ける事ができます。

営業保証金の供託と営業の開始時期

・営業保証金の供託

営業保証金の供託は、宅建業者が、供託所に対して行い、その金額は主たる事務所は1000万円、従たる事務所は1カ所に付き500万円の合計額と定められています。供託は現金(金銭)または一定の有価証券でも可能です。有価証券は株券、手形、小切手などの信用力が不安定なものは認められません。そして、その信用力によって評価が違ってきます。国際は80%の評価、地方債や政府保証債は90%、その他の有価証券は80%の評価です。なお、満期となった国債を地方債に替えるなど、すでに供託している営業保証金を他のものと差し替えることを、営業保証金の変換といいます。供託する場所は、主たる事務所の最寄りの教卓序で、支店分も合わせて全額一括で供託します。

・免許取得から営業開始までの流れ

宅建業者は、まず免許を取得し、お客さんの安全のために保証金を供託し、供託書の写しを添えて、供託した旨を自分が免許を受けた免許権者に届出をした後でないと、業務を開始してはなりません。

もし供託した旨の届け出をいつまでもしない場合は、まず免許権者は、免許をした後、3ヶ月経っても供託した旨の届け出がない場合、その届け出をするように催告します。次に、その催告が到達してから1ヶ月経っても業者が供託した旨の届け出をしない場合は、免許権者は免許を取り消す事ができます。

・事務所を増設する場合

事業の開始後に、事業拡大で事務所(支店)を増設するという場合は、営業保証金が従来のままでは不十分なので、事務所増設の時は、あらかじめその事務所の分の営業保証金を本店の最寄りの供託所に供託しなければならず、また、免許権者に供託した旨の届け出をした後でなければ、その事務所は業務を開始できません。

・保管替えなど

主たる事務所が引っ越しなどで移転した場合は、供託所を、移転後の本店の最寄りのところに替える必要があります。その方法には、2つのタイプがあります。

1、まず、保証金を金銭のみで供託している場合は、保管替えの請求を行います。これは、遅滞なく費用を予納して、A市にある現在のA供託所に対して「B市の供託所に供託先を替えてください」と請求する事です。

2、それに対して、有価証券だけ、または、金銭と有価証券の両方で供託をしている場合は、保管替え請求ではなく、まず先に、移転先のB市の供託所に現実に供託をしなければなりません。この時は、二重供託の状態になるので、後でA市の供託所から保証金を取り戻します。

営業保証金の還付

供託しているお金がお客さんのために使われることを還付といいます。

・還付を受ける事ができるもの

宅建業者宅建業に関し取引をしたもので、その取引により生じた債権を有するものが還付を受ける事ができます。

・還付金額

還付を受ける事ができる金額は、本店・支店どこで取引をしても、その業者が供託している営業保証金の範囲内です。

・不足額の供託

お客さんが還付を受け取り、営業保証金に不足が生じた場合には、「不足額を供託しなさい」という免許権者から通知書の送付を受けた日から2週間以内にしなければなりません。さらに、供託をしてから2週間以内に、供託書の写しを添えて免許権者に届け出なければいけません。これらを怠ると、業務停止処分または免許取消処分を受けます。

営業保証金の取り戻し

・取り戻しが出来る事由

取り戻しには、その事由によって、全部を取り戻すことが出来る場合と、一部を取り戻す事ができる場合の2つに分かれます。

1、全部を取り戻す事ができるのは、次のような場合です。

  1. 免許の更新をしなかったり、免許取消処分を受けたなど、宅建業者としての仕事ができなくなったとき
  2. 有価証券を含んで営業保証金を供託している宅建業者が、主たる事務所移転のため移転先の供託所に営業保証金を供託し直したとき
  3. 保証協会の社員となり、弁済業務保証金制度を利用することになったとき
2、一部を取り戻す事ができるのは、事務所を一部廃止したために、供託している金額が政令で定める金額より多くなった場合

・取り戻しの手続き

取り戻しの際、宅建業者は6ヶ月以上の期間を決めて、取引による債権を持っているお客さんに対して「権利を早く申し出てください」という旨の公告をする事が必要です。その後、遅滞なく、公告した旨を免許権者に届け出なければなりません。そして、その期間経過後に保証金を取り戻す事ができます。

例外として公告不要で、直ちに取り戻す事ができる場合があります。まず、二重供託状態になっているときです。次は、保証協会の社員となったことにより、営業保証金の供託が不要となったときです。最後に、取り戻し自由が発生してから、10年が経過したときです。

宅地建物取引業保証協会

・弁済業務保証金とは

営業保証金と同様の制度で、保証協会が間に入っている店が営業保証金との違いです。まず、宅建業者弁済業務保証金制度を利用しようとする場合は、弁済業務保証金分担金を納めて、保証協会の会員になる必要があります。お客さんが還付を受ける場合は、保証協会による認証の必要があり、認証を受けた金額を供託所に請求して還付を受けます。

・保証協会の業務

保証協会とは、国土交通大臣の指名を受けた一般社団法人であり、宅建業者のみを社員とする団体です。保証協会の業務には、必要的業務と任意的業務の2つがあります。

1、必要的業務には、苦情の解決、宅建業に関する研修、弁済業務があります。

2、任意的業務には、国土交通大臣の承認を受けて保証協会が行うことにできる業務のことで、一般保証業務、手付金等保管業務、宅建業者団体に対する研修費用の助成、宅建業の健全な発展を図るために必要な業務の4つがあります。

保証協会への加入

社員・保証協会・供託所の仕組み

宅建業者は、保証協会に加入した場合は、弁済業務保証金のシステムを使うことになります。加入は任意ですが、重ねて2つの保証協会に入ることはできません。

・加入の手続き

宅建業者が新たに保証協会に加入した時は、保証協会は、直ちにその旨を業者の免許権者に報告しなければいけません。また、保証協会は、社員が社員となる前に取引したものが有する債権に関する弁済によって自己の弁済業務の円滑な運営に支障を生ずる恐れがあると認める時は、その社員に対し、担保の提供を求める事ができます。

1、弁済業務保証金分担金の納付

宅建業者は、保証協会に加入するまでに、分担金を納めなければなりません。その額は、本店が60万円、支店は1カ所につにつき30万円です。分担金の納付は金銭のみです。

2、弁済業務保証金の供託

保証協会は、宅建業者から分担金の納付を受けた時は、その日から1週間以内に、納付相当額分の弁済業務保証金を供託しなければなりません。弁済業務補償金は、分担金と異なって、有価証券でも可能です。

そして、保証協会が弁済業務保証金を供託した場合には、納付した宅建業者の免許犬舎に対して届け出なければなりません。

・事務所を増設した場合

宅建業者は、増設した日から2週間以内に、増設にかかる額の分担金を保証協会に納めなければなりません。営業保証金と違って、事務所を増設した後、つまり事後納付です。

・社員たる地位を失った場合

分担金を納めない場合には、社員たる地位を失います。地位を失った後も宅建業者として仕事がしたいなら地位を失った日から1週間以内に、営業保証金を供託しなければなりません。

保証協会による弁済業務

・弁済業務保証金の還付

還付を受ける事ができる債権者は、営業保証金と同じです。さらに、社員が社員となる前に取引したものもこの中に含まれます。

還付の限度額は、その業者が営業保証金制度を利用していた場合に、還付を受ける事ができる額に相当する額の範囲内です。

・還付から還付充当金納付までの手続き

まずお客さんは保証協会の承認を受けてから、供託所に還付を請求します。そして、供託序は還付を行った場合、国土交通大臣に対してその旨を提出します。保証協会は、国土交通大臣から通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません。

次に、保証協会は宅建業者に通知をし、宅建業者は、保証協会から通知を受けた日から2週間以内に、還付の結果不足が生じた分の穴埋めに充当するため、還付充当金を保証協会に納付しなければなりません。これを期間内に納付しないと社員の地位を失います。

なお、業者が倒産するなどした場合、還付充当金の納付がされない恐れがあるので、それに備えて保証協会は、弁済業務保証金から生じる利息などを積み立てておきます。これを、弁済業務保証金準備金と言います。また、万一不足分が生じた時は、全社員に対して、特別弁済業務保証金分担金を納付すべき旨の通知をすることになります。そして、社員は通知を受けた日から1ヶ月以内に納付しないと、社員としての地位を失います。

弁済業務保証金の取り戻し等

社員である宅建業者に一定の事由が生じた場合、保証協会は、その社員が納付した分担金の額に相当する金額を供託所から取り戻す事ができます。そして、その後、業者が保証協会から、その取り戻し額に相当する分担金の返還を受けることになります。

・取り戻しができる事由

その業者が全額を取り戻す事ができるのは、保証協会の社員でなくなった時です。

一部を取り戻す事ができるのは、支店の廃止によって納付すべき金額が実際の分担金より少なくなった時です。

・取り戻し、返還の手続き

保証協会は、原則として、6ヶ月以上の期間を定めて、債権者に対する保証協会の認証を受けるため申し出るべき旨を公告し、その期間経過後でなければ社員に返還できません。しかし、事務所の一部廃止の場合には、公告をしなくても、直ちに社員に返還できます。

 

宅建士とは

宅地建物取引士になるには

宅地建物取引士(宅建士)とは、都道府県知事が行う宅地建物取引士資格試験に合格し、受験地の都道府県知事の登録を受け、さらにその知事から宅建士証の交付を受けた者をいいます。

宅地建物取引士資格試験は、一度合格すれば取り消されない限り、その合格は一生有効です。なお、不正受験者には、合格の取り消しや、3年以内の再受験禁止などのペナルティが課される事があります。また、受験地の都道府県知事への登録も、一度登録すると登録の消除(抹消)がされない限り、一生有効です。

宅建士の法定業等

  1. 重要事項の説明をする事
  2. 重要事項の説明書(35条書面)に記名押印する事
  3. 契約書(37条書面)に記名押印する事 
この3つの法定業務のことを事務といいます。

宅建市の登録の欠格要件

宅地建物取引業に関し2年以上の実務経験を有する者、または国土交通大臣がその実務経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めた者は、欠格要件に該当しなければ、登録を受ける事ができます。

基本的には、免許の欠格要件と同じだが次のようにいくつか違うものもある。

1、宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年

2、一定の事由により登録の削除処分を受け、その処分の日から5年を経過していないもの

3、2の事由により、登録の削除処分の聴聞の期日及びその場所が公示された後、相当の理由なく、自ら登録の消除を申請したもので、その登録が消除された日から5年を経過していないもの

4、事務の禁止処分を受け、その禁止の期間中に本人からの申請により登録が消除され、事務の禁止期間がまだ満了していないもの

登録の申請と内容

・登録の申請

登録をしようとするものは、申請書を受験地の都道府県知事に提出します。そして都道府県知事は、登録した時は、遅滞なくその旨を申請者に通知します。

・登録簿の記載事項の内容と変更の登録申請

登録されている事項について変更があった時には、登録しているものは、登録を受けている知事に、遅滞なく変更の登録を申請しなければなりません。

届出義務と登録の消除

宅建市の死亡等の届け出

届け出先は全て、登録を受けている都道府県知事です。

基本的には宅建業者の時と同じだが、破産手続き開始の決定を受けた時は、破産管財人ではなく本人が届け出る必要があります。

・登録の消除

本人からの登録の障子の申請があった場合、死亡等の届け出がなされた場合、届出はないものの死亡した事実が判明した場合、試験の合格が取り消された場合、監督処分としての消除があります。

登録の移転

登録先を変えることを、登録の移転といいます。

・登録の移転事由

登録をしている都道府県知事が管轄する都道府県以外に所在する宅建業者の事務所の業務に従事しようとするときやすでに従事しているときです。この登録の移転は任意です。

・登録の移転の手続き

現に登録をしている都道府県知事を経由して行います。

宅建士証の有効期間と講習

宅建士証

宅建士証の有効期間は5年です。申請によって更新する事ができます。お客さんからの請求時や重要事項の説明の際は宅建士証の提示が義務付けれています。

・講習の受講

1、交付時における講習受講の義務

宅建士証の交付を受ける時には、原則として、都道府県知事指定の講習を受ける必要があります。この講習は、交付の申請前6ヶ月以内に行われるものでなければなりません。

2、講習受講の免除

試験合格後1年以内に宅建士証の交付を受けようとする場合や、宅建士証が交付された後に、登録の移転とともに、移転先の都道府県知事から宅建士証の交付を受ける場合は例外的に講習が不要となります。

宅建士証の書換え・再交付・返納・提出

・書換え交付の申請、再交付の申請

宅建士の氏名や住所に変更が生じた場合は、書き換えを行う必要があり、これを書換え交付の申請といいます。つまり、この場合は、「変更の登録の申請」と合わせて「宅建士証の書換え交付の申請」をしなければなりません。また、宅建士証を失くしてしまった場合や汚損・破損の場合は、宅建士証の再交付申請が必要です。なお、その後失くした宅建士証を発見した場合は、発見した方の宅建士証を返納します。

・返納、提出

1、宅建士証の返納

登録が削除された時と、宅建士証が失効した時は返納が必要です。返納先は、その交付を受けた都道府県知事です。

2、宅建士証の提出

事務の禁止処分を受けた時は、その間、宅建士の仕事をしないように、速やかに宅建士証を提出しなければなりません。提出先は交付を受けた都道府県知事です。また、事務の禁止期間が終了し、提出者から返還の請求があれば、直ちに返還されます。

宅建士の設置義務

宅建業者は、事務所やその他国土交通省令で定める場所ごとに、成年者である専任の宅建士をおかなければなりません。設置すべき法定数は、事務所には宅建業者の業務に従事する者5人に1人以上、国土交通省令で定める場所には、1人以上必要です。なお、専任の宅建士に不足が生じた場合は、2週間以内に補充等をしなければなりません。

・成年者

宅建士が未成年者であっても、「宅建業者本人である場合」、または「法人の役員である場合」は、そのものが自ら主として業務に従事する事務所については「成年者である専任の宅建士」として扱われます。

・専任とは

常時勤務するものを意味します。専任ではない宅建士のことを、一般の宅建士といいます。ただし、業務の内容は、専任も一般も同じです。

・業務に従事するもの

営業職のみでなく、総務などの一般管理部門の仕事をしているものや、補助的な事務等をするものも含みます。

国土交通省令で定める場所

次の1〜4に該当し、かつ契約を締結、または、申し込みを受ける場所のことです。

  1. 継続的に業務を行う事ができる施設を有する場所で事務所以外のもの(例、出張所など)
  2. 一団の宅地建物の分譲を行う場所の案内所(自社物件を扱う案内所)
  3. 他の宅建業者の一団の宅地建物の分譲の代理や媒介をする場合の案内所(他社の物件を扱う案内所)
  4. 展示会場・催し会場
これらの場所で契約の締結や申し込みを受けたりする場合には、宅建士による重要事項の説明などが行われることになります。

 

宅建業法

宅地建物取引業の定義

免許が必要な宅地建物取引業とは、「宅地」や「建物」の「取引」を「業」として行うことをいいます。そして、免許を受けて宅建業を営むの者のことを「宅地建物取引業者宅建業者)」といいます。

「宅地」の定義

まず、今現在建物がある土地は「宅地」です。登記簿上の土地の利用目的としての地目とは関係がありません。つまり、判断基準は現況ですので、例えば、登記簿上の地目が田、畑であっても、今現在建物があるなら「宅地」です。

また、今現在建物はないけれど、建物を建てる目的で取引をする土地も「宅地」です。 

さらに、今現在建物はなく、建てる目的で取引をするわけでもないのですが、用途地域内にある土地であれば「宅地」です。用途地域とは、建物の用途ごとに分けられた地域のことです。このようと地域では、建物が建つところが指定されているので、「宅地」とされます。ただし、用途地域内にある土地であっても、現に道路、公園、河川、水路、広場の用に供せれられている土地は、「宅地」から例外的に除かれます。その土地には、もはや建物が建たないからです。なお、現在それらでないなら、道路「予定地」や公園「予定地」とされていても「宅地」です。

「建物」の定義

いわゆる「一戸建て」だけでなく、建物の一部であるマンションの専有部分も「建物」です。

「取引」の定義

「取引」では、関わり方に、自らが当事者になる場合、代理で取引をする場合、取引の間を取り持つ媒介の3種類があります。また、取り扱う契約のタイプも売買契約、交換契約、賃貸借契約の3種類があります。ただし、自らが当事者になり、賃貸借契約を行う場合は「取引」に該当しません。したがって、貸ビル業や貸駐車場、貸マンション経営などは取引にあたらず、宅建業の免許は不要です。また、自ら貸借を行う者は、宅建業法上の規制も受けません。さらに、自ら転貸借も自ら貸借ですから、取引には含まれません。その他、マンション管理や建築請負も、取引に含まれません。

「業」の定義

「業」とは、不特定多数を相手に、反復または継続して行うことです。そして、関わって来るいろいろな多くの人たちが迷惑を被るかもしれないからこそ、免許を受ける必要があります。

1、「不特定多数」とは

対象が多数であっても、例えば、取り扱う仕事の相手が「一定の範囲の人に限定されている場合」など特定されていれば、「業」には該当しません。

2、「反復または継続して」とは

これは、「繰り返して、ずっと行う」という意味です。他方、例えばAさんが持っている土地を「一括してBさんに売る」という場合は「業」には該当しません。

3、「営利生」とは

「業」にあたるか否かの判断には、営利目的の有無は関係ありません。例えば、営利法人ではない学校法人や宗教法人のような公益法人が行う場合でも、「業」に該当します。また、他の業務のサービスの一環として、あるいは付帯業務として、無報酬で斡旋などを行う場合でも、「業」に該当します。

事務所の定義

宅建業法上の事務所とは、次の1〜3です。なお、商業党記簿に登載されているか否かは無関係です。

1、まず、本店(主たる事務所)です。本店は、そこで直接宅建業を営んでいなくても、支店(従たる事務所)で宅建業を営んでいるならば、事務所にあたります。

2、次に、宅建業を営む支店(従たる事務所)です。本店と異なり、宅建業を営んでいる視点のみが宅建業法上の事務所とされ、営んでいない支店は事務所にカウントされません。

3、さらに、継続的に業務を行う事ができる施設を有する場所で、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くところも、事務所です。建物の中にあるような施設で、支配人などがいるところです。一時的な出張所は含まれません。例えば、営業所などです。

宅建業者の免許の種類と効力

・免許の種類

宅建業を行う場合に受けるべき免許には、都道府県知事免許と国土交通大臣免許の2種類があります。この2つの区別のポイントは、事務所の設置場所です。事務所が1つの都道府県内にあるならば、たとえ何ヶ所あっても都道府県知事免許、2つ以上の都道府県にまたがる場合は、国土交通大臣免許です。

・免許の申請

免許の申請が行われた時に欠格要件に該当しないならば、免許権者は免許証を交付します。また、国土交通大臣免許を申請しようとする者は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して申請します。さらに、免許検車は、免許を与えるに際して、一定の条件を付することもできます。

・免許の効力

免許の有効期限は5年です。そして、免許は全国で有効です。例えば、東京都知事免許を持っている業者であっても全国で仕事をする事ができます。

免許の欠格要件

・免許の欠格要件のポイント

まず1つ目のポイントは、「免許申請者自身」が「ふさわしくない」場合です。ここでの「ふさわしくない」という欠格要件は大きく5つに分類できます。

  1. 宅建業者Aが免許を受けて営業していたが、一定の事由で免許取消処分を受け、そして、その後改めて免許を申請する場合
  2. 犯罪を犯して刑罰を受けた場合
  3. 暴力団員がらみの場合
  4. 宅建業に関して不当なことを行ったなどの場合
  5. 能力がない場合
次に2つ目のポイントは、免許申請者の「関係者」が「ふさわしくない」場合です。申請者であるAさんやA社には問題がないものの、AさんやA社の関係者が以下の1〜8のようにふさわしくない場合などには、AさんやA社には免許が与えられません。

そして、3つ目のポイントが「その他の理由」です。

・「ふさわしくない」とはどんなことか

これから見ていく1〜3は、一旦免許を受けた後に、一定の理由で免許を取り消された場合です。4は犯罪・刑罰がらみ、5は暴力団がらみ、67は宅建業に関して不適当なことをした場合、8は能力が不足している場合です。

1、次の1〜3のいずれかの事由に該当していて宅建業の免許を取り消され、その取り消しの日から5年を経過していない者

  1. 不正の手段で免許を受けた
  2. 業務停止処分事由に該当し、情状が特に重い
  3. 業務停止処分に違反した
2、上記1〜3の事由による免許取消処分の聴聞の期間及び場所の公示日から処分までの間に、相当の理由なく廃業等の届出をしたもので、その届け出の日から5年を経過しない者
ここでは、「業務停止処分」ではなく、「免許取消処分」の聴聞の期間及び場所の公示日であることに注意が必要です。

3、1と2のケースで、宅建業者が法人の場合、聴聞の期日及び場所の公示日前60日以内に、役員であった者等

ここでいう役員とは、取締役・執行役といった名称がつけられているものだけでなく、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対して取締役等と同等以上の支配力を有する者を指します。

4、次の2つに該当する者で、刑の執行が終わり、または執行を受ける事がなくなった日から5年を経過しない者

  1. 宅建業法違反、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反、傷害罪・障害現場助勢罪・暴行罪・凶器準備集合結集罪・脅迫罪・背任罪、暴力行為等処罰に関する法律の罪により罰金刑に課せられた者
  2. どんな犯罪であれ、禁錮刑以上の刑に処せられた者
執行猶予期間が満了した者や控訴や上告中の者は免許を受ける事ができます。

5、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

6、免許申請前5年以内に、宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者

7、宅建業に関し、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者

例えば、指定暴力団の構成員などです。

8、心身の故障により宅建業を適正に営む事ができないものとして国土交通省令で定めるもの・破産者で復権を得ない者

・免許申請者の「関係者」

9、営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であり、かつ法定代理人が1〜8のいずれかに該当する者

10、役員または政令で定める使用人が1〜8のいずれかに該当する者

11、その事業活動を支配するものが暴力団員等である者

・免許の申請手続き等その他の欠格要件

次のように、手続きに嘘がある場合なども、免許は受けられません。

12、免許申請書やその添付書類中の重要な事項に、虚偽の記載があったり重要な事実の記載漏れがある者

13、事務所ごとの専任の宅地建物取引士の設置要件を欠く者

免許の更新

有効期間が満了しても業者として仕事を続ける場合は、免許の更新申請が必要です。そして、更新申請は、有効期間満了日の90日前から30日前までの間にしなければなりません。

ところが、免許の更新申請をしたのに、満了日が来てもまだ免許が出されていない場合、有効期間の満了日から新たな免許が出るまでの間は、従前の免許が効力を有します。

更新後の免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了日の翌日から5年間です。

届出事項等

宅建業者名簿と変更の届出

宅建業者名簿は国土交通大臣都道府県知事のところに備え付けられ、一般の閲覧に供されています。宅建業者名簿の名称に関する事柄の変更があった場合には、変更の届出をしなければいけません。

・免許証

免許証の一定の記載事項に変更が生じたときは、「変更の届出」と合わせて、免許証の書き換え交付の申請をしなければなりません。また、免許証を亡失・破損したときは、免許証の再交付申請が必要です。さらに、宅建業を廃業したり免許の取り消し処分を受けたときは、免許証を返納しなければなりません。なお、免許の有効期間が満了することによって免許の効力が失われた場合は、免許証の返納は不要です。

・廃業等の届出

まずは、誰がその届出を行うのかというと、本人が死亡した場合は、当然その相続人です。破産手続き開始の決定の場合は、本人ではなく破産管財人です。廃業の場合は本人か代表役員です。法人の解散の場合は、清算手続きを行う清算人が届出を行います。法人の合併による消滅の場合は、消滅会社の代表役員が届出を行います。

期限はいずれも「30日以内」です。死亡の場合は、相続人が亡くなった事実を「知った日」から30日以内です。それ以外はその現象が起きた日から30日以内です。

死亡と合併消滅の場合は、その時に免許が失効します。その他の場合は届出時に失効します。

免許換え

免許換えとは、事務所が増えたり減ったりした結果、免許権者が変わることです。

・免許換えが必要な場合

1、国土交通大臣免許から都道府県知事免許に免許換えが必要な場合

例えば、東京都と千葉県に事務所を持っていたAさんが千葉県にある事務所を全部廃止した時です。この場合Aさんは東京都知事へ、直接免許換えの申請を行います。

2、都道府県知事免許から国土交通大臣免許に免許換えが必要な場合

先の例の逆のパターンです。この場合、国土交通大臣に免許換えを申請する必要がありますが、主たる事務所の所在地を管轄する知事を経由して行います。

3、都道府県知事免許から、他の都道府県知事免許に換える場合

例えば、Cさんは東京都内にしか事務所がなかったのですが、東京都内の事務所を廃止して、千葉県内だけに事務所を設ける場合です。この場合、Cさんは千葉県知事へ、直接免許換えの申請を行います。

・免許換えの通知と効果

免許換えをする場合、宅建業を辞めるわけではないので、廃業の届出を行う必要はありません。なお、国土交通大臣または都道府県知事は、新たに免許を与えた時には、遅滞なく、その旨を従前の免許権者に通知する事が必要です。そして、免許換えをした後の免許の効力は、新たな免許を取得した時から5年間です。なお、必要な免許換えを行わなかった場合は、免許が取り消されます。

「みなし業者」と無免許営業の禁止

・免許の一身専属

免許には、「その人に対してのみ」与えられるという、一身専属的な性格があります。なので、相続や合併等によっては承継されません。

・みなし業者

死亡した宅建業者の相続人や合併後の法人、宅建業者であった者は、すでに締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内では、宅建業者とみなされます。これをみなし業者といいます。

・免許がなくても宅建業を営む事ができる特例

国や地方公共団体都市再生機構地方住宅供給公社などは、お客さんを害するようなことはしないと想定され、宅建業法の規定はすべて適用されません。従って、免許も不要です。しかし、これには農業協同組合は含まれません。また、破産管財人が、破産団体の換価のために自ら売主として売却する場合も免許不要です。ただし、国・地方公共団体等からの代理・媒介の依頼を受けた者は、免許不要とはなりません。

信託会社や信託業務を兼営する金融機関は、国土交通大臣に「届出」をすれば、国土交通大臣免許を受けたものとみなされます。宅建業法の免許の規定が適用されないので、宅建業の免許を受ける必要はありませんし、免許取消処分も受けません。しかし、免許に関すること以外の宅建業法の規定は、指示処分等の監督処分も含めて適用されることに注意が必要です。

・無免許営業等の禁止

免許制度がある以上、無免許営業や名義貸しは禁止され、違反したものに対しては厳しい処分が行われます。

 

いろいろな法律関係

相続

・法定相続人

法律によって決められた相続人のこと。例えばAさんが亡くなった時にAさんに妻のBさんがいれば、妻は常に相続人になります。妻や夫の事を配偶者といいます。そして、配偶者以外で相続人になる、血族相続人という人たちがいます。Aさんと血のつながりがある人たちのことです。 その中では優先順位があります。第一の優先順位があるのが、子供です。これには非嫡出子や養子、胎児も含まれます。なお、後出の代襲相続によって、孫が相続する場合もあります。第二順位が直系尊属です。例えば、Aさんの父や母のことです。そして第3順位がAさんの兄弟姉妹です。Aさんが亡くなる前に子のCさんがなくなっていてCさんに子供Dさんがいた場合、Cさんが相続するはずのものをDさんが相続することになります。これを代襲相続といいます。また、Dさんの子供Eさんが再代襲をすることもあります

法定相続分

法律が決めている相続人の取り分のこと

1、第一順位の子と配偶者が相続人の場合

配偶者には2分の1の取り分があり、子供たちは、その2分の1を全員で平等に分けることになります。もし子供が2人だったら4分の1ずつです。なお、非嫡出子の相続分も嫡出子と同じです。

2、第二順位の直系尊属と配偶者が相続人の場合

この場合は、配偶者の取り分が3分の2、その残りの3分の1をAさんの父や母が相続します。

3、第三順位の兄弟姉妹と配偶者が相続人の場合

この場合は、配偶者が4分の3を取って、残りの4分の1を兄弟姉妹が相続します。また、父母の一方の身を同じくする兄弟姉妹(異母・異父兄弟)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1です。

欠格と廃除

・相続人の欠格事由

例えば、被相続人となる自分の父親を殺害し刑に処せられた子、詐欺や強迫によって父親の遺言を妨げた子、さらに、父親の遺言を偽造した子など、一定の自由に該当する法定相続人は、欠格事由にあたり、父親の相続人となる事ができません。

・廃除

例えば、Aさんの生前、息子がAさんに対して虐待などひどい仕打ちをしていた場合、Aさんは「息子を相続人から外してください」と家庭裁判所に請求できます。そうすると、この息子は相続できなくなります。これが、廃除です。

相続の承認と放棄

・単純承認、限定承認、放棄

相続の承認には、そのまま全部相続するという単純証人と、借金もあるけど現金もありそうだという場合に、「プラスの財産の限度内で借金を返します」と言って相続する限定承認の2つがあります。そして、借金を背追い込みたくない場合などに相続を放棄して一切相続をしないこともできます。

・方法

承認や放棄は、自分について相続開始のあった事を知った時から、3ヶ月以内にしなければなりません。従って、相続開始前に、相続の放棄をすることはできません。そして、家庭裁判所に限定承認、または放棄の申述をせずに3ヶ月が過ぎてしまった場合は、単純承認したとみなされます。これを法定単純承認といいます。なお、相続人が自分について相続が開始した事を知った、または、これを確実に予想しながらあえて相続財産の全部または一部を処分した時も単純承認したとみなされます。限定承認は、法律関係がややこしくなるので、相続人が何人かいる時には、全員でしなければなりません。相続放棄をした場合には、その者の子供が代襲相続をすることはありません。

遺言

遺言とは、亡くなる方の最終的な意思をできるだけ尊重し、死後に実現するための制度です。遺言で実現できる事柄は、相続分、遺産分割方法の指定やその委託、遺贈など民法で定められています。

未成年者は満15歳になれば、1人で遺言ができます。また成年被後見人も、判断能力が一時回復した時、医師2名以上の立ち合いのもとに遺言をする事ができます。その一方で、被保佐人・被補助人は単独で遺言をする事ができます。

遺言は、意思を尊重する制度ですから、いつでも遺言の方式に従って、全部または一部を撤回できます。また、前の遺言と後の遺言が抵触する場合や、遺言の内容と矛盾する行為を遺言の後にした場合は、その抵触する限度で、前の遺言を撤回したことになります。

民法は遺言の方式を厳格に定めています。遺言の普通の方式として、まず、遺言者が全文、日付及び氏名を自書し、押印する自筆証書遺言があります。ただし、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産目録を添付する場合、その目録は自書不要とされています。つまり、「パソコンで制作する事が可能」という事です。その場合、その目録の各ページに署名押印が必要です。また、押印については、遺言者が、遺言書本文を入れた封筒の封じ目に押印した場合でも、押印の要件に足りるとされています。そして、他にはより厳格な、公正証書遺言、秘密証書遺言の2種類があります。

遺留分

最低限確保される一定の割合のいさんのことを遺留分といいます。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、その他の場合は2分の1です。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。ところで、例えば、遺贈によって遺留分が侵害された場合でも、それによって直ちにその遺贈が無効になるわけではありません。この場合遺留分を侵害されたものは、遺留分侵害請求権という権利を行使して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する事ができます。また、遺留分は相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を受ければ放棄することができます。

相続財産の帰属

相続財産は、相続人が数人いるときは全員の共有となります。例えば、相続財産である建物を持分に基づいて占有している相続人の1人に対して、他の相続人は、当然に明け渡しを請求する事ができません。また、各共同相続人は、その相続分に応じて、被相続人の権利・義務を引き継ぎます。従って、相続財産中の可分債権・債務は法律上当然に分割され、各共同相続人はその相続分に応じて債権や債務を承継します。そして、共同相続人は、遺言に定めがある場合を除いて、いつでも協議によって遺産の全部または一部の分割ができます。この協議には全員の合意が必要ですが、協議が調わない場合などは、原則として相続開始地の家庭裁判所に対して、その全部または一部の分割を請求できます。なお、遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力が生じますが、第三者の権利を害することはできません。

配偶者の居住権の保護

被相続人が死亡したことにより、残された配偶者が安定した生活を送れるように、配偶者居住権等の権利が創設されました。

1、配偶者短期居住権

配偶者は、被相続人の財産であった居住建物に、相続開始の時に無償で居住していた場合、原則として、最低6ヶ月以上の一定期間、引き続き無償で、その建物を使用する事ができます。

2、配偶者居住権

配偶者は、被相続人の財産であった居住建物に、相続開始の時に居住していた場合、被相続人の遺言がある等の一定の場合に該当するときは、終身、または一定期間、その居住建物の全部を、無償で使用・収益をする事ができます。ただし、被相続人が、相続開始の時にその居住建物を、配偶者以外の者と共有していたときは、例外となります。そして、配偶者が、配偶者居住権を取得したときは、その居住権は財産的に評価され、その評価された金額を相続したと取り扱われることになります。

不法行為

・一般の不法行為

故意または過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害し、損害を与えた物は、被害者救済の観点から、その損害賠償義務を負わなければなりません。他人の身体、自由もしくは名誉を侵害した場合、または他人の財産権を侵害した場合のどちらであっても、加害者は、財産外の損害に対しても、その賠償をしなければなりません。これがいわゆる、慰謝料請求権です。そして、判例は、不法行為によって被害者が即死した場合でも、被害者自身に慰謝料請求権が発生するとしています。この慰謝料請求権も、普通の金銭債権であり、相続の対象になります。また、法人の名誉権が侵害された場合に、金銭的な評価が可能な損害が発生したときは、法人も加害者に対して慰謝料を請求する事ができます。なお、不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者保護のために、その損害の発生と同時に履行遅滞に陥るとされています。

・特殊の不法行為

1、使用者責任

従業員の不始末について使用者に責任が生じすることを使用者責任といいます。ただし、使用者の面積が認められていて、例えば、従業員に対して使用者が相当な注意を払っていた時や、相当な注意を払っていたとしても損害が生じたと考えられるときはその責任を負いません。さらに、使用者が損害賠償金を支払った場合、使用者は信義則上相当な限度で従業員に求償する事ができます。

2、共同不法行為

共同者は連帯で責任を負います。この連帯も、使用請求責任と同様に不真正連帯債務です。

3、工作物責任

建物などの土地の工作物の設置・保存の瑕疵によって、誰かが損害を被ったときは、まず、第一次的にその工作物である建物の占有者が、そして占有者が相当な注意を払っていた時には、占有者は責任を負わず、第二次的に、所有者が責任を負います。この所有者の責任は、自分に過失がなくとも負わなければなりません。なお、例えば手抜き工事をした結果損害が発生したなど損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、賠償金を支払った占有者などは、その者に対して求償権を行使する事ができます。

4、注文者の不法行為責任

請負契約を結んだ場合で、その請負人が誰かに損害を与えたとき、注文者に過失がある時を除いて、原則として注文者はその責任を負いません。過失がある場合は不法行為責任を負います。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

1、損害賠償請求権の長期・短期の消滅時効

不法行為による損害賠償請求権は、被害者または被害者の親などの法定代理人が、損害及び加害者を知ったときから3年間行使しなければ時効によって消滅します。また、不法行為の時から20年間行使しない時も、時効によって消滅します。

2、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命・身体の侵害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が、損害及び加害者を知った時から5年間行使しない時、あるいは不法行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します。

不当利得

法律上原因がないのにもかかわらず、他人の財産または労務により利益を受け、それによって他人に損害を及ぼした場合は、受けた利益を返還しなければなりません。これを、不当利得返還義務といいます。

事務管理

ある人が、好意で隣家の垣根を直してあげる場合のように、法律上の義務なしに、他人のために事務の管理を始めたものは、その事務の性質に従って、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければなりません。この場合、管理者が本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求する事ができます。ただし、本人の意思に反して事務管理を行ったときは、現に利益を受けている限度内でしか、その償還請求は認められません。

債権と物権

財産権には債権と物権の2種類があります。債権とは、人に対して一定の行為を請求できる権利のことです。物権とは、物に対する直接的な権利のことです。例えば、車を買ったとすると、その車の所有権を取得することになります。

物権的請求権

例えば、Aさんの土地をBが不法に占拠して、Aさんの所有権の円満な支配が妨げられているとします。この場合、所有者Aさんは、その不法に占拠しているBに対して、「土地を返せ」と言う事ができます。このように言う事ができる権利を、物権的返還請求権といいます。

所有権と共有

所有権とは物に対する全面的支配権であり、所有者は法令の制限内で、自己の所有物を自由に使用・収益・処分する事ができます。

・所有権と相隣関係

例えば、土地の所有者が最大限に自分の土地を利用しようとするときは、隣接地相互の利用の調整が必要になります。そこで民法では隣接地同士の関係について様々な規定を置いています。

1、行動に至るための他の土地の通行権

他の土地に囲まれて公道に通じない土地を袋地といいますが、その袋地の所有者Aさんには、公道に至るためにその土地を囲んでいる他の土地を通行する権利が認められています。ただし、通行の場所及び方法は、必要かつ隣地への損害が最も少なくなるようにしなければいけません。もし、隣地に損害が生じたときは、償金を支払う必要があります。また、袋地が共有地の分割や一時譲渡によって生じたときは、Aさんが通行できるのは他の分割された土地や残余地だけですが、例えそれらの土地に損害を生じさせても、償金を支払う必要はありません。

2、隣地使用請求権

隣地との境界やその付近で、塀などを築造したり修繕したりする場合は、必要な範囲内で隣地使用を請求する事ができます。ただし、住家には、隣人の承諾がない限り、立ち入ることはできません。また、この場合も損害を与えた場合は償金を支払わなければいけません。

3、その他の相隣関係

隣接地の所有者は、お互いに、隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはなりません。

境界には境界標や囲障を設置する事ができ、費用は双方が半分ずつ負担します。ただし、境界標設置のための測量費用は、面積に応じて振り分けます。

建物は境界線から50cm以上隔てて建てなければいけません。さらに、境界線から1m未満の距離のところに窓や縁側を設けるときは、目隠しを設ける必要があります。

境界線を超える竹木の枝は、切除を求める事ができるにとどまりますが、根は自分で切り取る事ができます。

・共有

何人かで一つのものを所有することを共有と言います。それぞれが支払った額などによって持分が決まります。持分が明らかでなければ、均等であると推定されます。

1、持分

持分に応じてそれぞれ、その共有物全部を使用する事ができます。それぞれ自分の持分を処分することは自由です。単独で売却する事ができます。そして、共有者の1人が持分を放棄したり、死亡して相続人がいないときは、他の共有者にこの持分が移転します。ただし、共有者の1人が死亡して相続人がいない時でも、特別縁故者がいれば、特別縁故者に対する財産分与の規定が優先適用されます。

2、共有物の管理・処分

修繕や不法占拠者への明渡請求などの全員の利益になるものは単独で行う事ができます。ただし、不法占拠者への損害賠償請求については持分の割合に限られます。一方で、全体を売ってしまう、売買契約を解除する、抵当権を設定する、増・改築をするなどは、変更行為と言います。この変更行為は全員で行わなければいけません。利用・改良行為については、持分の過半数の賛成があれば行う事ができます。例えば、賃貸借契約を結んだり、その契約を解除したりする事です。

3、共有物に関する費用・債権

共有の場合、持分に応じて誰でも、その共有物全部を使用する事ができます。従った、管理費も各自の持ち分に応じて負担します。もし、1年以内に、共有者がこの義務を果たさないときは、共有関係から排除するため、他の共有者は相当な償金を払って、その共有者の持分を取得する事ができます。また、共有者の1人が、例えば管理費用の立替債権など、共有物に関して他の共有者に対する債権を持っているときは、その共有者の持分を譲り受けた承継人に対しても請求する事ができます。

4、共有物の分割請求

各共有者はいつでも共有物の分割を請求できます。もし、分割の協議がまとまらないときには、裁判所に分割請求もできます。そして、分割の方法としては、現物分割のほか、代金分割や全面的な価格賠償によることも認められています。また、共有者の間で、5年以内の期間を定めて、不分割特約を結ぶこともできます。なお、この特約は更新できますが、この期間も5年以内です。

その他の物権

・地上権

・永小作権

・地役権

・占有権

マンションの基本事項

一棟の建物の中に複数の所有者が存在する建物のことを区分所有建物といいます。その中の、一部屋をAさんが所有している場合、この所有権のことを区分所有権と言います。そして、Aさんを区分所有者と言います。さらに、マンションが立っている土地のことを敷地と言います。

区分所有建物は、専有部分と共用部分という部分から成り立っています。例えば、304号室などを専有部分、廊下・階段・エレベーターなどを共用部分と言います。そして、専有部分のために必要な土地の利用権のことを敷地利用権といいます。

専有部分

専有部分とは、区分所有権の対象となる部分のことです。対象となる要件には、構造上の独立性と、利用上の独立性が必要です。

共用部分

共用部分は、法定共用部分と規約共用部分の2種類に分けられます。階段やエレベーターなど当然全員で使うようなものが法定共用部分、本来専有部分となり得る場所を規約で共用部分とした管理人室や集会室などを規約共用部分といいます。

敷地

・敷地利用権

敷地利用権には、所有権と借地権があります。そして、敷地利用権は、規約に別段の定めがある時を除いて、専有部分と分離して処分することはできません。共用部分と同じように、原則として一体性があるのです。

・敷地権

登記した敷地利用権で、専有部分と分離処分ができないものを不動産登記法では、敷地権といいます。

区分建物の登記

・区分建物の登記簿

区分建物の登記でも、一戸建の建物と同様に一不動産一登記記録の原則が取られ、まず一棟全体の表題部、次に各専有部分の表題部及び権利部によって構成されています。

・区分建物の登記申請

1、表示に関する登記

まず最初にマンションの分譲業者などの原始取得者が、一棟全体の建物の表題登記とともに、各専有部分の表題登記を一括して申請します。

2、権利に関する表記

マンションの場合は、表題部所有者であるA不動産会社から所有権を取得したBさんも、直接自己名義で所有権保存登記を申請する事ができます。

・共用部分の登記

法定共用部分は登記をする必要がなく、また、登記をする事が認められていません。規約共用部分は、登記をしないと第三者に対抗する事ができません。区分建物の表題部に登記を行います。

集会の決議(区分所有法)

・区分所有者の意思決定の方法

1、管理組合と管理者

区分所有者が2人以上になれば、管理組合は当然に成立し、区分所有者全員で区性されます。そして、いろいろなことを集会の場で決め、ここで決められたルールが規約になります。マンションの管理を実際に実行するのが管理者です。管理者は基本的には、集会の決議で選任・解任されます。また区分所有者以外の物からも選任する事ができます。この管理者の役割は、区分所有者の代理人となり、その職務に関して、区分所有者のために原告または被告となることもできます。

管理組合は法人化することもできます。そのためには、集会の決議で、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。さらに、法人登記も必要です。なお、法人化にあたり、区分所有者の人数は関係ありません。

2、集会

議決数は、原則として区分所有者及び議決権の各過半数とされています。重大な事柄の場合は4分の3以上や5分の4以上の賛成が必要です。議決権は、書面または代理人によって行使する事が可能です。

管理者は少なくとも毎年1回、集会を招集しなければなりません。区分所有者の5分の1以上で議決権5分の1以上を有するものは、集会の招集を管理者に請求する事ができます。集会の通知は原則として、会日よりも少なくとも1週間前に会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発せられなければなりません。この期間は規約で伸縮することができます。区分所有者全員の同意があるときは招集の手続きを経ずに開く事ができます。

集会ではあらかじめ通知した事項についてのみ決議をする事が出るのが原則ですが、特別決議事項を除いて、規約で別段の定めをすればあらかじめ通知した事項以外についても決議する事ができます。

・規約

規約の設定・変更・廃止は、重大な事柄ですから、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。そして規約は書面または電磁的記録によって作成しなければいけません。

分譲業者など、最初に建物の専有部分の全部を所有するものは、規約共用部分・規約敷地等一定の事柄については規約で決める事ができると言う特例があります。これを「原始規約」といい公正証書による必要があります。

規約や集会の議決は、区分所有者は当然のこと一般承継人、特定承継人、そして建物などの使用方法については占有者にもその効力が及びます。

規約は原則として、管理者が保管しますが、管理者がいないときは、建物を使用している区分所有者またはその代理人で、規約または集会の決議で定めるものが保管しなければなりません。そして、規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではなりません。規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければなりません。

・義務違反者に対する措置

1、措置の内容

義務違反した区分所有者に対しては、行為の停止等請求、使用禁止請求、競売請求が可能です。次に占有者に対しては、行為の停止等請求、さらに契約の解除及び引き渡し請求ができます。

2、方法

停止等請求は「違反をやめてください」と言えば良いので、裁判外でもできますが、裁判所に訴える場合は、区分所有者及び議決権の各過半数の決議が必要です。他方、「使用禁止」などのその他の措置は影響が大きいですから、必ず訴えによらなければなりません。その際は各4分の3以上の多数による議決が必要です。

・共用部分の管理等

保存行為は単独で行う事ができます。例えば、破損した窓ガラスの修繕などです。

管理行為には、区分所有者及び議決権の各過半数が必要です。例えば、損害保険契約をすることなどです。

変更行為は、変更の著しいものとそうでないものに分けられます。その形状または効用の著しい変更を伴わない変更を「軽微変更」、それ以外のものを「重大変更」といいます。そして軽微変更を行うには各過半数の賛成が、重大変更には各4分の3以上の賛成が必要です。なお、この重大変更の場合の賛成数は、区分所有者の定数、つまり頭数については、規約で過半数まで減らす事ができます。しかし議決権は減らせません。

・区分所有建物の復旧・建替

1、復旧

復旧は小規模滅失と大規模滅失の場合の2つに分かれます。建物価格の2分の1以下の部分の滅失が小規模滅失です。そして、建物価格の2分の1を超える部分の滅失が大規模滅失です。

小規模滅失の復旧の場合、共用部分については、復旧や建て替えの決議等があるまでは各自で直す事ができます。復旧決議は、小規模滅失の場合区分所有者及び議決権の各過半数の賛成が必要です。

大規模滅失の復旧の場合は、建物価格の2分の1を超える、つまり、多額のお金がかかりますから、各4分の3以上の議決が必要です。なお、この賛成数は規約で増減できません。

2、建替

建て替えはお金がたくさんかかる重大な行為なので各5分の4以上の賛成が必要です。この数字は規約で増減することはできません。その他に、取り壊す建物の敷地もしくはその一部の土地、またはその建物の敷地の全部もしくは一部を含む土地に新たに建物を建築する事が、建て替えの要件です。また、建て替え決議を会議の目的とする集会を招集する場合は、集会の招集の通知は、原則として、集会の会日より少なくとも2ヶ月前に発しなければなりません。

 

その他のいろいろな法律関係

委任契約と準委任契約

AさんがBさんに、土地の売買契約などの法律行為を依頼する契約のことを、委任契約といいます。この場合、依頼をしたAさんを委任者、頼まれたBさんを受任者といいます。また、土地の管理などの事実上の行為を依頼することを、準委任契約といいます。

受任者の義務

善管注意義務

受任者は、善良な管理者としての注意を持って、きちんと委任事務を処理しなければなりません。この義務のことを善管注意義務といいます。そして、このことは報酬を請求できる場合もできない場合も同様です。

・自己執行義務

受任者は委任事務を自ら行わなければならないのが原則です。従って、委任者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができません。

・報告義務

受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理状況を報告し、また委任事務終了後は遅滞なくその経過や結果を報告しなければなりません。

・受取物引渡義務

委任事務を行うにあたって受け取った金銭、物等を委任者に引き渡さなければいけません。また、委任者のために受任者の名前で取得した権利も移転しなければなりません。

・金銭消費責任

受任者は、委任者に引き渡すべき金銭を自分のために使ったときは、その使った時からの利息をつけて、さらに損害があれば損害賠償もした上で、引き渡さなければなりません。

受任者の権利

・特約があれば報酬を請求できる権利

1、報酬請求権

原則として、委任契約は無償なので、受任者は委任者に報酬を請求できません。ただし、「報酬あり」との特約があれば、受任者は報酬を請求することができます。

2、報酬の支払い時期

報酬が支払われる場合の委任には、事務処理を行なったことに対して報酬が支払われる履行割合型と、事務処理により得られた成果に対して報酬が支払われる成果完成型の2種類があります。前者の場合は、当事者間に特に定めがなければ、報酬の支払いは後払いです。後者の場合は、その成果が引き渡しを要するときは、受任者はその成果の引き渡しと同時に、委任者に対して報酬の支払いを請求することができます。

・費用償還請求券、費用前払請求権

必要費を受任者が立替払いしたような 場合は、受任者は、委任者のために仕事をしているのですから、それに要した費用に、これを支出した日からの利息をつけて償還を請求する事ができます。また、受任者が委任事務の支払いのための費用を要する場合、受任者からの請求があれば、委任者は受任者に対して前払いをしなければなりません。

・損害賠償請求権

受任者が委任事務を処理するにあたって、自分に過失がないのに損害を受けたときは、委任者に対してその損害の賠償を請求する事ができます。この場合の委任者の義務は、委任者に何ら落ち度がない場合でも負わなければならない、無過失責任です。

委任契約の終了事由

・告知による契約解除

委任契約は、双方の信頼関係の上に成り立っています。そのため、信頼関係が破綻した場合、各当事者がいつでも、告知によって契約を解除する事ができます。ただし、相手方にとって不利な時期に解除をした場合、または委任者が受任者の利益をも目的とする委任契約を解除した場合は、やむを得ない事情がある時を除いて、損害賠償をしなければなりません。なお、委任契約の解除の場合、その効果は過去に遡及しない、つまり将来に向かってのみその効果がなくなるに過ぎません。

・委任者、受任者に一定の事由が生じた場合

任意代理権の消滅事由と同じで、委任者と受任者の死亡、破産手続き開始の決定の場合と受任者の後見開始の審判が起きた場合は委任契約は終了します。

請負契約とは

家を造って欲しいAさんと「いいよ」というBさんとの合意で請負契約が成立します。注文したAさんを注文者、頼まれた工務店のBさんを請負人といいます。請負契約が結ばれると、注文者には報酬支払義務が発生し、請負人には仕事完成義務が発生します。つまり、請負契約の目的は仕事を完成させる事であり、これが本質です。そして、請負人は先に仕事を完成させ、その後に初めて報酬を請求する事ができます。その結果、目的物の引き渡しと報酬の支払いは同時履行の関係になります。なお、仕事が完成しなければBさんは全く報酬を受け取る事ができないのかというと、そうではありません。Bさんには、割合的報酬請求権が認められます。つまり、注文者の帰省事由なく仕事を完成する事ができなくなった場合、または、請負契約が仕事の完成前に解除された場合で、既に請負人が行った仕事の結果のうち、可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分については仕事が完成したものとみなされ、請負人はその注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求する事ができます。ところが、注文者にとって建物が不要になった場合は、請負人が仕事を完成させる前であれば、契約を解除する事ができます。ただし、請負人に損害が生じた場合は、注文者は損害賠償をする必要があります。これが、注文者の契約解除権です。

契約不適合の場合の請負人の担保責任

これは請負人が契約内容に適合しないものを作った場合に、請負人が負わなければいけない責任のことです。

・目的物の種類、品質に関する担保責任

請負契約には、有償契約であることから、売買においての目的物の契約不適合の規定が準用されています。つまり、仕事の目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合、注文者は請負人に対して、次のような請求をする事ができます。

1、追完請求権

注文者は、原則として請負人に対して、目的物の修補など履行の追完を請求する事ができます。なお、それほど重要ではないのに費用が過分すぎたり、取引上の社会通念に照らして修補が不能であるときは、追完請求は認められません。

2、報酬減額請求権

注文者が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、原則として、その不適合の程度に応じて報酬の減額を請求する事ができます。

3、損害賠償請求権・契約解除権

注文者は、原則として契約内容の不適合を理由として、請負人に対して損害賠償を請求する事ができます。従って、注文者は、追完請求に代えて、あるいは追完請求とともに損害賠償を請求する事ができます。また、催告をしたのにもかかわらず、補修がされないときは、注文者は原則として、請負契約を解除する事ができます。仮に、契約内容に適合しないために契約の目的を達成できないときは、催告なしで解除する事が可能です。

・担保責任の制限

仕事の目的物が契約内容に適合しない物であっても、それが注文者が提供した材料や指示によって生じた場合は、請負人は、その材料や指示が不適当であることを知っていながら注文者に告げなかった時を除いて、担保責任をおいません。

・担保責任の期間の制限

注文者が契約不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、その不適合を理由として様々な請求や契約の解除をする事ができません。ただし、仕事の目的物を注文者に引き渡した時などに、請負人がその不適合を知っていた、または、重大な過失によって知らなかったときは、この期間の制限を受けません。

・特約について

「仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合における担保責任を負わない」という特約は、当事者間において合意で決められた事ですから有効です。しかし、請負人が知っていたにもかかわらず告げなかった事実等については、たとえ特約があっても、請負人は担保責任を負わなければいけません。

贈与契約

・贈与契約とは

無償の契約のことです。諾成契約なので成立に書面は不要です。

・贈与契約の性質

無償で与える契約である事が大きな特徴です。そのため、書面に寄らない口約束でした贈与などは、履行の終わった部分を除いて、各当事者が解除する事ができます。また、原則として、目的物が特定された時の状態で引き渡せば、贈与者は担保責任を負いません。ただし、「もらう人も一定の負担を負う」負担付贈与の場合は、その負担の限度で、売主と同様の担保責任を負います。

時効制度

・時効とは

時効とは、一定の事実状態の継続によって、権利が取得されたり、逆に権利が失われたりすることです。そして時効には、取得時効と消滅時効の2種類があります。

1、取得時効

取得時効とは、占有、つまり「持っている」あるいは「支配している」という事実状態が続き、その結果として権利を取得するという仕組みです。

2、消滅時効

消滅時効とは、権利を行使しない状態が続くと、その効果として権利が消滅するという仕組みです。

・時効制度の認められる理由

他人のものを持っている、または権利を行使しないなどの事実状態が継続しているとその状態通りの権利関係があると考えられます。そこで、社会の安定という見地から、その事実状態を法律関係にまで高めようとするのが、時効精度が認められている1つ目の理由です。さらに、AさんはBさんに対して1000万円請求できるのに、いつでもできるからと請求しない。そんな権利の上に眠る人の権利は守る必要がないというのが2つ目の理由です。

取得時効

・取得時効にかかる権利

所有権だけでなく、地上権や地役権、賃借権なども取得する事ができます。

・時効期間

取得事項が認められるためには、一定の期間継続した占有が必要です。その一定の期間とは、占有開始時に、善意かつ無過失ならば、占有の開始から10年、悪意または過失があるならば20年です。この場合「占有開始時」というのがポイントで、例えば、占有開始時は善意無過失だけれども、途中で他人のものだと気付いて悪意になった場合でも、占有を始めたときは善意無過失なので時効期間は10年となります。

・所有権の取得時効

所有権を時効取得するためには、所有の意思を持って、平穏かつ公然と(普通の状態で)占有する子が必要です。占有を継続すれば、取得時効が成立するので、一筆の土地の一部のみの時効取得も認められます。所有の意思の有無は、主観的ではなく、占有取得の原因事実により、外形的、客観的に判断されます。賃貸借契約を結んで借りている人が「所有権」を時効取得することはあり得ません。

・占有の承継

自分より前の占有者から占有を引き継いだものは、自分の占有期間だけではなく、自分より前の占有者の占有期間も、合わせて主張する事ができます。そして、そのときはその瑕疵も引き継ぎます。この場合の「瑕疵」とは善意無過失や悪意等のことです。

消滅時効

・時効期間とその起算点

債権が消滅するのは、債権者が権利を行使する事ができることを知った時から5年か権利を行使する事ができる時から10年(人の生命または身体の障害による損害賠償請求権は20年)。債権または所有権以外の財産権(地上権・永小作権・抵当権など)の場合は、権利を行使する事ができる時から20年です。なお、所有権は消滅時効にかかりません。かかるのは、取得時効のみです。また、抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しません。消滅時効の起算点は期限の定めのある債権は期限到来時から期間がスタートします。期限の定めのない債権は権利の成立・発生時からスタートします。

・判決で確定した権利の消滅時効

確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利の消滅時効期間は、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、確定の時に弁済期の到来していない債権を除いて、10年になります。

時効の完成猶予と更新

時効の完成猶予とは、その間時効が完成しないことをいいます。例えば、時効の進行中に訴えが提訴され、権利行使の意思が明らかになった場合等に認められます。時効の完成猶予の事由としては、裁判上の請求・仮差押・催告・協議を行う旨の合意などがあります。例えば裁判上の請求の場合、その手続き事由が終了するまでの間等は、時効は完成しません。また催告の場合、催告の時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効は完成しないのです。他方、時効の更新とは、時効が新たにその進行を始めることをいいます。例えば、確定判決によって権利が確定した場合等に認められます。更新が生じるとそれまで進行していた時効期間はリセットされます。更新事由としては、裁判上の請求や承認などがあります。例えば、商人の場合、時効は承認の時から新たにその進行を始めます。

時効完成の効力

時効の利益を受けたいのなら、「私は時効の効果を受けます」と告げる、つまり時効の援用が必要です。そして援用ができるものは「当事者」であり、消滅時効の場合なら、債務者はもちろん、保証人、その債権の担保としての抵当権が設定されている時の物情保証人や第三取得者など、権利の消滅について正当な利益を有するものです。他方、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができないとされています。事項を援用するとその効力は起算日に遡ります。時効の利益を「受けません」と言う事を、時効の利益の放棄といいます。しかし、時効制度が無視されないように、時効の完成前には、時効の利益の放棄をする事ができないとされています。従って、時効完成前に結ばれた、時効の利益を放棄する旨の特約も無効です。なお、消滅時効の完成後に債務者が債務の承認をした場合は、債務者は、時効完成の事実を知らなかった時でも、信義則上、消滅時効を援用することは許されません。この場合は通常、債権者は「もはや債務者は時効の援用をしないだろう」と考えるからです。

 

賃貸借契約

賃貸借契約とは

例えば、AさんがBさんに自分の車を貸しました。Bさんは、車を借りて使うかわりに賃料を支払うなどの義務を負います。このような契約を賃貸借契約といいます。貸したAさんを賃貸人、借りているBさんを賃借人といいます。 賃貸人には、使用・収益させる義務が発生します。賃借人には、賃料を支払う義務を負います。そして、契約終了時には返還しなければいけません。タダでの貸し借りのことを使用貸借契約といいます。

・賃貸人の義務

1、目的物の修繕義務

車が壊れたら、賃借人に使わせてあげることができないですから、賃貸人のAさんは車を修繕する義務があります。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由、つまり、Bさんの責任によって修繕が必要になったときはその必要がありません。賃貸人が行う目的物の保存に必要な修繕行為を賃借人は拒むことができません。

2、費用償還義務

普通に使うのに必要な費用を、必要費といいます。この費用は本来、賃貸人が負担すべき費用ですから、賃借人は当然全額を賃貸人に対して「直ちに償還してほしい」と請求することができます。また、必要費以外に、有益費があります。これは、そのものの値打ちを増すのにかかった費用です。賃借人は、賃貸借契約終了時に、その価格の増加が現存する場合に限って、支出額または増価額のどちらかを、賃貸人の選択に従って、賃貸人に償還請求することができます。

・賃借人の義務

賃借人のBさんは、賃料支払い義務のほか、保管義務や契約終了の際に賃借物を返還する義務を負います。また、Bさんには原状回復義務があります。これは、賃借物を受け取った後に生じた損傷がある場合で、賃貸借が終了したときは、その損傷を現状に復さなければならない、つまりものへ戻さなければなりません。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、原状回復義務を負いません。また、通常の使用などによって生じた損耗や経年変化についても、この義務を負いません。

・不動産の賃借権の対抗要件

1、不動産の賃借権の対抗要件とは

例えば、BさんがAさんから土地を借りていて、その土地をAさんがCさんに売却しました。その後CさんがBさんに土地から出て行けと言われました。このとき民法は、不動産の賃借人を守る必要があることから、賃借人は賃借権の登記があれば出て行かなくても良いと定めています。つまり、賃借権の登記が不動産の賃借権の対抗要件です。さらに、AさんがBさんに貸している土地をDさんにも貸すと行った、不動産の賃借権が二重に設定された場合の優先関係に関しても、賃借権の対抗要件の先後で決着がつけられます。

2、賃借人の地位の移転・主張

賃借人に対抗要件が備わっているときは、一定の合意がある場合を除き、所有権の移転に伴って、賃貸人の地位は、旧所有者Aさんから新所有者Cさんに移転します。また、賃借人に対抗要件が備わっていない時でも、賃借人の地位は、賃借人の承諾なしに、譲渡人Aさんと譲り受け人Cさんの合意により、譲受人Cさんに移転させることができます。ただし、これらの場合は賃料を請求するなど賃貸人の地位を賃借人に主張するには、新所有者Cさんは、所有権の移転登記を備える必要があります。

賃貸借の存続期間

・存続期間を定める場合

賃貸人と賃借人との間で賃貸借の期間を定める時、最強期間は50年です。従って、例えば60年と決めた場合でも、期間50年の賃貸借となります。そして、民法上、期間を定めた場合は、特約がある時を除いて、賃借人は、契約に定めた時期に建物の返還をしなければいけませんし、また、中途解約も認められません。

・存続期間を定めない場合

期間を定めていない場合、賃貸借契約は、いつでも解約申し入れがあれば終了します。土地の場合は、解約申し入れをして1年経てば終了します。建物の場合は3ヶ月です。

・黙示の更新

契約の期間が満了していても、借り手の方がそのまま使い続けている場合は、賃貸人が何も意義を述べないのならば、そのまま更新されます。

・目的物の滅失

賃貸借契約は、一定の期間人に物を貸し続けるという継続的な契約です。ところが目的物が滅失した時、貸すことができないのに契約関係が続いていたら法律関係が複雑になってしまいます。そこで、賃貸借契約の場合は、目的物の全部が滅失して使用できなくなると、賃貸借契約も終了します。

賃借権の譲渡・移転

例えば、BさんがCさんに賃借権を売却して、賃借権がBさんからCさんに移転することを、賃借権の譲渡といいます。この場合、Bさんは賃貸借契約関係から離脱し、A C間に新たな賃貸借契約が発生します。

Aさんから家を借りているBさんはその家をCさんに又貸することができます。このようにB C間で新たな賃貸借契約を結ぶことを、転貸借といいます。この場合Bさんを転貸人、Cさんを転借人といいます。賃借権の譲渡・転貸には、どちらも賃貸人の承諾が必要です。

・転貸借の効果

承諾のある転貸借の場合、転借人のCさんは、転貸人のAさんに対して、Bさんの債務の範囲を限度として、転貸借に基づく債務を直接に履行する義務を負います。たとえば、賃貸人のAさんは、転借人のCさんに対して賃料を請求することができます。その額は、AB間の賃料とBC間の転貸料のうち、少ない方が限度となります。Bさんの債務不履行によって、AB間の契約が解除された場合はCさんは転借権をAさんに対抗できず、AさんはCさんを追い出すことができます。なお、賃貸人が賃借人の賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除する場合、賃貸人は、賃借人に対して催告すればたり、転借人に対して通知をする必要も、また賃借人に変わって賃料を支払う機会を与える必要もありません。一方で、債務不履行による解除の場合とはことなって、AB間で賃貸借契約の合意解除が行われた場合は、賃貸人のAさんは、原則として転借人のCさんを追い出すことはできません。

・無断譲渡、無断転貸の禁止

信頼関係が失われない特別な事情がある場合を除いて、Bさんが無断譲渡・無断転貸を行った場合は、Aさんは原則として、賃貸借契約を解除することができます。

敷金

敷金とは、名称を問わず、賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に対して交付される金銭のことです。賃貸人にとっては担保の役割を持ち、将来賃借人に賃料の不払いなどがあったときに、賃貸人が賃借人から取りっぱぐれないようにするためのものです。契約が終了して賃借人が明け渡すときに、未払い賃料などを控除した残額について、賃借人の敷金返還請求権が発生します。従って、明け渡しと敷金の返還は同時履行の関係とはなりません。また、敷金は、賃貸人にとっての担保ですから、賃借人は賃貸人に対して、敷金を延滞賃料などの弁済に充てるように請求することはできません。

・賃貸人が変更した場合

賃借人は旧賃貸人ではなく新賃貸人に対して、「敷金を返してほしい」と言うことができます。つまり、敷金返還債務は、旧賃貸人に対する未払い賃料等を控除した残額について、旧賃貸人から新賃貸人に移転します。

・賃借人が変更した場合

原則として、敷金関係は新賃借人に移転しないとされています。そのため賃貸人は旧賃借人に対して、受け取った敷金の額から、未払い賃料等を控除した残額を返還しなければなりません。

借地権とは

借地権とは、建物所有を目的とした地上権と土地賃借権の2つをいいます。例えば、AさんがBさんから土地を借り、Bさんはこの借りた土地に家を建てました。この場合、Bさんが持っている権利を借地権と言い、地主のAさんを借地権設定者、Bさんを借地権者と言います。なお、借地権には使用貸借は含まれません。そのほか、臨時使用など一時使用のための設定されることが明らかな場合には、存続期間、更新、再築、更新拒絶の場合の建物買取請求権などの一定の借地借家法の定めは適用されません。

借地権の存続期間

借地権は、建物所有の目的で設定されるので、一定の長い期間存続が必要なため、最短期間が定められています。最短期間は30年です。当事者が期間を定めるときには30年以上、期間を定めないならば自動的に30年と扱われます。例えば、期間を40年と定めたとすると、当然そのまま40年となります。それに対して、期間を20年と定めた場合は、30年となります。このように、借地の場合は、必ず期間が定まりますから、特約がない限り、中途の解約申し入れは認められません。

借地権の更新

・合意更新

この場合の更新後の期間は、最初の更新では20年以上、2度目以降の更新では10年以上と定めなければなりません。

・請求による更新

Bさんは借りた土地の上に建物を持っていますので、期間満了の際には、「家があるので更新してほしい」と地主のAさんに請求すれば、更新されます。これが請求による更新です。その一方で、地主のAさんが「Bさんとの契約は打ち切りにしたい」と考えるならば、遅滞なく異議を述べることになります。ただし、Aさんの異議が認められるためには、正当事由が必要です。これが認められるか否かについては、地主及び借地権者が土地を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過、土地の利用状況、立退料などの地主が土地の明け渡しに際して支払うべきものがあるか、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。請求による更新は、建物がある場合に限られます。更新後の期間は、初回は20年、2度目以降は10年です。

・法定更新

これも建物がある場合に限って認められます。借り手のBさんが賃貸借の期間が終わっても土地を使い続けていて、地主のA寒川からの正当事由ある異議がない場合には更新されます。これが法定更新です。この場合も初回が20年、2度目以降が10年です。なお、これよりさらに長い期間とすることもできます。

借地上の建物の再築

・最初の契約期間中の再築

25年目に尺地上の建物が滅失しても、契約期間はあと5年ありますので、再築したとします。しかしあと5年しか住めないのでは、Bさんは困ります。そこで、地主のAさんの承諾を得た上で再築した場合は、承諾のあった人、建物が再築された日のいずれか早い日から、原則として20年間契約は存続します。なお、BさんがAさんに対して「再築します」と言う通知を出して2ヶ月経っても異議がなければ、承諾があったとみなされます。承諾を擬制するのです。

・契約更新後の再築

契約更新後に尺地上の建物が滅失し再築した場合で、地主のAさんの承諾があったときは、最初の契約の場合と同じく20年期間が延長されます。また、借地権者のBさんは、再築ではなく、地上権の放棄または土地の賃貸借の解約の申し入れをすることもできます。その一方で、地主のAさんの承諾がないのにもかかわらず、無断で再築をした場合、Aさんは地上権の消滅請求または土地の賃貸借の解約の申し入れをすることができます。さらに、地主のAさんが再築を認めてくれない場合、借地権者のBさんは、裁判所に申し立てて、地主のAさんの承諾に代わる裁判所の許可を受ければ、再築による期間の延長が認められます。ただし、更新後の再築の場合は、通知による承諾の擬制は認められていません。

借地権の譲渡・転貸借

借地上の建物を譲渡するときは、原則として借地権も同時に移転します。借地権者が賃借権の目的である土地上の建物譲渡に伴って土地の賃借権の譲渡・転貸をしようとする場合で、特に不利益がないのにもかかわらず地主が承諾しないときは、借地権者は、地主の承諾に代えて裁判所の許可を得れば良いとされています。また、建物の競売や公売における土地賃借権の譲渡の場合は、不利益がないのにもかかわらず地主の承諾がないとき、競売や公売によって取得した者が、地主の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てることができます。ただし、この申し立てができるのは、競落人等が建物の代金を支払ったあと、2ヶ月以内に限られます。

建物買取請求権

・契約の更新拒絶の場合の建物買取請求権

正当事由ある異議があって更新されない場合、借地権者のBさんは、期間満了の際に、Aさんに対して「建物を時価で買い取ってほしい」と請求することが認められています。これを建物買取請求権といいます。しかし、Bさんの債務不履行によって終了する場合は、買取請求はできません。

・第三者の建物買取請求権

三者が、賃借権の目的である土地の上の建物等を取得した場合で、地主が土地の賃借権の譲渡または転貸を承諾しないときは、その第三者は地主に対して請求することが認められています。この買取請求は、譲渡人ではなく第三者である譲受人が行うことに注意が必要です。

借地権の対抗要件

・建物の登記

民法では、賃借権の登記があればAさんが他のDさんに土地を譲渡した場合でもBさんは土地を使い続けられるとしていました。しかし、賃貸借の場合は、地上権とは異なって、地主のAさんには賃借人Bさんの登記に協力する法律上の義務はありません。なので基本的にはBさんは登記を揃えることができずに追い出されてしまうでしょう。そこで借地借家法は、特に賃借人Bさんの保護を図るために、借地権者は借地上に登記した建物を持っていれば、その借地権に対抗することができるとしました。さらにこの借地上の建物の登記は、表示による登記でも良いとされています。しかし、一方で、その建物の登記名義人と借地権者は同じ名義、つまり借地権者名義でなければいけないとしています。ですから、息子名義や妻名義では登記した建物を持っていることにはなりません。

掲示による保全

もし、土地が滅失したときに、Dさんに出て行けてと言われると対抗する術がありません。それではBさんがかわいそうです。そこでBさんは、とりあえず土地上の見やすい場所に、再築する旨などの一定の事項を掲示、つまり看板を立てておけば、2年間は新たな譲受人のDさんに対抗できるとされています。なお、立て看板に対抗力が認められるのは、もともと建物の登記がされていた場合に限ります。

借地条件の変更及び増改築の許可

建物の種類・構造・規模などを制限する借地条件がある場合で、事情の変更によって従来の借地上権と異なる建物を所有するのが適当であるにもかかわらず、その変更について当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申し立てにより、その借地条件を変更することができます。また、借地権者が既存の建物について、増改築をすることは、その禁止の特約がない限り、同意なしで自由に行えます。しかし、増改築禁止の特約がある場合は、当然承諾が必要ですが、土地の通常の利用上相当である増改築について当事者間で協議が調わないときには、裁判所は、借地権者の申し立てにより、その増改築について地主の承諾に代わる許可を与えることができます。

強行規定

定期借地権の「更新規定などの排除」を除いて、機関や更新などに関する借地借家法の定めよりも、借り手に不利な特約は、無効とされています。

定期借地権

定期借地権とは、簡単に言えば、更新のない借地権のことで次の3種類があります。

1、一般定期借地権

存続期間→50年以上、目的→自由、要件→公正証書等書面による更新等を排除する旨の特約、建物利用→建物買取請求権は排除される、借地人の建物利用は継続されない、消滅→更新がなく契約満了によって、借地契約が終了する

2、事業用定期借地権

存続期間→10年以上50年未満、目的→事業用の建物所有目的に限定(居住用はダメ)、要件→公正証書による設定契約が必要、建物利用→一般定期借地権と同様、消滅→一般定期借地権と同様

3、建物譲渡特約付借地権

存続期間→30年以上、目的→自由、要件→30年以上経過の後、建物を土地所有者に譲渡する旨の特約、建物利用→借地人の建物利用は、原則として継続されない、消滅→上記2つと同様

2は住宅賃貸の事業者が賃貸マンションを建てる場合や、従業員の社宅として従業員の居住用に供する場合も、設定することはできません。1の契約は書面であれば公正証書である必要はありません。それに対して2の契約は必ず公正証書でなければいけません。3がその特約により借地権が消滅した場合は、その借地権者で、権利が消滅した後もなお建物使用を継続したものが請求したときは、請求の時に、その建物につき、その借地権者と借地権設定者との間で「期間の定めがない賃貸借」がなされたものとみなされます。なお、借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間がある場合は「その残存期間」=「存続期間」となります。

借家権とは

借家人の持っている権利のことを借家権といいます。借地借家法は、借家人の保護という目的のために更新や造作買取請求、さらには対抗力など、様々なことを定めています。また、借地に関する定期借地権と同様に、的借家権も認められています。夏季の貸別荘など、明らかな一時使用目的の建物の賃貸借や、タダで貸す使用賃借には借地借家法は適用されません。

借家権の存続期間と更新等

・存続期間を定める場合

1、存続期間

民法での上限は50年でしたが、借家に関しては、この民法の規定が適用されず50年を超えることができます。また、1年未満の期間を決めた場合には、定期借家の場合を除いて、期間の定めのない賃貸借契約とみなされます。

2、契約の更新

契約期間満了の1年前から6ヶ月までの間に更新拒絶の通知等がないと、従前の契約と同一の条件で更新されます。そして、賃貸人からの更新拒絶には正当事由が必要です。また、通知があってけども、借家人が使い続けている場合、家主が何も異議を述べなければ、そのまま更新されます。

・存続期間を定めない場合

お互いからの解約申し入れによって終了します。借地借家法では、借家に関して、家主の方から「出ていってほしい」という時には、政党自由及び6ヶ月の猶予期間が必要とされています。反対に、借家人からの解約の申し入れの場合は、民法が適用され、猶予期間は3ヶ月、正当事由も不要です。なお、正当事由の判断においては、賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、賃借人に対する立退料の申し出などの賃貸人の財産上の給与も、1つの事情として考慮されますが、「その申し出」=「正当事由がある」とはみなされません。また、賃貸人が正当事由ある解約申し入れを行い、6ヶ月を経過した場合でも、借家人が使用を継続し、かつ家主の異議がないときは更新されます。

借家権の譲渡・転貸借

借家の場合は借地のような地主の承諾に代わる裁判所の許可などの制度はありません。賃貸人の承諾が必要です。AB間の賃貸借が期間満了や解約申し入れで終了する場合は、転借人のCさんを保護する観点から、賃貸人から転借人に対して通知を行わないと、Cさんを追い出すことができません。そして、転貸借契約は、通知があってから6ヶ月後に終了します。

造作買取請求権

例えば、借家人Bさんが家主のAさんの許可を得てエアコンなどの造作を取り付けた場合、借家契約が期間満了または解約申し入れによって終了するとき、BさんはAさんに「造作を時価で買い取って欲しい」と請求することができます。これを造作買取請求権といいます。これは債務不履行によって契約が終了するときは請求することができません。この造作買取請求権を認めない特約は有効とされています。

借家権の対抗要件

借家人は家の引き渡しを受けていれば第三者に対抗することができます。

借地上の建物の賃貸借

例えば、BさんがAさんから土地を借りていて、そこの自分の家を建てている場合は、Bさんがその家をCさんに賃貸しても、土地の利用権の譲渡・天体には当たりません。また、Bさんの借地権が存続期間の満了によって消滅するとき、Cさんが期間満了の事実をその1年前までに知らなかった場合であれば、裁判所はCさんの請求により、Cさんがその事実を知った日から1年を超えない範囲内で、土地の明け渡しにつき相当の期限を許与することができます。

居住用建物の賃貸借の承継

居住用の建物について、借家人が、相続人内に死亡したときは、事実上夫婦または養親子関係にあった同居者は、借家人の権利義務関係を引き継ぎます。なお、借家人が死亡したことを知った時から1ヶ月以内に、家主に対して反対の意思表示をすれば、承継しません。

強行規定

借地借家法の定めよりも借家人に不利な特約は、無効になります。

定期建物賃貸借等

定期建物賃貸借等とは、更新がない借家権のことです。いずれも利用目的についての制限はありません。

1、定期建物賃貸借

まず、期間の定めが必要です。この期間は、例えば20年でも、1年未満でも構いません。普通の借家契約とは異なり、6ヶ月と決めれば6ヶ月です。契約は書面によってしなければなりません。しかし、公正証書である必要はありません。賃貸人は、契約締結にあたって、更新がなく、一定期間が経てば借家契約が終わる旨を記載した書面を使って説明する必要があります。この書面を使った説明がない場合は更新がない旨の定めが無効となります。つまり、更新が認められる普通の借家契約になります。契約の終了にあたっては、期間が1年以上の定期建物賃貸借の場合は、1年前から6ヶ月前までの間に家主の方から通知しなければ、終了を対抗できません。床面積が200㎡未満の居住用建物の賃貸借の場合で、転勤や療養などやむを得ない事情によって、借家を生活の本拠として使用できないときは、賃借人の方から中途解約をすることができます。

2、取り壊し予定建物の賃貸借

契約や法令によって一定期間が経つと取り壊されるという予定のある建物の賃貸借について取り壊す時に契約が終了するというタイプの借家契約です。これも、取り壊す自由を記載した書面で締結しなければなりません。

地代・家賃の増減額請求

地代・家賃の増減額請求については借地と借家の両方で、ほぼ共通の内容です。なお、次に出てくるものは、定期建物賃貸借契約において借賃の改定に係る特約がある場合には、適用されません。

1、借地・借家に関して、地代や家賃が税金などの負担の増減や土地や建物の価格の上下その他経済事情の変動などから考えて不相応になった場合、当事者は、将来に向かって、地代や家賃などの増額及び減額を請求することができます。ただし、契約に「一定期間増額しない」旨の特約がある場合には、その期間は増額の請求をすることができません。しかし、逆に「一定期間減額しない」旨の特約があっても、減額を請求することはできます。

2、例えば、借家について、家賃は1ヶ月10万円だったのを家主が15万円にすると言ってきました。しかし、両者の協議が調わない。このときは、借り手が相当と考える家賃、例えば、12万円であれば、それを支払えば足ります。ただし、その後の裁判で15万円と決まったときは、増額請求が行われた時点以降の家賃が増額されることになります。すると、それまで12万円ずつしか支払っていない場合は、1ヶ月あたり3万円不足しています。そのとき、借り手は、1ヶ月あたり3万円に加えて、年1割の利息もつけて支払わなければいけません。減額請求の場合は、今のことと逆のことになります。